独メディアのドイチェ・ヴェレ(中国語版)は27日、中国海洋警察の船が再び“越境”し、台湾がこれに反発したと報じた。

今月14日、台湾の金門島付近で台湾側の取り締まりから逃れようとした中国漁船が転覆した事件が発生した後、中国側は付近の海域で「法執行を常態化する」と明らかにした。

25日には福建省の海洋警察の編隊が付近を巡行し、翌日には海警局の船が制限水域に進入した。

台湾海洋委員会の管碧玲主任委員は27日、中国側の制限水域に進入について「時間は長くなかった」とし、台湾側の巡視船が放送を通じて退去を求めたことを明らかにした。一方で、メディアの分析を引用し「中国側のこの動きは『主権を宣言する形』であり、中国側が『釣魚台(尖閣諸島)モデル』を金門、アモイ海域に持ち込もうとしていることを示している」と指摘した。

この見方は台湾の専門家の間で広がっているもので、台湾の張延廷元空軍副司令官は22日に出演した政治討論番組で「中国は海警船を頻繁に釣魚台付近に巡行させ、主権を宣言している」と指摘した。日本政府によると、2023年に中国船が尖閣沖の接続水域を航行したのは、過去最多の352回に上った。

中国メディアの環球時報は26日付の記事で、中国南海研究院世界海軍研究センターの陳相秒(チェン・シアンミャオ)主任の話として「中国海警はより断固として管轄権を行使する」と伝えたほか、中国現代国際関係研究院海洋戦略研究所の楊霄(ヤン・シアオ)副所長の話として「中国海警は台湾海峡での法執行をさらに進める可能性があり、台湾側の存在空間は縮小されるだろう」と主張した。

一方、台湾側は中国側に政治的な思惑があると見ている。管氏は中国側が海警船を派遣したことについて「政治的な意味合いが非常に強い。過去にも同様の取り締まり事例があるが、今回は中国側に政治的行為と結びつけられた。台湾も国際社会も、これを快く思っていない」と述べた。

台湾国防部や台湾軍は台湾海巡署に処理を委ねるとして動きを見せていないが、緊張がエスカレートするのを避けるためとみられている。このほか、台湾の市民団体「経済民主連合」は27日に海峡両岸観光交流協会の建物前で抗議デモを行った。

同団体は、19日に中国側が金門観光船に強制的に乗り込んで検査を行ったことは「政治的報復」だと批判し、不必要な中国への渡航を控えるよう呼び掛けている。(翻訳・編集/北田)