難しい提案でも、相手に受け入れてもらうにはどうすればいいか。コミュニケーション術に詳しいコンサルタントの岡本康平さんは「相手から『YES』を引き出すにはコツがある。
人間特有の心理を利用して会話を操ることで、相手が思い通りに動いてくれる」という――。
※本稿は、岡本康平『100%好かれる 人たらしの習慣』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。
■「第三者」を使って相手の心を動かす
説得しても相手がなかなか応じてくれない場合は、方向を変えてアプローチすると効果的です。それは自分ではない、第三者から伝えてもらうという作戦です。
第三者から本人に伝えることで、当事者間の対立していたストレスが軽減され、聞く耳を持ちやすくなります。相手も構えずに聞けるので新しい視点に気づいたり、力強い後押しになったりします。
ウィーン大学のヘルムト・レダーは当事者でない人間が交渉を調整する際、その人の信頼度を上げることで成功率が上がると説明しています。
■否定的だった相手でも、すんなり話が進む
そのときの第三者は、相手が信頼している人物であったり、相手と自分のどちらにも偏りがなく、公平な立場で判断してくれる人物がいいでしょう。
たとえば、部下が上司から任されたポジションを拒否している場合、別の社員に後押しの言葉をかけてもらいます。
「○○さんから聞いたけど、引き受けるのを拒んでるんだって? ○○さんはキミを買ってるからこそ、そのポジションを任せたいと思ってるんだよ。必ず次のステージにつながるから引き受けてみたらどう?」というように伝えてもらうといいでしょう。
当事者同士では伝え切れない意図や真意にも気づきやすくなるため、意外とすんなり受け入れてくれる可能性があります。

・POINT

直接、本人に伝えても心が動かない場合、第三者から伝えてもらうと話がスムーズです。「この企画について聞きましたが、私もあなたが担当するのが最もふさわしいと思いますよ」などと後押ししてもらえば、本人も心を動かすことも。第三者は相手から信頼されている人や、公平に見てくれる立場の人がいいでしょう。
■「二者択一の質問」で相手は動く
問いかけられたら、ついつい考えて答えてしまうのが、人間の心理。
「いかがですか?」と漠然と言われるよりも、「どちらのほうがいいですか?」と二者択一で言われると、その気もないのにどちらか一方を選びたくなってしまうものです。
その心理を応用して、商品を売りたいときは、AとBの違いを説明しながら差し出し、「どちらのほうがお好みですか?」と聞いていきます。
「どちらかと言えば、Aかな」などと答えてくれたら、こっちのもの。自然と購入する方向へと相手の思考が進んでいきます。
シカゴ大学のユーリ・グニージーは二者択一を迫られたときに、その二つ以外の選択肢を考慮しないことを証明しています。つまり、この場合「断る」ということがなくなるわけです。
■「相手の意思で選んでもらう」ことを目指す
プライベートで家族にお願いするときは、「ちょっと手伝ってほしいんだけど、洗濯干すのと、たたむのとどっちがいい?」と不意打ちのごとく、問いかけます。すると、思わず「たたむほうがいい」と言ってしまうかもしれません。

ここで大事なのは、「相手の意思で選んでもらう」こと。
相手が悩んだときに「もし私なら、Aのほうを選びますかね」などとこちらの意思で誘導してしまうと、「選ばされた!」と感じ、不満が出てくる可能性があるのでご注意を。
・POINT

もし相手に何かを売るときやお願いするとき、二者択一で選ばせる質問をすると、OKする方向へと進みやすくなります。「何かをお探しですか? でしたら、こちらのAとBの商品がおススメです。どちらのほうがお好みでしょうか?」などと質問していくと、相手も思わず答えてしまうはず。
■拒否されても「YES」を引き出す5文字
説得しようとしても、相手が難色を示すときもあるでしょう。
もし、相手が否定的な言葉や不安なことを漏らしたときに、その言葉を捉えて、「だからこそ、いい!」と肯定すると相手は驚き、一歩踏み出すきっかけを作ることができます。
カリフォルニア大学のカレン・ゴンサルコラレは拒否されることによる心理的な影響について研究しており、負の影響をどう解消できるかという成果を発表しています。
たとえば「未経験だから自信がありません」→「だからこそ、経験者にはない斬新な意見がもらえるかと思っているんです」や、「複数の仕事を同時進行で抱えていて、とても引き受けられません」→「だからこそ、そんな有能なあなたに頼みたいのです」と相手の能力を褒めてあげる。
■「あなただからこそ良い!」という褒め方も
「少し値段が高いですね」→「この価格だからこそ、品質にはこだわり抜いています。短期間での故障の心配もなく、長期的に見たらこちらのほうがお得です」というように、相手の言葉を逆手にとって、プラスに変えます。
相手は、断ろうと思ったら、意外にもそれを受け入れてくれるので、一瞬、肩透かしを食らったような気持ちになりますが、「それでもいいんだったら……」と考えを変えてくれるかもしれません。

「あなただからこそ、いい!」という限定的な褒め方も、功を奏す場合が多いです。特に、自信がなさそうな相手にはその一言が効くでしょう。
・POINT

こちらの要望に対し、相手が「自分はこの分野に関して未経験なので、お役に立てないよ」など、否定的な意見を言った場合、それを逆手にとって「未経験だからこそ、いいんです! 新しい視点で意見してもらいたいんです」というように、相手の言葉を肯定して返してあげると聞いてくれる可能性は高まります。
■相手の「YES」が出やすい魔法の時間
おいしいものを食べると人は気分がよくなるものです。そういうときは気持ちも大らかになり、相手もこちらの説得に応じやすくなります。
デンマークにあるオールボー大学のアーネスト・ハンセンは会食がそのメンバー間の緊張をほぐすことを発表しています。
また、食事をして口の中に食べ物が入っていると、必然的に聞き役に回ることになるため、反論など意見がしにくくなります。まさに取引先への「接待」は、そうした心理を突いたワザで、「ランチョン・テクニック」とも言われます。
■おいしいものを食べると気持ちが高まる
緊迫した交渉場面や相手と決裂していて、不利な情勢のときにはこのテクニックは向きませんが、職場の上司や懇意にしている取引先に自身の企画を通したい(便宜を図ってもらいたい)ときなどは、食事に誘うのは効果的です。
ただ、お店選びには気をつけたいもの。普段から相手の好みを探り、評判のお店をセッティングすることができれば喜ばれます。相手が、もし日本酒が好きなら、入手困難な銘酒が飲めるお店を選ぶと、それだけで気がゆるむこと間違いなし!
逆に、接待で料理がおいしくないお店を選んでしまうと逆効果になります。
相手に気持ちよく過ごしてもらう時間と空間を用意して、説得を成功させましょう。
・POINT

上司や取引先などに自分の意見を通したい場合は、食事をしながら話すと、うまく話が進みやすいです。相手が喜びそうなお店をセッティングしたり、評判のスイーツなど差し入れを打ち合わせのときに持っていくのも手です。おいしいものを食べると心地よくなり、こちらの言葉もプラスに解釈してくれます。

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岡本 康平(おかもと・こうへい)

コンサルタント

1965年京都府生まれ。大学卒業後、大手広告制作会社に勤めるも、月間200時間にもおよぶ残業と職場の人間関係に悩まされ、4年で退職。両親が営む会社で働き始めるも業績の悪化により倒産、多額の借金を背負う。転職活動で悩んだことをきっかけに、コミュニケーションや心理学を研究。その後、不動産会社の営業として再就職を果たし、7年で借金を返済。現在は、コンサルタントとして企業の人材育成や社内コミュニケーションの活性化支援をライフワークとしている。

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(コンサルタント 岡本 康平)
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