東京世界陸上は東京・国立競技場で13日に開幕する。今大会日本女子最年少で初出場の800メートル日本記録保持者・久保凛(17)=東大阪大敬愛高=は日本勢初の準決勝、決勝進出を目指す。

父・建二郎さん(51)、母・恵美さん(46)がスポーツ報知の取材に応じ、陸上を始めた当時のエピソードを明かし、初の世界大会へエールを送った。(取材・構成=手島 莉子)

 久保は高3にして、女子800メートルの第一人者だ。昨年6月に日本記録を樹立すると、今年はさらに更新(1分59秒52)して日本選手権も2連覇した。世界陸上の同種目では05年ヘルシンキ大会の杉森美保、07年大阪大会の陣内綾子、22年オレゴン大会の田中希実以来4人目の日本代表。久保には日本勢初の準決勝、決勝進出の期待が懸かる中、父・建二郎さんは「陸上に向けてすごくストイックに頑張っている」と明かし、母・恵美さんも「レースに行く度にタイムが伸びてきています」と成長を喜ぶ。

 小学1年から6年間はサッカーに取り組み、陸上を本格的に始めたのは中学1年から。小学生時代は祖母・浩子さんの教える陸上クラブにも通っていたが「走りで負けても全然、落ち込まない感じでした」と恵美さん。地元の駅伝大会で結果を残し始めてから徐々に気持ちは陸上へ移っていたものの、当時どちらの競技も継続するには時間的にも体力的にも難しかった。家族と悩んだ末に久保が出した答えは「じゃあ、ワンコを飼ってくれたら陸上をやる」。意外な理由で陸上に絞った。今年の日本選手権は両親、兄が応援で来場も、6歳の愛犬「フウタ」(シーズー、雄)は留守番。久保は「その分、頑張らなきゃと思った」と振り返り、愛犬が今も頑張るエネルギー源だ。

 今大会は日本女子代表最年少で注目度は高い。母は「プレッシャーはあんまり感じない子なんです」と心配はしない。強いメンタルも長所。初の世界舞台へ建二郎さんは「今までで最高の走りをしてくれたらそれで十分」。恵美さんも「自己ベストを狙って上まで行ってもらえたら」と背中を押した。両親のエールを胸に17歳は満員の国立競技場を全力で疾走する。

 〇…久保は7月の日本選手権(東京)で2連覇、全国高校総体(広島)で3連覇を達成した。その後は左脚の肉離れで約1週間走れなかったが、徐々に練習を再開。8月末には長野・菅平高原で高地合宿を行い、「調子をどんどん戻してこられている」と初の世界大会に向けて状態を上げている。

 ◆久保 凛(くぼ・りん)2008年1月20日、和歌山・串本町生まれ。17歳。小学1年から6年までサッカー選手。

潮岬中入学から本格的に陸上を始めた。東大阪大敬愛高に進み、全国高校総体800メートル3連覇。24年の日本選手権で初優勝し、奈良の競技会で日本勢初の2分切りとなる1分59秒93の日本新記録(当時)をマーク。今年7月の日本選手権は1分59秒52とさらに縮めて2連覇。東京世界陸上代表に初内定。サッカーで国体出場経験のある父・建二郎さんは、日本代表MF久保建英(Rソシエダード)の叔父。

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