7日に最新メンバーを発表した日本代表。
3か月連続でのアジア最終予選という事情もあり、今回初招集された選手はゼロ。
メンバー発表の会見で森保一監督が「それぞれ推し選手がいる」と語っていたように、人選について万人が満足する日はこの先も訪れないだろう。
ここでは、待望論があったものの招集されなかった選手をその事情と一緒にみてみよう。
小久保玲央ブライアン
年齢:23歳
所属:シント=トロイデン(ベルギー)
日本代表経験なし
日本代表のGKは鈴木彩艶(パルマ)、大迫敬介(サンフレッチェ広島)、谷晃生(町田ゼルビア)の3名で固定されつつあるが、彼らはそれぞれクラブで必ずしも安定しているとは言えない。
今夏のパリ五輪でビッグセーブを連発し、“国防ブライアン”として時の人となった小久保玲央ブライアンは、その安定感において上記の3人を上回っていると言えるだろう。
前所属のベンフィカでは一度もトップ出場を果たせなかった。実質的にプロで出場がない選手をA代表に招集するわけにいかないという理屈は理解できるものだ。
ただそれは浦和レッズでほぼ出場機会がなく、シント=トロイデンに移籍して以降定着した鈴木彩艶も同じ。その同じクラブで守護神として試合に出続けている小久保には招集される資格があったはずだ。
町野修斗
年齢:25歳
所属クラブ:ホルシュタイン・キール(ドイツ)
日本代表:5試合3得点(2022~)
日本代表は現在、FW上田綺世(フェイエノールト)、FW浅野拓磨(マジョルカ)が負傷で離脱中。「1トップに最も適した人材」として185cmのFW町野修斗に復帰の期待が高まった。
滑り込みでメンバー入りした2022年ワールドカップは出場なし。昨夏、世界で戦う力を身につけるべくドイツ2部のキールへ移籍し、クラブ史上初のブンデスリーガ1部昇格に大きく貢献した。
今季チームは18チーム中17位に沈んでいるものの、町野はブンデスリーガ9試合4ゴールと世界有数のリーグで目に見えた結果を残している。
ただ直近の試合では先発から外れており、先月ほどの期待感がなかったのは事実。先月初招集されたFW大橋祐紀(ブラックバーン)が2か月連続で選出された一方、町野の2023年3月以来となる復帰はならなかった。
チェイス・アンリ
年齢:20歳
所属:シュトゥットガルト(ベルギー)
日本代表:なし
冨安健洋(アーセナル)、伊藤洋輝(バイエルン)に加えて谷口彰悟が負傷離脱した日本代表。ヨーロッパで頭角を現す20歳の大器に注目が集まったが、年内の初招集とはならなかった。
2022年に福島の尚志高校からドイツの強豪シュトゥットガルトへ加入。セカンドチームで経験を積み、今年に入ってトップチームに合流した。
今季は大きく飛躍しており、開幕戦でデビューを果たすと、チャンピオンズリーグでは全試合に出場するなどチームの重要な戦力となっている。
本職はセンターバックながら、セバスティアン・ヘーネス監督は「我々は彼を右や左サイドでもプレーできるセンターバックとして獲得した」とその汎用性の高さを評価する。
サッカーを始めたのは中学生で高校時代は「一番下手だった」と語っていたが、課題だった技術も日進月歩で改善されてきている。
ただ今月の相手はインドネシアと中国。ボールを支配することも予想されるなかで攻撃面がネックとなったのかもしれない。
佐野海舟
年齢:24歳
所属:マインツ(ドイツ)
日本代表:4試合0得点(2023~)
町田ゼルビア、鹿島アントラーズで活躍し今夏ドイツのマインツへ移籍したMF佐野海舟。
日本で佐野“回収”として話題となったボール奪取能力はヨーロッパの地でも発揮されており、残留が目標のマインツは開幕から勝点を積み重ねている。
その活躍は数字の上でも裏付けされており、デュエル勝利数で5位(108回)、集中的なランニング数で5位(821回)、走行距離で7位(113.7キロ)、空中戦勝利数で15位(28回)、スプリント回数で18位(243回)となっている。
すでにドイツ時代に“デュエル王”と言われ、その後リヴァプールに栄転移籍した遠藤航(リヴァプール)と比較する声も出始めている。
町田時代に同僚だった元北朝鮮代表FWチョン・テセが「遠藤航を超える選手は彼以外には考えられない」と推せば、元日本代表DF槙野智章も「日本代表にも必ず呼ばれると思っています」と太鼓判を押す。
なお日本代表には昨年デビューし今年のアジアカップにも出場しているが、今夏不同意性交容疑で逮捕(その後不起訴処分)された影響もあり遠ざかっている。
渡辺剛
年齢:27歳
所属クラブ:ヘント(ベルギー)
日本代表:3試合0得点(2019~)
大卒後、FC東京でのデビュー1年目に日本代表入りしたDF渡辺剛。その後やや停滞したが、ベルギーで大きく飛躍した。
コルトライク時代にはリーグ最高クラスのスタッツを残し、栄転したヘントでも守備の要として活躍中。空中戦の強さはヨーロッパの舞台でも際立っている。
一方で森保一監督が彼を必ずしも評価していないのは明らかであろう。
昨年には約4年ぶりに日本代表へ復帰し、ヘント指揮官に「行ってほしくない」と言われる中でアジアカップにも参戦したが、大会では途中出場8分のみという屈辱を味わった。
今回も、負傷した谷口の代わりになれるのは彼しかいないと思われた。しかし追加されたのはパリ五輪世代で目立った活躍をみせたDF関根大輝サイドバックを本職とする選手に敗れた事実はあまりにも重い。
今季ヘントは4バックでプレーしているものの、日本代表が現在使用している3バック、そしてその中央は彼をここまで有名にしたポジションだったのだが。
藤本寛也
年齢:25歳
所属クラブ:ジウ・ヴィセンテ(ポルトガル)
日本代表経験なし
10番を背負いながらも“忘れられたヨーロッパ組”となっている藤本寛也。
東京ヴェルディから2020年夏にポルトガルへ渡って5年目。ヴェルディ育ちのテクニックは、サッカーの本場においても大いに発揮されている。
それが数字に表れないこともあったが、今季は開幕から5得点2アシスト。8月のAVS戦ではハットトリックも達成している。
その活躍が評価され、先日にはリーグの監督18名の投票で決まる9~10月の最優秀MF賞に選ばれた。藤本の得票数18.8%は、国内の強豪であるポルトやスポルティングの選手を抑えてトップとなっている。
一度は試してほしいところだが左利きの攻撃的MFには久保建英(レアル・ソシエダ)や堂安律(フライブルク)がいる。また未招集組にも横田大祐(カイザ―スラウテルン)が台頭しているだけに代表入りには強烈なインパクトが必要だ。