健康で長生きするにはどうすればいいのか。医師で、順天堂大学医学部特任教授の小林弘幸さんは「まずは腸内環境を整えることが大切だ。
発酵食品と食物繊維が欠かせないが、最も効果的で手軽に続けられるのはみそ汁だ」という。著書『科学的に証明された自律神経を整える習慣』(アスコム)から“最強のみそ汁”レシピを紹介する――。

■美肌への近道は「腸」にあった
自律神経が乱れると起こる症状のひとつに、「肌荒れ」があります。年齢を重ねて副交感神経が低下してくると、肌のターンオーバーが遅れてシミが目立つようになってしまうだけでなく、髪のパサつきも進んでしまいます。
そこで自律神経を整えれば、おのずと肌も整い「美肌」への変化が期待できるわけですが、腸を整えることこそ、その最大の近道だといってもいいでしょう。
腸内に腸内細菌がいるように、肌にも菌が常時存在し(常在菌)、肌の状態に影響を与えているという研究があります。その数、250種以上ともいわれています。
また、腸内に善玉菌と悪玉菌が存在するように、肌にある菌にも、「美肌菌」とでも呼ぶべき善玉菌と、悪玉菌に相当するものがあると考えられています。
善玉菌には悪玉菌を抑える「表皮ブドウ球菌」や、乾燥から肌を守ってくれる「サーモフィルス菌」が、悪玉菌には炎症やかゆみのもとにもなる「黄色ブドウ球菌」などが存在するほか、日和見菌もあります。
肌もやはり、善玉菌が悪玉菌よりも優勢であればよい影響があります。腸内に腸内フローラがあるように、肌にもいわば「肌フローラ」があるわけです。腸内フローラが改善されれば直接的に肌フローラもよくなるのかどうかについては、まだわからないことが多く、今後の研究課題となっています。

ただし、腸が健康であれば、少なくともよい血液が体中に行きわたるようになります。美肌のためには血の巡りが欠かせませんから、その意味では直結しているわけです。
■チョコレートが「肌の救世主」になる
肌の乾燥を防いでくれるサーモフィルス菌は乳酸菌の一種で、ヨーグルトなどにも含まれている菌です。つまり、腸内環境を整えるためにヨーグルトを食べることは、肌の改善にも貢献してくれるということです。
ヨーグルトと同様、自分に合う質のいいサプリメントを見つけることもいいでしょう。私は栄養素の補給にサプリメントを使いすぎることには否定的ですが、乳酸菌は例外です。そして、もちろん食物繊維も同時にとるようにしましょう。
さらにおすすめの食べ物は、チョコレートです。カカオポリフェノールの抗酸化作用がシミの予防に効き、またカカオプロテインが肌のターンオーバーを促進すると考えられています。
チョコレートはナッツと並ぶ「完全栄養食」です。食べすぎは禁物ですが、自律神経を整える成分が豊富なので、カカオ含有量の高いチョコレートを間食に取り入れるのもおすすめです。
■同じ食事でも太る人、太らない人の差
私たちを悩ます肥満。
そして太っている方の多くのケースにおいて、自律神経全体のバランスの悪さが見受けられます。そもそもじつは、同じものを食べ、同じ運動をしても、太りやすい体質の人と太りにくい体質の人がいます。
脂肪細胞は飢餓状態に備えて、エネルギーを脂肪としてため込む性質を持っています。摂取した過剰な脂肪を際限なくため込み、どんどん肥大化していくのが肥満のメカニズムです。
太りやすさの個人差の謎を解いたのが、当時、東京農工大学に勤めていた木村郁夫(きむらいくお)特任准教授(現・京都大学大学院生命科学研究科教授)でした。腸のなかに生息する細菌のうちのいくつかは、食べ物を分解して「短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)」という物質を作ります。短鎖脂肪酸は、血液を通して全身に送られ、やがて脂肪細胞にも届きますが、脂肪細胞はこの短鎖脂肪酸を感知するとある反応を示します。
なんと、細胞内に脂肪を取り込むのを止めるのです。つまり、短鎖脂肪酸が、「栄養は足りているので、もう脂肪として蓄える必要はありませんよ」というメッセージを脂肪細胞に伝えるわけです。
この短鎖脂肪酸を作る腸内細菌の働きこそが「太りやすい」「太りにくい」という個人差の秘密で、腸内環境が悪くなると短鎖脂肪酸の生産量がガクッと減ります。そうすると肥満細胞の暴走を止められず、エネルギーの消費も活発にならないため、太りやすくなってしまうのです。
■食べながら「太りにくい体」になれる
では、この短鎖脂肪酸を多く作るにはどうしたらいいのでしょうか。

腸内細菌の善玉菌の大好物である「食物繊維」「発酵食品」「オリゴ糖」をとることによって、短鎖脂肪酸の生産を促すことができるといわれています。具体的には野菜、果物、ヨーグルト、納豆、漬け物、はちみつ、そしてみそなどが代表的な食べ物です。
また、短鎖脂肪酸は自律神経にも働きかけます。短鎖脂肪酸は交感神経を刺激するので、代謝が活発になり、摂取したエネルギーを消費し始めます。すると脂肪の取り込みを止めるだけでなく、燃焼をさらに促進させるのです。
私たちは、じつはもともと「肥満防止システム」とでもいうべき働きを備えています。食生活を改善し、短鎖脂肪酸を多く作ることで、ダイエットも効率よく成功することでしょう。
■効果的で飽きにくい「長生きみそ汁」
腸内環境を改善するには「発酵食品」と「食物繊維」が大切です。そして、日本人の歴史的な食文化に腸内環境をよくする重要なヒントがあります。
では、いったいどんな食べ物がもっとも効果的で、調理も手軽で、料理としても飽きが来ずに持続しやすいのか。
その答えは、「みそ汁」です。
私はみなさんに、みそ汁を食べる習慣を強くおすすめしています。
そして、腸と自律神経を改善するみそ汁のレシピ、調理法などを多数考案しています。詳しくは、『医者が考案した「長生きみそ汁」』(アスコム)に載せていますが、ここではそのポイントを簡単にお伝えしましょう。
まず、私の提唱している「長生きみそ汁」は、多くの家庭で食べられているみそ汁とは素材が少し違います。ぜひこの最強のみそ汁を食生活に取り入れて、腸内環境と自律神経を整えてください。
■材料4つを混ぜて冷凍するだけ
「長生きみそ汁」の素材となる「長生きみそ玉」の素材は、次の4つです。
【材料:「長生きみそ玉」10個分】
● 赤みそ(抗酸化力を高めるメラノイジンが豊富)……80グラム

● 白みそ(ストレスを抑えるGABAが豊富)……80グラム

● おろし玉ねぎ(解毒効果の高いアリシン、ケルセチンが豊富)……150グラム

● りんご酢(塩分排出効果の高いカリウムを含む)……大さじ1

これらをすべて混ぜ合わせてベースとなる「みそ玉」を作り、1日1杯、みそ汁をとります。なお、みそは冷凍して保存もできますし、だしなどで味の好みも調節できます。
次に、このみそを使って作るみそ汁の具について。腸活にいいオクラ、里いも、なめこ、にんじん、ごぼう、さつまいもなどを加えれば、腸内環境がばっちり整います。肉や魚などの動物性タンパク質を加えれば、みそ汁1杯でバランスのよい栄養がとれるでしょう。
また、みそはみそ汁だけに使うわけではありませんよね。みそ炒めなどのおかずの調味料にしたり、ご飯や麺と一緒にとることもできます。

基本を覚えれば、じつに楽しく、簡単に習慣化できると思います。前出の書籍にレシピやアレンジの例なども載せていますので、自律神経と腸を整える「最強のみそ汁」を、ぜひ毎日の食生活に取り入れてみてください。

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小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)

順天堂大学医学部特任教授

1960年、埼玉県生まれ。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”としても有名。近著に『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(アスコム)、『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(ともにプレジデント社)『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』(日本文芸社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。

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(順天堂大学医学部特任教授 小林 弘幸)
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