※本稿は、中野崇『最強の身体操作 プロが実践する連動スキルの磨き方』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■しなやかに思い通り動く身体を手に入れたいなら
あなたは、自分の身体を思いどおりに動かせていますか?
「もっと速く走りたい」
「もっと大きなパワーを生み出したい」
「もっと正確にコントロールしたい」
――そう思っても、なぜか思うように身体が動かない。そんな経験はないでしょうか。
これはスポーツをしている人に限った話ではありません。日常生活の中でも、「こんなはずじゃない」と感じる瞬間は誰にでもあるはずです。
一方で、驚くほどしなやかに動く人がいます。
強く力を込めているようには見えないのに、大きなパワーを生み出せる人がいます。
その違いは何でしょうか?
実は多くの場合、これらの原因は柔軟性や筋力の差ではありません。決定的な違いは、「どのように動くか」を知っているかどうかです。
■身体に余計な負担をかけずにパワーを発揮する
私はこれまで、プロ選手や日本代表選手を中心に、さまざまな競技のアスリートのパフォーマンス向上をサポートしてきました。彼らが抱える課題は、多岐にわたります。
・力を込めているのに、十分なパワーを発揮できない
・思いきり地面を蹴っているのに、動き出しが遅い
・動きが安定せず、軸がブレる
・相手に動きを読まれやすく、逆に相手の動きに反応できない
・何度も同じような部位をケガしてしまう
こうした問題の解決に取り組む中で、私はあるひとつの本質に行き着きました。
世の中には多くのトレーニング理論がありますが、どの方法論を見ても、必ずこの原則が根底に存在しています。
つまり、どんな競技でも、どんな状況でも、高いパフォーマンスを発揮するためには「エネルギーを効率よく生み出し、それを適切にパワーに変換すること」が重要になるのです。
私は、この動きの本質を突き詰めた技術を「身体操作」と定義し、追求しています。
■プロ競技でも注目される身体操作
近年、プロ競技の世界でも「身体操作」の概念が注目されています。
プレー中には、相手の動きやボールの位置、味方の配置、時間帯やスコアといった複雑な情報を同時に処理しながら、最適な判断をし、それを即座に動作で実行しなければならない場面が繰り返し訪れます。
このとき、身体操作の質が低いと、いかに的確な判断をしていても、それを実行する動作が制限されたり、反応がワンテンポ遅れたりしてしまいます。
この「ほんのわずかな差」が、試合の流れを左右することはめずらしくありません。
こうした競技スキルと身体操作の影響関係に着目し、身体操作トレーニングを取り入れる指導者が増えてきています。
たとえば、サッカーにはハイプレス(相手がボールを持っているときに積極的にプレッシャーをかけてボールを奪う)という守備的戦術があります。
これを実行しようとすると、走るスピードだけでなく、急減速できる能力が必要になります。急減速できなければ相手に簡単にかわされてしまいますし、そもそも「ブレーキのない車が全速力を出せない」のと同じで、本当のスピードも引き出せません。
急減速は高度な身体操作が要求される動作です。
脚だけで止まろうとすると負荷が大きく、その割に止まるまで時間がかかります。腰を落とさざるを得ないため、次の動作も遅くなって相手への対応が遅れます。
そこでトップレベルの選手は、腕の振りなど上半身からの力をブレーキとして活用し、さらに地面からの反力の方向をうまくコントロールして急減速に協力させることで脚への負担(筋力依存)を減らして、動きの自由度を保持します。
これこそが、身体操作の最たる例です。
止まるという動作ひとつとっても、「どう動くか」によって差が生じ、身体操作が戦術的な競技動作にまで直結することを意味しています。
「身体操作」とは、単に筋肉を鍛えることや柔軟性を高めることにとどまりません。
重力との付き合い方、連動性、繊細な重心コントロール、関節や筋肉などを通じた力学的な作用など、外からは見えにくい要素が、実は動きのキレや強さを決定づけています。
驚くほど速く、強く、しなやかなパフォーマンスの裏には、こうした身体操作の仕組みが隠されているのです。
■体を一度「不安定にさせる」トレーニング
今回は、これまでトップアスリートたちに指導してきたプロ向けの内容をベースに、誰でも取り組めるトレーニングに再構成した「身体操作トレーニング」の中から、腕・上半身の急脱力による落下系の動作である「みぞおち抜き腕落下」を紹介します。
実はこの段階のトレーニングは、多くの方が苦手とする内容かもしれません。なぜなら、無意識のうちに「安定しよう」としてしまう傾向があるためです。
私たちは日常生活や競技動作、あるいはトレーニング動作を通じて、常に「安定させる」「姿勢を保つ」ために力を入れるクセが染みついています。そのため不安定を感じると、反射的に安定状態に戻ろうとする反応を起こしてしまいます。
ですが、身体操作ではむしろ「一度不安定になること」が「動きの協力者」(筋肉への依存度を減らすために活用する身体の内外にある機能やエネルギー)を引き出すためには不可欠です。そして落下も、もちろん「不安定」に内包されます。
落下系のトレーニングでは、バランスを崩してもOKです。なにより安定を解除することが重要です。
安定しようとせず、重力に身を任せて落下する感覚を味わう。
はじめは制御しきれないほどの加速を感じるかもしれません。それほどまで完全に重力に身を任せます。
■【みぞおち抜き腕落下】
1.みぞおちを指で押しながら“前後”に動かす
みぞおちを指で押したまま、鼻から息を吸い、吐きながら一気に脱力する。みぞおちを前に出してから、後ろに抜く感覚で行うのがポイント。そのため“前後”に動かす。
2.みぞおちを抜いて、両手を脱力落下させる
動画だと一見、腕を回すトレーニングのように見えるが、動きの肝はみぞおち。ひじを肩の高さまで上げ、みぞおちを抜くタイミングで両腕を揺らすことで全身の緊張を緩和している。みぞおちを急激に脱力させて後方に抜きながら腕を落下させる。
みぞおちと腕を一気に脱力させて、“落とす”感覚を身につけます。一見、腕を回すトレーニングに見えがちですが、腕の動きを借りるのがポイント。腕を揺らすことで緊張が緩和します。
多くの人は腕に力が入りやすく、脱力しようとしても肩や首に余分な緊張が残りがちです。そのため、腕を一気に脱力して振り下ろすのは意外とむずかしく、反射的にブレーキがかかってしまいます。みぞおちも同様に、力が入りやすく抜けにくい部位のひとつです。
この2か所を一気に脱力させてストンと落とす感覚を養うことで、伸張反射や位置エネルギーの転化を利用するための基盤をつくります。
〈ここをチェック〉●背骨の支えが抜けて上半身や腕が一気に落ちる感覚
●みぞおちと腕がつながっている感覚
こういった身体操作トレーニングを複数組み合わせることで、最大限のパフォーマンスを発揮するしなやかな体を手に入れることができます。
興味のある人は、ぜひ取り組んでみてください。
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中野 崇(なかの・たかし)
スポーツトレーナー/フィジカルコーチ/理学療法士
株式会社JARTA international 代表取締役。1980年生まれ。大阪教育大学教育学部障害児教育学科(バイオメカニクス研究室)卒業。2013年にJARTAを設立し、国内外のプロアスリートへの身体操作トレーニング指導およびスポーツトレーナーの育成に携わる。イタリアのトレーナー協会であるAPF(Accademia Preparatori Fisici)で日本人として初めてSOCIO ONORATO(名誉会員)となる。イタリアプロラグビーFiamme oroコーチを務める。また、東京2020パラリンピック競技大会ではブラインドサッカー日本代表フィジカルコーチとして選手を支えた。YouTubeをはじめとするSNSでは、プロ選手たちがパフォーマンスを高めるために使ってきたノウハウを一般の人でも実践できる形で紹介・発信している。著書に、『最強の身体能力 プロが実践する脱力スキルの鍛え方』(かんき出版)がある。
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(スポーツトレーナー/フィジカルコーチ/理学療法士 中野 崇)

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