◆第107回全国高校野球選手権神奈川大会 ▽準々決勝 横浜5x-4平塚学園(22日・サーティーフォー保土ケ谷)

 神奈川では、今春センバツ王者の横浜が「あと1球」で試合終了の場面で主将・阿部葉太外野手(3年)が右翼フェンス直撃の逆転サヨナラ2点二塁打。劇的に4強入りした。

 あと1球で横浜の夏が終わる。1点を追う9回2死二、三塁。フルカウント。もう後がない。絶体絶命だ。しかし主将・阿部葉は冷静だった。ファウルで2球粘り、8球目。内角高めの直球を振り抜くと、強烈な打球は右翼フェンスを直撃した。2者が生還。逆転サヨナラで4強だ。勝者も敗者も感情があふれ涙する中、阿部葉は落ち着いた表情で整列に加わった。名門のキャプテンの誇りだった。

 「絶対に打てる気しかしなかった。自分が決めるしかないと。自分で言うのも変ですが、『こういうところで回ってくるんだな』と。『お前が打たないと勝てないんだぞ』という、野球の神様のメッセージかなと」

 4回を終え0―4の劣勢。平塚学園の先発左腕・石塚蒼生(3年)を攻略できなかった。だが阿部葉は悲観していなかった。「ウチは攻撃で『5―0野球』を掲げている。5点差なら一方的な試合になるけど、4点差ならまだまだ大丈夫だって」

 村田浩明監督(39)も訴えた。「勝てる。チャンスは来る」。1点差まで詰め、ラストイニング。「力戦奮闘だ」。

指揮官の座右の銘を叫び、士気を高めた。「最後は阿部に回ってくるんですね…。私たちが求めていた勝ち方が、横浜高校に来て初めてできた。みんなが打たせた一本。この子たちが勝って泣いた涙は初めて。成長できる一つの涙になればいい」。そう語る村田監督の瞳もまた、潤んでいた。

 次戦は26日に準決勝で立花学園と激突する。「調子に乗ることなく、負けゲームだと認めて、また次へ準備したい」と阿部葉。瞳の中には、頂点しか見えていない。(加藤 弘士)

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