丈夫な足腰を作るにはどうしたらいいのか。整形外科医の中山潤一さんは「下半身の筋力と骨盤底筋を同時に鍛える“自宅でできる体操”がある。
転倒や尿漏れ防止に効果があるので参考にしてほしい」という――。
※本稿は、中山潤一『動ける体が大復活する1分体操』(アスコム)の一部を抜粋・再編集したものです。
■転倒・尿漏れ、2大悩みを一気に撃退
片足を利用した体操をご紹介します。〈ゆる腰下げ〉と言います。
本著でご紹介している〈ゆる片足上げ〉と〈片足つま先立ち〉に比べると片足になる時間は短いのですが、それでも片足で立つ効果があります。逆に、〈ゆる片足上げ〉と〈片足つま先立ち〉よりも、筋肉の動きがとても大きくなります。
筋肉をつけるだけではなく、膝関節や股関節の周囲をストレッチして柔軟にする効果もあるので、歩く能力が上がります。それはつまり、転倒するリスクが減るということです。
さらに、「骨盤底筋(こつばんていきん)」という筋肉群のトレーニングにもなります。骨盤底筋というのは、骨盤の下のほうにあって、泌尿器などを下から支えている筋肉の集合体で、排泄をコントロールしています。
〈ゆる腰下げ〉では骨盤底筋が鍛えられるので、多くの方が悩んでいる尿漏れの予防・防止になります。ただし、アキレス腱に痛みのある方は、無理をする必要はありません。
様子を見ながら、体操をなさってください。
■「左右10回」で本格筋トレに近い効果
①背筋を伸ばして立ち、足を肩幅に開きます。

②右足を5センチぐらい床から離し、2~3秒間そのまま保ちます。

③上げた右足を、2歩分ぐらい前に、ゆっくり踏み出します。

④両膝を曲げて、腰を下げます。

⑤前足のかかとで床を蹴って、ゆっくり最初の姿勢に戻ります。

足を替えながら交互に、10回ずつ。1日に2セットやります。

この〈ゆる腰下げ〉は、スポーツジムなどで「フロントランジ」と呼ばれているトレーニングをゆるくした体操です。
フロントランジは、いきなり足を大きく前に踏み出して、両膝を深く、直角にまで曲げ、前の足を強く蹴って元に戻ります。
太ももやお尻を鍛え、平衡感覚も高める優れたトレーニングではあるのですが、かなりキツいので、いきなり行うのは年配の方には難しいと思います。それどころか、すでに膝が弱っている方がやると、さらに膝の関節を痛めてしまうでしょう。

そのフロントランジの効果を狙いながら、〈ゆる腰下げ〉では関節に負荷がかかりすぎないように、踏み出し方を軽くしています。
その代わりに、足を前に踏み出す前に、片足立ちで数秒間がまんしていただくことで、負荷を上げています。
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くれぐれも、踏み出した足の膝が、つま先よりも前に行かないようにしましょう。膝に負担がかかってしまいます。その他の基本的な注意点は、最初の〈ゆる片足上げ〉の体操と同じです。
①のポーズで両足をそろえて立ったり、膝が真っすぐに伸びた状態だと、バランスがとりにくくなり、倒れやすくります。
■ゆっくりやれば、柔軟性もアップ
また、常に視線は真っすぐ前に、一点を見つめるのも、やはり大切なポイントです。バランスをとりやすくなります。そして、背筋を伸ばすことも忘れずに。曲がっていると、太ももに余計な負担がかかります。
やはり、呼吸は止めずに、自然に続けながら行います。
スピーディーに行う必要はありません。むしろ、ゆっくりのほうが効果的です。踏み出す足をゆっくりと着地させ、ゆっくりと上げることで、股関節の遠心運動になるので、硬くなってしまった股関節が柔軟性を取り戻せます。階段をゆっくり下りるのと同じ効果が得られます。
なお、関節に負担がかからないよう、回数を守ってください。もしもどこかに痛みが出たら、この体操はやめてください。その間は〈ゆる片足上げ〉と〈片足つま先立ち〉を行って、しばらくしたら、〈ゆる腰下げ〉を再開しましょう。
体の状態は人それぞれです。ですから、どの体操も、ご自分の状態や、その日の体調に合わせて、無理をせず、安全にやることを心がけてください。
どの体操にも共通するポイントを、幾つかお伝えしましょう。
「体操してはいけない方」についても触れますので、必ず目を通してください。

■「呼吸」は絶対に忘れずに
何であれ「さあ、やるぞ!」と意気込むと、緊張して、無自覚のうちに息を止めてしまう方が多いものです。ですが、どんな体操でも、息を止めないことが基本です。
息を止めると血圧が上がり、心臓にも負担がかかります。そのまま動いていると脳梗塞(のうこうそく)や心筋梗塞(しんきんこうそく)のリスクが出てしまいます。特に血圧の高い方は、息を止めないように注意してください。
必ず「吸って吐いて、吸って吐いて」を繰り返しながらやってください。どの体操も「ゆるい」ので、普段の呼吸のままできるはずです。
知らず知らずのうちに息が止まってしまう方は、まずは「吐く」ことを意識するといいでしょう。息を吐いて体の中の空気が減れば、自然に吸うことができます。
■医学的に最も良い、体操の「黄金タイム」
どの体操も、やる時間帯を問いません。朝起きてから寝るまでの間なら、いつやってもいいのです。とはいえ、効率の良い時間帯というものはあります。

運動するのに適した時間帯についてはいろいろな説があるのですが、医学的に最も良いとされているのは、食後よりも食前という研究が注目を集めています(※1)。
朝昼晩の食事の前に体操して、その後30分以内に食事をとるのがベストです。
体を動かしてから食事をとれば、よりおいしく感じられ、胃もたれもしません。〈ゆる片足上げ〉は1日2回、できれば3回と記しましたが、難しい方は1回でもかまいません。
1日1回の場合は、夕飯の前でもいいのですが、「朝ご飯の前」と決めておくほうが、忘れずに習慣化しやすいのではないでしょうか。かくいう私も、朝起きたらすぐに筋トレをしています。いちばん習慣化しやすいパターンで、ルーティンになっているので苦になりません。
もちろん、食事の後にしてはいけないわけではありません。ただし、食後は2時間ぐらいあけてからやってください。
食後には胃や腸に血液が集まります。食後すぐに動いてしまうと、血液が筋肉のほうに行ってしまい、胃腸の血流が減って消化が悪くなるからです。
夕食後にやりたい場合には、就寝の2時間以上前にするほうがいいでしょう。
体を動かすと活動モードの交感神経(こうかんしんけい)が高くなるので、寝る直前にやると眠りにくくなってしまいます。
(※1)Esmarck B, Andersen JL, Olsen S, Richter EA, Mizuno M, Kjaer M. Timing of postexercise protein intake is important for muscle hypertrophy with resistance training in elderly humans. J Physiol. 2001 Aug 15;535(Pt 1):301-11. doi: 10.1111/j.1469-7793.2001.00301.x. PMID: 11507179; PMCID: PMC2278776.
■「1日1セット」でも「1日2セット週3回」でもOK
実は、「1日1セットで毎日やる」のと、「1日2セットで週3回」やるのとでは、同じぐらいの効果があります。ですから、どちらでも結構です。
ただし、厳しいことを言うようですが、「1セットを週に1回か2回」やる程度では、効果は期待できません。
「1日1セットを毎日」でも、「1日2セットを週3回」でも、どちらにしても、できるだけ長期間続けることです。続けてさえいれば、必ず効果が表れます。
「健康のためにと運動を始めたけど、長続きしなかった……」そんな経験をお持ちでしょうか?
わかります。「続ける」というのは、たいていの場合、根気の要ることです。でも、誰でも3カ月続ければ、かなり良い変化を実感できるようになります。
この体操はゆるくて誰にでもできるので、続けることが難しくありません。自分に合った、続けやすい方法を探してみましょう。
テレビをよく見る方なら、「コマーシャルになったらやる」というのもいいと思います。お手洗いに立つたびにやる、というのもいいと思います。いつのまにか回数が増えれば、効果も早く表れるでしょう。
■大事なのは「頻度を保ち、続けること」
ご自分のレベルに合わせて、無理せずに続けること。継続すれば必ず効果が出てくるので、最初は数秒しか立てなくてもガッカリしないでください。そして、コツコツ続けてください。1カ月ほどたてば、「以前よりも長く片足で立てるようになった」と、違いが実感できるはずです。
なお、1セットの内容は、少し減らしてもかまいません。「10回」ではなく、「8回」や「6回」などにしていいのです。
ですが、「1日1セットを毎日」「1日2セットを週3回」などの“頻度”は減らさないでください。回数は減らしてかまいませんが、頻度は保ったまま、とにかく続けることがポイントです。

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中山 潤一(なかやま・じゅんいち)

整形外科医

中山クリニック院長、整形外科医、医学博士。大阪医大(現大阪医科薬科大学)卒業後、同年神戸大学整形外科入局。基幹病院で臨床経験を積み、医学博士号を取得。2005 年、神戸逓信病院医長、08 年、神鋼加古川病院医長を経て、11 年に兵庫県明石市で中山クリニックを開業。医療・健康情報を発信するYouTube チャンネルは登録者数10 万人を超える。

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(整形外科医 中山 潤一)
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