■ヤメNHKアナ和久田麻由子「news LOG」惨敗
新番組は視聴率および放送内容で大惨敗と言わざるを得ない。
個人視聴率は、同じ時間の裏で放送していたTBS「情報7daysニュースキャスター」(司会:三谷幸喜と安住紳一郎アナ)の3分の1にも届かなかった。土曜夜10時台の改編前の番組「with MUSIC」(司会:有働由美子アナと松下洸平)と比較しても、数字は改善するどころか若年層に逃げられてしまった。実際に視聴した人々の声にも、「期待外れ」「ワンクール持たないと見た」など酷評が多い。
NHKからフリーになって成功したアナウンサーは数多い。ただし、短期間で消えた人も少なくない。和久田アナの初回を見る限り、死屍累々の失敗例に近い民放デビューとなったように見える。何が問題なのかを分析してみた。
■視聴率から浮び上る課題
視聴率で浮かび上がる問題点がいくつかある。まず同番組だけが放送の直前直後でほとんど数字が上がっていない点だ。
同時間帯の裏番組は4%から8%近くと倍増させている。
実はニュースは、番組をはしごして見る人が少なくない。
ここにも課題が見える。NHKの「サタデーウオッチ9」(キャスター:山下毅と林田理沙)終了後に、そこから流出したほぼ同率が「7days」の上昇につながった。「サタデーステーション」(メインキャスター:高島彩)も、テレ朝から流出したほぼ同率がTBSに流れている。
そして残念ながら日テレ「news LOG」への流入はほぼゼロだった。新番組ゆえ認知度の低さが致命的だったかもしれない。それでも事前の番宣も盛んに行われていたことを勘案すると、新番組も和久田アナもそれほど期待されていなかった可能性がある。
■競合番組との比較
この土曜夜9~10時台のニュース4番組を詳しく比較してみよう。
個人全体の視聴率だと、「news LOG」は「7days」の3分の1以下で、夜9時台の2番組(「サタデーウオッチ9」「サタデーステーション」)と比べても半分程度しかなかった。
では、視聴者構成はどうか。
まず全般的な傾向では、ニュース報道番組は65歳以上など中高年で強く、19歳以下など若年層にはあまり見られない。和久田アナを前面に出した「news LOG」も、若年層・コア層・高齢層のいずれにも大きな影響は与えていなかった。
ただし例外はあった。
大学生で比べると、男子より女子で高くなっている。やはり女性アナウンサーがメインという要素が、女子大生には一定の引きとなっているようだ。ただし高島彩がメインを務める「サタデーステーション」には遠く及ばない。NHKで絶対的エースと言われても、そもそも若年層はNHKをあまり見ない。波及効果は限定的だったようだ。
それでも大きく反応した層もあった。
「タレント芸能人」に興味を持つ人々だ。個人視聴率では他局に大きく水をあけられていたが、この層では3分の1以下だったTBSに対して6割と健闘した。2分の1以下だったNHKやテレ朝に対しては、逆転あるいは互角となった。和久田アナの神通力は特定層では有効だったようだ。
■前番組との比較
改編では、前番組と比べてどう改善したかも問題だ。
日テレは有働由美子がキャスターを務めた「with MUSIC」を終了して、報道番組に切り替えた。
まず気になるのは、個人全体の視聴率。残念ながら今年1~3月の平均や、前年同時と比べて微動だにしていない。改善は見られなかった。
さらに視聴者構成では問題も散見される。
65歳以上の高齢者で数字が上がったものの、コア層や19歳以下で下がってしまった点だ。日テレはコア視聴率を重視してきた。
残念ながら今回の新番組は、その方針に沿う結果とはなっていない。
ただし音楽番組と報道番組では、制作費に大きな差がある。出演するアーティストの出演料やセット代などがかさむのに対して、ニュース番組は同じセットを使いまわせる。しかも「news LOG」は和久田アナを除くと出演者は全て局職員だった。経費節減は大きかったはずだ。
視聴率と広告収入が下がる傾向の中で、費用対効果を重視したとすれば一定の成果と言えるかも知れない。ただしこの方針では、広告収入減の流れを止めることはできない。
視聴者構成では、もう1つ気になる点がある。
和久田アナの同世代となる20~40代の女性専業主婦にソッポを向かれている点だ。個人全体では前番組と互角だったが、新番組はこの層の3分の2に逃げられてしまった。口コミ力の高いこの層に不人気というのは、今後の展開にとって大きく影響する。
■ヤメNHKの成功パターン
以上のいくつかの課題を見ると、ヤメNHKアナの失敗パターンが想起される。
それを浮かび上がらせるために、まず成功パターンを見ておきたい。1985年にフリーとなった草野仁アナ、2018年からフリーの有働由美子アナ、そして3年前にNHKを辞めた武田真一アナである。
草野アナはロス五輪の総合司会を務めるなどNHKのエースアナウンサーだった。
フリー転身後、報道・情報・バラエティと幅広いジャンルで冠番組を持つ「民放の顔」となった。TBS「世界・ふしぎ発見!」、日テレ「ザ・ワイド」などだ。元NHKエースながら、民放バラエティで見せる「親しみやすさ」が視聴者に支持された。さらに筋肉隆々という意外性も「いじられ役」としてNHKの壁を壊した。
堅苦しいイメージを良い意味で裏切る柔軟性が勝因だったのである。
武田アナも日テレ「DayDay.」などで活躍している。
NHKで見せていた誠実・温かみ・信頼感が受けたことに加え、慣れないバラエティで一生懸命に立ち振る舞う姿が「ギャップ」として人気の素となった。NHK的要素に付加価値が加わって成功した。
有働由美子アナは言うまでもない活躍ぶりだ。
最大の要因は「本音をさらけ出す親近感」だろう。NHK時代にも「脇汗」も見せる自己開示で有名だったが、多くの現場を踏んだ経験から大物タレントとも渡り合う「回しの技術」が卓越していた。
以上のようにヤメNHKアナの成功例には共通点がある。
NHK時代の強みを発揮すると同時に、プラスαの要素を繰り出している点だ。格式高い技術を持ちつつ、それを笑いに変えられる柔軟性やアドリブ力が「勝負の分かれ目」だったのである。
■ヤメNHKの失敗パターン
成功例の逆が今ひとつパッとしないケースだ。期待されたほどレギュラーが続かない、あるいは「NHK時代のほうが輝いていた」と言われる人々には共通点がある。
まず大きいのは「原稿ありき」から脱却できないケースである。
知り合いのヤメNHKアナに聞いた話が典型的だ。
NHKの番組台本は、精緻に作り込まれ時間の管理も秒単位で厳格な場合が多い。例えば「紅白」の台本が分厚いのは有名だ。ところが彼が民放で渡された台本はペラペラで、しかも「以下2分、笑いよろしく~」とだけ書かれていたという。NHKではあり得ない指示だ。
要は民放では「タレントの暴走」や「現場のハプニング」が前提の構成なのである。それらにアドリブを交えて柔軟に対応し、笑いなど喜怒哀楽に変換する能力が求められる。そのためには人間的長所に加え意外な一面を開示する対応が求められる。それらに欠けるヤメNHKアナが短期間に消えていったのである。
■浮上の鍵は……
和久田麻由子アナの「追跡取材news LOG」は、残念ながら惨敗だった。
視聴率などの数字以外に、実際に見た人々の声が雄弁に物語っている。
「個人的な結論としては“期待外れ”かつ“極めて長く感じた”」
「“さすがの安定感”だが“(和久田アナの)良さが出ていない」
「(有働・武田番組と比べ)和久田さん感が薄い」
SNSの声には、失望を隠せないものが少なくない。
中には「1年持つかな」「もう見なくていいや」など、厳しい意見も散見された。
演出陣の問題も大きい。
「番組の密度が低い印象。個人的に情報量の多さを求めるので物足りない」
「記者の取材の記録(LOG)をたどるコンセプトがわかりにくく、内容が伝わってこない」
「スタジオの必要性が感じられず 演出も目新しさがない」
明らかにコンセプトが番組に出ていない。
番組HPには「ニュースは結論だけではなく、たどりつくまでのプロセスから見えてくる真相もあります」となっている。ところが初回最初の特集で取り上げた「米国トランプ大統領の検証」では、追っかけ続けた記者の「LOG」からは何も浮び上らない。記者も番組演出陣の腕も不十分と言わざるを得ない。
日テレ福田博之社長が記者会見で「まだまだ物足りない」と断ずるのはもっともなことである。
では、今後はどうしたらよいのか。
改善すべきはスタジオとVTRの両方だろう。まずスタジオでは、和久田アナ以外を全て日テレ職員で固めているが、これでは予定調和でハプニングは起こりようがない。同局のバラエティが得意な「熱量」が滲み出ない。
TBS「情報7daysニュースキャスター」では、三谷×安住の丁々発止のやりとりの化学反応が視聴者を惹きつけているように、ハプニングを生むために外の人が不可欠だろう。
VTRも本来日テレは卓越した制作力を持つ。
ところが記者だけで作っているせいか、“走りながら考える”能力に欠け、結果として意外性のある結論や興味深い発見に至っていない。
このあたりを改善すれば、ハプニングにどう対応するのか、予定調和でない結論に何をコメントするのか、和久田アナの新たな一面が引き出され、視聴者を惹きつける番組になるのではないだろうか。
まだ始まってわずか1回で全否定する気はない。
それでもリアルタイムで番組を視聴するか否か、視聴者の眼は厳しくなっている。速やかに番組を魅力的なものに改善し、テレビの力を発揮してもらいたい。
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鈴木 祐司(すずき・ゆうじ)
次世代メディア研究所代表 メディアアナリスト
愛知県西尾市出身。1982年、東京大学文学部卒業後にNHK入局。番組制作現場にてドキュメンタリーの制作に従事した後、放送文化研究所、解説委員室、編成、Nスペ事務局を経て2014年より現職。デジタル化が進む中、業務は大別して3つ。1つはコンサル業務:テレビ局・ネット企業・調査会社等への助言や情報提供など。2つ目はセミナー業務:次世代のメディア状況に関し、テレビ局・代理店・ネット企業・政治家・官僚・調査会社などのキーマンによるプレゼンと議論の場を提供。3つ目は執筆と講演:業界紙・ネット記事などへの寄稿と、各種講演業務。
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(次世代メディア研究所代表 メディアアナリスト 鈴木 祐司)

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