◆第107回全国高校野球選手権静岡大会▽決勝 聖隷クリストファー3―1静岡(28日、草薙球場)

 新たに8校が代表に決まった。静岡では、聖隷クリストファーが悲願の甲子園初出場を決めた。

29日は決勝3試合が行われ、49代表校が出そろう。

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 誇らしげに校歌を斉唱するナインを見つめ、聖隷クリストファーの上村敏正監督(68)は実感を込めた。「一生甲子園には行けないんじゃないかと思ったし、高校野球が嫌いになりました。やっとつかめて本当に良かった」。創部41年目で初の甲子園。幾多の試練を乗り越えて手にした勝利は、格別の味がした。

 20年夏。コロナが猛威を振るい夏の甲子園は中止に。県独自大会で優勝したが聖地ではプレーできなかった。21年には秋の東海大会で準優勝も、出場枠2のセンバツ選考で落選。「ここ数年、いろんなことがあった」。75年夏に浜松商の選手で甲子園の土を踏んで50年。

監督としても甲子園を経験した指揮官の心が折れかけた。

 支えは選手の純粋な思いだった。1失点完投の左腕・高部陸(2年)、先制2点三塁打の谷口理一三塁手(3年)は「先生の下で野球がしたくて、聖隷に来ました」と声をそろえる。応援席ではセンバツ出場を逃した世代が声を枯らした。

 17年秋に監督に就任し、20年からは校長と兼任の激務にも「野球やりたくて教員になったんだから」と笑う。昭和で浜松商、平成で浜松商と掛川西、そして令和で聖隷クリストファーと、3元号にわたり異なる3校を甲子園に導いた監督は史上初。「これで華々しく辞められればちょうどいい(笑)。昨年(決勝で)負けた子、センバツにいけなかった子、全部含めて今日の勝利」。名将は、スタンドの教え子たちへ視線を送った。(伊藤 明日香)

 ◆聖隷クリストファーのセンバツ落選 21年秋の東海大会決勝で日大三島(静岡)に3―6で敗戦。翌年センバツ選考で東海地区は2枠あり、出場が有力とみられたが、準決勝で日大三島に5―10で敗れた大垣日大(岐阜)が選出され落選した。東海地区選考委は、甲子園で勝つ可能性の高さから判断した、などと説明。

選考を疑問視する声が相次ぎ、国会でも取り上げられるなど波紋を呼んだ。

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