最近、意表をつかれたコラボレーションのひとつに、Kids Returnとさらさによる「Winter Days 冬の日々(feat.Salasa)」がある。異国の地でそれぞれの音楽を追求してきた二組が、冬という季節を媒介にイマジネーションを重ね、歌声を受け渡していく曲だ。


両者には、偶然とは言い切れない共通項がいくつもある。活動を始めた時期は、同じ2021年。Kids Returnは二人とも1997年生まれでさらさは1998年生まれと、年齢も近い。そして何より、風景を喚起するようなイマジネイティブな作風において、互いの感性は重なっているものがある。

Kids Returnはフランスのインディポップ・デュオであり、バンド名は北野武の映画に由来している。2023年にはサマーソニックで初来日を果たし、”Forever Melodies”と形容されるメロディセンスを印象づけた。昨年リリースの2ndアルバム『1997』では、フレンチポップとブリットポップの影響を柔らかな質感で包み込んだ。今回のコラボ曲を収めた『1997(Deluxe Edition)』は、その射程をさらに広げる一作といえる。一方のさらさは、大きな飛躍を遂げた傑作『Golden Child』(2024年)を経て、Kota Matsukawa、田上龍樹、Reo Anzaiとのとの「Thinking of You」、in-dやuinとの「この街」、ESME MORIとの「YOU」など、多彩な人脈との共作を通し表現を拡張し続けている。ツアーを経て、今年はフェスやイベント出演も相次ぎ、その存在感は高まる一方だ。先日は、自身初となる台湾での単独公演も発表された。

そんな両者による「Winter Days 冬の日々(feat.Salasa)」は、「冬」という主題を扱いながらも閉じられたものではなく、季節を経てもまた新たな感覚を運んでくるようないくつもの顔つきを持つ曲になっている。
ちょうど私たちの生きる世界も、冬が終わり、春が到来した。やわらかな陽射しと穏やかな風のなかで、このコラボレーションの背景を知るために両者へメールを送った。やがて届いたのは、音楽そのものと同じく、静かで温度のある言葉だった。「Winter Days 冬の日々」を冬の思い出としてしまい込むには惜しい。うららかな春の景色にいながら、いま再び、過ぎ去ったこの冬の曲に想いをはせてみよう。

Kids Returnの回答
「さらさは素晴らしい感性と柔らかさを持ち合わせている」

―バンド名”Kids Return”は、北野武監督の映画に由来しているそうですね。映画を観た時、どのようなところに心を動かされたのでしょうか?

KR:あの映画には、一瞬で心をつかまれました。僕たちと同じように、大親友の二人が主人公なんです。そこにはエネルギッシュで自由な空気感があって、若さや友情と深く結びついた、とても美しく柔らかな情緒が漂っています。それに加えて、映画の中で流れる音楽も本当に素晴らしいんですよ(久石譲が作曲)。

―あなたたちの音楽からはクラシックなロックの影響を感じますが、具体的にどういった音楽がルーツにありますか?

KR:僕たちはブリットポップもたくさん聴いてきましたが、それと同じくらい、1960年代から70年代にかけての映画音楽にもかなり影響を受けています。特にエンニオ・モリコーネが手掛けたような、イタリアの映画音楽ですね。
こうした「映画的な音楽(シネマティック・ミュージック)」という概念は、結成当初から僕たちのバンド・アイデンティティを支える大きな柱の一つになっているんです。

Kids Returnのお気に入り楽曲をまとめたプレイリスト

―日本発の1980年代のシティポップが世界で人気を得たり、近年、ノスタルジックなサウンドに注目が集まっています。Kids Returnの音楽にもノスタルジーを感じるのですが、コード進行やサウンドの質感、録音の方法など、具体的にどういった部分でそれが作られていると思いますか?

KR:僕たちが曲を作るとき、自然と音楽を「映像」として捉えているんです。もしその曲から何らかのイメージや思い出が浮かんできたら、「よし、方向性は間違っていないぞ」と確信を持てます。そのノスタルジックな感覚というのは、「悲しみ」と「喜び」の両方が混じり合った感情を作ることで生まれるんです。悲しんでいることさえもどこか楽しんでいるような、そんな不思議な感覚ですね。

―さらさとのコラボレーションはどのようなきっかけで実現したのでしょうか?

KR:2023年の8月、サマソニに出演するために日本に行った際、アーティストたちと知り合う機会がありました。その多くがロックバンドだったんですけどね。パリに戻ってから、「日本のアーティストとコラボできたら最高にかっこいいんじゃないか」という話になったんです。そこで、日本のインディシーンをいろいろと掘り下げていく中で、さらささんの音楽に出会いました。彼女の世界観には、もう一瞬で引き込まれました! ブルージーでどこか切ない雰囲気は、僕たちの音楽とも完璧にマッチすると感じたんです。さっそく彼女に連絡を取って「Winter Days」という楽曲を送ったところ、すぐに気に入ってもらえました! 歌詞の内容や曲に込めたい表現については、リモートで何度もやり取りを重ねました。
たとえば、雪原の空気感や「堕天使」といったイメージに結びつくような凍てついた恋の物語について、じっくり話し合いました。

―さらさの作品に対して抱いている印象について教えてください。どのような点に刺激を受けていますか?

KR:さらささんは、素晴らしい感性と柔らかさを持ち合わせていて、そのクリエイションの仕方もすごく詩的なんです。彼女の声は、どこか切なげでありながら、同時に軽やかさもあって。「Winter Days」に彼女のボーカルが入った最初のバージョンを送ってもらったとき、僕たちはもう、瞬時にハッピーな気持ちになりました! 自分たちが思い描いていたものを、さらに上回る仕上がりだったから。

―日本の音楽家とのコラボレーションということで、「Winter Days 冬の日々」には、日本の文化にインスパイアされた部分もあるのでしょうか?

KR:そうなんです! 曲のメインテーマを支えているあのシンセの音は、坂本龍一さんが使っていたのと同じタイプのシンセを使っているんですよ。すごく80年代っぽい雰囲気があって、一音一音がまるで人間の声のように響くんです。

―歌詞には「angel」「nightmares」といった言葉も出てきますが、制作の際にイメージとして浮かんでいた風景はどんなものでしたか?

KR:歌詞を書いているときは、北野武監督の映画『Dolls』のイメージが頭にありました。特に、登場人物たちが長い衣装をまとって、まるで天使のように見える雪のシーンですね。柔らかさと緊張感の間に漂うような、とても幻想的な雰囲気を持たせたいと思ったんです。

―Kids Returnの音楽は、フレンチポップ的な感覚に加えブリットポップのムードも感じ、今回日本のさらさとのコラボも収録されたことで、どこか無国籍なサウンドのようにも聴こえます。自分たちの音楽がどこに属しているのかは意識していますか?

KR:そうですね! 僕たちの音楽は、オルタナティヴ・ロックのカルチャーに属しながらも、映画や映画音楽と深く結びついていると思います。
今回の「Winter Days 冬の日々」で、さらささんのような日本のシンガーとコラボレーションしたことによって、僕たちはまた違う場所、さらに遠くの方まで連れて行ってもらえた気がします。それこそが僕たちの本当に大好きなこと。常に自分たちをアップデートして、新しい地平を切り拓いていくことができますから。

―今回のコラボ曲が収録された『1997(Deluxe Edition)』について、どんなアルバムを作りたかったのか改めて教えてください。

KR:今回の2ndアルバムに向けては、かなりの試行錯誤と探求を重ねてきました。ファーストアルバムに比べると、よりロックな仕上がりになっています。というのも、その間にツアーを回って、自分たちの曲をライブで演奏してきた経験が大きかったから。それと同時に、さらささんとのコラボレーションのように、新しい方向性も探ってみたいと考えていました。

―アルバムで、お二人が日本のファンにおすすめしたい曲は?

KR:おすすめは「My Hero」と「Teenage Dreams」の2曲ですね! この2つはミュージックビデオも公開しているので、ぜひチェックしてみてください!

―以前サマーソニックで来日されていますが、今後また日本に来ることがあったら、何をしたいですか? 日本から得たいインスピレーションを教えてください。

KR:また日本に戻ってライブをする日が本当に楽しみです。サマソニでの経験は、僕たちにとって本当に信じられないほど素晴らしいものだったから! いつかステージの上で、さらささんと一緒に「Winter Days 冬の日々」を披露できる日が来ればいいなと、心から願っています。

東京で再び演奏するのも待ち遠しいですが、日本の他の都市や地方についてももっと知りたいですね。
雪景色を見てみたいです。そちらの山々はとても美しいと聞いていますし。僕たちはもともとフランスの山も大好きで、実はいつもフランス南西部の高い山の上にある家で曲を作っているんです。だから、いつか日本でも同じように曲作りをしてみたい!

さらさの回答
「懐かしさを感じる楽曲のスタイルに共感しました」

―Kids Returnとはどのようにして出会ったのでしょう?

さらさ:突然、InstagramでDMが届きました。嬉しくてすぐに返信したと思います。

―Kids Returnの音楽を初めて聴いたとき、どのような印象を抱きましたか? どの部分に自分の音楽との近さを感じたのか教えてください。

さらさ:懐かしさを感じる楽曲のスタイルが、私たちの近い部分かもしれません。打ち込みを使いながらも"ライブアーティスト"であるという、Kids Returnのスタイルにも共感します。

―今回の楽曲「Winter Days 冬の日々」は、どのようにやり取りしながら制作を進めましたか?

さらさ:InstagramのDMで楽曲のデモから歌詞まで送りあって、完成まで進めました。Kids Returnの2人がとてもハートフルなので気持ちよく制作できました。

―グローバルのリスナーを想定して、歌い方で意識して普段と変えたポイントはありますか?

さらさ:とくにありません。いつも通り歌詞を書いて歌いました!

―日本語の持つリズムや響きは、このコラボでどのように作用したと思いますか?

さらさ:Kids Returnがトップラインを制作して、私は作詞と歌唱を担当したのですが、2人の作るメロディは日本語のハマりが良く、歌唱も違和感なくできました。
こんなにスムーズに彼らのメロディに乗れることができるのかと驚きでした。

―この楽曲には、景色が浮かんだり詩的な美しさがある点で、映画や小説のようなムードを感じました。制作中、何かそういったインスピレーションもありましたか?

さらさ:Kids Returnの生み出したサウンドや歌詞の内容から浮かんだ情景を歌詞にしました。夏が終わって冬に近づいていく時、少し冷たい風を感じ緑が減っていく景色を見ながら、毎年経験しているはずなのに懐かしさを感じたり、ふと昔のことを思い出したりする感覚を大切にしました。

―冬が明けて、春がやってきました! 2026年はライブやイベント出演の予定も盛りだくさんですが、さらささんは今年の春をどんな季節にしたいですか?

さらさ:今年の春の表情をたくさん感じて、詩に残したいです。この春叶うかは分かりませんが、まだKids Returnのお二人にお会いできていないので、ぜひお会いしたいです。

Kids Return × さらさが語る 国境を越えたコラボ曲「Winter Days 冬の日々」誕生秘話
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Kids Return、さらさ
「Winter Days 冬の日々」
再生・購入:https://kids-return.lnk.to/WinterDays

Kids Return × さらさが語る 国境を越えたコラボ曲「Winter Days 冬の日々」誕生秘話
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Kids Return
『1997(Deluxe Edition)』
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Kids Return × さらさが語る 国境を越えたコラボ曲「Winter Days 冬の日々」誕生秘話

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