◆第107回全国高校野球選手権西東京大会 ▽決勝 東海大菅生4-8日大三(29日・神宮)
西東京、愛媛、徳島で決勝が行われ、49代表校が全て出そろった。西東京では日大三が近藤優樹投手(3年)が9安打4失点(自責2)と粘り強い投球で完投勝利。
雄たけびとほぼ同時に、近藤の目から涙があふれた。東京都心で36・4度。今年最高の気温の中、110球を投げ抜いたエースは、マウンドで「ヨッシャー」と絶叫。「本当は喜びたかったのですが、どんな場面でも野手が打ってくれた。いろいろな思いがこみ上げてきました」。9安打4失点と苦しんだが、打線が5回に逆転。6回以降はスコアボードに0を並べ、最後まで投げ切ったのはエースの意地だった。
直球の自己最速は137キロ。相手を圧倒するようなボールがなくても粘れた理由は「気持ち」だった。
01年に日大三に夏の甲子園初優勝をもたらし、その後オリックスなどで通算43勝を挙げた近藤一樹さんと同じ右オーバーハンドのエース。生まれてもいないため「映像を拝見したことも少ししかなく、ほとんど知識はありません」という。だが、23年3月まで指揮していた名将・小倉全由前監督(68)は「打者を打ち取るという気迫のすごさは共通している。ボールが当たった後の姿は、たいしたものだった」と姿を重ねた。
東京・墨田区の両国生まれ。東京スカイツリーを間近に仰ぎながら成長した。「自分が育っていくうちに、スカイツリーが完成しました。寮生活から1か月に1回ほど戻った時に見ると『帰ってきたんだな』とうれしい気持ちになります」と笑う。初めての甲子園へ向けて「目の前の一戦をしっかりできれば」。1文字違いの偉大な先輩の背中を追い、日本一の高さを誇る東京スカイツリーのように“てっぺん”まで勝利を積み上げていく。
◇01年夏の日大三 エース右腕・近藤一樹を擁し、センバツに続いて出場。初戦から2戦連続2ケタ得点と猛打が爆発し、3回戦では主砲・原島正光(元日立製作所)が3戦連続本塁打をマーク。全6戦のうち、10安打を放った決勝を含む5戦で2ケタ安打を記録し、通算90安打で50得点をたたき出した。当時の大会記録となるチーム打率4割2分7厘で、同校初となる深紅の大優勝旗を手にした。
◆近藤 優樹(こんどう・ゆうき)2007年7月23日、東京都生まれ。18歳。幼稚園の年中で野球を始める。両国中では東京青山シニアで投手。日大三に進み、1年秋に背番号18で初めてベンチ入り。2年秋から背番号10で、今大会からエースナンバーを背負う。171センチ、81キロ。右投右打。