幸福度を上げる働き方は何か。環境活動家の谷口たかひささんは「ある研究によると、週休3日にすることで、幸福感は劇的に上がり、生産性は変わらなかった。
これは企業からしても、給料を上げずに離職率を劇的に減らす、まるで魔法のようなソリューションだ」という――。
※本稿は、谷口たかひさ『休む勇気 人生で一番大事な仕事は「思い出づくり」』(祥伝社)の一部を再編集したものです。
■年収800万円以降は幸福度を増やしてくれない
社会人になって時間が経つにつれ、同世代が出世していったり、起業したり、投資に成功したりする姿を見ては、比べてうらやんだりすることもあるかも知れません。
しかし、人は一体何のために生きているのでしょうか?
古代ギリシャの哲学者、ソクラテスはこう言ったといいます。
「人生の究極の目的は、幸せになることである」
では、収入が上がれば上がるほど、幸福度は上がるのでしょうか?
答えはNOだという研究があります。
ノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のアンガス・ディートン教授の研究によると、「年収は約800万円までは幸福度を増やしてくれるが、そこからは増えても幸福度を増やしてはくれない」そうです。
収入は、上がりたては生活レベルを上げて幸福度が増したように感じるかも知れませんが、人間はすぐにその幸福度に慣れてしまい、それが当たり前になってしまうことがわかっています。
一方で、イギリスやアイスランド、ベルギーなどで行なわれた研究によると、週休3日にすることで、幸福感はもちろん、ストレスや人間関係、離職率や睡眠の質までが劇的に向上したといいます。
それ以外にも、週休が3日になったところで、生産性、つまり仕事のアウトプットは変わらなかったというのです。
もしあなたが会社の経営者で、おそるおそる週休3日にしてみたら、アウトプットは変わらないのに、従業員が離職しなくなったり、健康を害さなくなったり、本人やその家族まで幸せになったとしたら、週休3日にしない理由なんてあるでしょうか?
■「週休3日制」が当たり前な世の中に
これまでの常識を変えることは、向かい風を感じる場合もあるでしょう。
ただ一方で、そもそも週休2日制には何か科学的な裏付けがあるのでしょうか?
週休2日をアメリカで導入したのは自動車で有名なヘンリー・フォードだったり、日本ではパナソニックグループ創業者の松下幸之助だったりするという説もありますが、そういった歴史の流れで、今はそれが慣習となって当たり前と信じこんでいるだけという可能性はないでしょうか?
100年後や200年後、いや今の技術の進歩のスピードからすれば、もっと近い将来の人間が今の僕たちを見た時に、週に2回しか休んでいなかったことを嘲笑する世の中になることは想像できないでしょうか?
日本全体ではまだまだ遠い未来のように感じますが、フリーランスの人たちはいうまでもなく、企業単位でも部分的には週休3日制の導入が進んでいます。
2016年、ヤフーが「週休3日制」を導入する意向を発表し、世間の話題をさらいました。

ユニクロを展開するファーストリテイリングも、週休3日制を導入しているといいます(地域正社員)。
ただでさえ、人材不足が年々深刻になっており、離職率を下げることはますます経営課題のトッププライオリティになっていくでしょう。
その現実的な解としても、本書を読んでくれている方々が、「週休3日制」を先入観抜きに検討テーブルにのせてくれるなら、この本を書いた僕としては著者冥利につきます。
給料を上げるわけではなく、週休を増やしてそれでもアウトプットは減らず、それでいて離職率は劇的に減らせるのであれば、まるで魔法のようなソリューションではないでしょうか。
■「月給」ではなく「時給」を意識する
学生時代、アルバイトをしたことがあるでしょうか?
多くの方が、何らかのアルバイトをした経験があると思います。他の先進諸国に比べるとまだまだ少ないものの、今はすべての都道府県で最低賃金が時給1000円を上回っており、少しうらやましい気もします。
僕が学生でアルバイトをしていた頃はたしか、大阪でも700円ちょっとでしたから。
さて、学生の頃はアルバイトだから「時給」や「日給」を意識していたものの、社会人になった途端に「月給」や「年収」しか意識しなくなる人がほとんどではないでしょうか?
だけど僕は、社会人になったからこそ、「時給」を意識することを提案したいのです。
例えば「同じ月給」の二人がいたとします(仮にAさん、Bさんとします)。
Aさんは1日8時間きっかりしか働かないのに対して、Bさんは1日12時間も働いている状態に陥っていたとしましょう。
「月給」は同じであっても、「時給」に換算すると、1日8時間しか働いていないAさんは、12時間働いているBさんに比べて、1.5倍の「時給」を稼いでいる計算になるのです。
パートナーや子どもがいて、どうしても必要な出費が増えているという方は、とくに「月給」や「年収」はとても大切な指標だと思います。

しかし同時にこの「時給」というものも意識して、それを高める方向に努力をしていかない限りは、「自分の人生において、自分の思うように使える時間」は増えていかないかも知れません。
■時間やエネルギーを吸いとる人からは離れる
「時給」を増やす努力、というと、単に収入そのものを増やさなければと考える人もいるかも知れません。
しかし、先ほども挙げた通り、「収入は変わらなくても、労働時間を減らすことで増えるのが時給」なのです。
自分の時給を意識することには、他にも大きな意味があると考えています。
現在の日本人の平均年収が約420万円だとして、年平均労働時間が約1600時間だとすれば、平均時給は約2600円という計算になります。
東京にいた時に、ドーナツや牛丼が格安、もしくは無料になるクーポンを片手に握りしめ、長蛇の列をつくっている人たちを見たことがあります。
1時間以上の列ができていると報道されていたのですが、「もし時給が2600円だとすれば、その1時間を使って数百円の無料のものを得るために列に並ぶというのはどうなんだろう?」と当時の僕は思った覚えがあります。
もちろんそれほど単純な話ではなく、他にも色々な要素が絡んでくるため暴論であることは自分でも理解していますが、それでも一つの指標として認識していて損はないと思います。
「高齢の大富豪は、あなたの年齢に戻れるなら1億円でも喜んで払うだろう。だからあなたの年齢は、1億円をポケットに入れて歩いているも同じ」という言葉があります。
かなり極端ですが、一つの真理だとも思います。
お金を盗ると捕まるから、お金を平気で盗ろうとしてくる人はなかなかいないけど、時間は平気で盗ってくる人が多いです。

時間やエネルギーを吸いとってくる人からは、極力離れるようにしたほうがいいと思います。
あなたの今後の時間が持つ本当の価値は、あなたが他の誰よりも高く見積もってあげてください。
そうしないと、社会には、できるだけあなたの時間の価値を低く見積もろうとしてくる人ばかりですから。

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谷口 たかひさ(たにぐち・たかひさ)

環境活動家

1988年大阪生まれ。10代の時に起業し、イギリスへ留学。卒業後、アフリカのギニアで学校設立に携わり、メガバンク/M&A/メディアのコンサルタント、グローバルIT企業の取締役を経験した後、社会課題解決を志してドイツへ移住し、起業。2019年、ドイツで気候危機の深刻さを目の当たりにし、「みんなが知れば必ず変わる」をモットーに、気候危機に関する講演を開始。その中で、最大の脅威は「他の誰かが何とかするだろう」という思い込みであることを感じ、自己肯定感も講演内容に加える。現在も講演を続けており、累計で22カ国、2400回余に。趣味は旅と勉強で、訪れた国は100カ国。保有資格は国際資格や国家資格を含め30種以上。著書に『シン・スタンダード』(サンマーク出版)、『自分に嫌われない生き方』(KADOKAWA)。


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(環境活動家 谷口 たかひさ)
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