田口壮外野手が2000年代に活躍したセントルイス・カージナルス。ワールドシリーズ優勝11回はナ・リーグの球団としては最多で、ニューヨーク・ヤンキース(27回)に次ぐ記録だ。

 観客動員も毎年のように300万人を突破。1試合平均でも4万人前後を集めていた。それが現地8月25日パイレーツ戦で1万7675人。この数字は新ブッシュスタジアム完成の2006年以降初めての2万人割れ(入場制限もあった新型ウィルス蔓延の2シーズンを除く)となって米国のスポーツメディアを賑わせている。8月25日からのパイレーツ4連戦は、1万7675人→1万8602人→1万9836人→1万8894人と一度も2万人に及ばない数字だった。

 今季の1試合平均観客数はESPNのサイトによると2万8244人。この数字はメジャー19位なのだが、2024年の3万5872人(7位)、2023年にはメジャー3位の4万0013人を集めていたことを考えれば異常とも言うほどの減少ぶりだ。

 カージナルスのあるセントルイス市都市圏の人口は約280万人(2020年米国勢調査より)と言われ、これは全米で21位ながら熱狂的な観客動員で「全米屈指のベースボール・タウン」や「セントルイスのファンは世界一」と言われ続けていた。2年続けて勝率5割を割ったのは1994、95年まで遡らなければない強力チームで毎年のようにペナントレースに絡んでいたことも人気の高かった理由の一つだった。

 ところが2023年、借金20で最下位に低迷したことでシーズンチケットの販売が落ち込み、2024年は勝ち越したものの首位から10ゲーム差を付けられた。今季も勝率5割前後を推移しているものの首位とは17ゲーム差を付けられている。

 日本での知名度が高いラーズ・ヌートバー外野手が在籍しているものの、かつてのアルバート・プホルス内野手、ヤディア・モリーナ捕手のようなメジャーを代表する選手が現役を引退。

その後はそんなスター選手が育っていないことも要因の一つだ。2007年オフにGMに就任し2011年に世界一に導いたジョン・モゼリアク編成最高責任者による長期政権が曲がり角に来ているとの見方もあり、同氏は契約通り今季限りで退任する方向だという。

 今オフ以降、新たな指導者の下での名門復活なるか、地元ファンに魅力あるチームに再び変貌できるのか注目したい。

 蛭間 豊章(ベースボール・アナリスト)

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