◆第107回全国高校野球選手権愛媛大会▽決勝 済美4X―3松山商=延長10回=(29日・松山中央公園)

 西東京、愛媛、徳島で決勝が行われ、愛媛の済美は7年ぶり7度目の出場を大トリで決めた。代表校が全て出そろった。

 済美・田坂僚馬監督(38)は誰よりも早く、ベンチ前で泣き崩れた。延長10回、代打・牛草智裕(3年)の右翼線を破る適時打で劇的な逆転サヨナラ勝ち。選手として21年前に全国頂点の味を知る指揮官は、「選手たちが勝たせてくれた」と感無量だ。21年ぶりの聖地を狙った古豪・松山商を破り、全国大トリで代表の座をつかんだ。

 ベンチには「笑顔」と記されたホワイトボードが掲げられていた。済美を創部3年目にして全国制覇に導き、14年に他界した上甲正典元監督(享年67)の教えだ。選手を笑顔で迎える「上甲スマイル」の下で学んだ指揮官は、母校にその伝統を引き継ぐ。「選手としてもコーチとしても上甲監督の野球を経験してきた。笑顔でいるのはいつもの野球をするため」。ベンチから、穏やかな笑顔で戦況を見守り続けた。

 「僕たちの代は、監督が練習試合から笑顔を意識しようとよく話してくれた」と滝川晶翔主将(3年)。10回には2点のリードを許したが、選手も笑顔で平常心を保ち、逆転を決して諦めなかった。

「最後は選手を信じて、のびのび野球をやってもらう。勝たせる監督ではなく、勝たせてもらう監督になろうと思っています」と田坂監督。7年ぶりの聖地でも「笑顔」を合言葉に、済美らしい野球を見せる。(藤田 芽生)

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