大相撲秋場所は14日に東京・両国国技館で初日を迎える。好角家のテレビキャスター・草野仁(81)が11日、都内でスポーツ報知のインタビューに応じ、新入幕だった先場所で11勝を挙げて優勝を争った西前頭6枚目・草野(24)=伊勢ケ浜=を推し力士に挙げた。
草野仁が子供の頃に夢中になったのが大相撲中継だった。小学生時代、毎日のように友人宅に通ってテレビにくぎ付けになった。憧れたのが第44代横綱・栃錦。「相撲はこう取ればいいんだというのを一生懸命分析していた」。その成果を発揮し、東大4年時には長崎県の国体予選に出場し、相撲未経験者ながら優勝した。
「大学4年の夏休みに(地元の長崎県)島原に帰った際、県のアマチュア相撲協会の理事長(元十両・雲仙山)にばったり会って、来いと言われまして。決勝は前年度の代表選手で体重が125キロ、私は77キロほど。同体で取り直しになり、『栃錦戦法』でいこうと。早めに立って左を差して右上手を取り、寄ると見せかけて相手が押し返そうとするところで体を開いて上手出し投げ。秒殺でしたね。卒論があったので国体は不出場でしたが」
大相撲への関心は今も変わらず、取材などを通じて幅広い交友関係を持つ。
「学生横綱が相撲界に入ってきて、しかも同姓であると。平安時代の頃、太宰府天満宮の近辺に草野氏という豪族がいたらしいんですね。九州一円に子孫が散らばっていて、私は長崎県島原市、草野関は有明海を隔てて向かい側の熊本県宇土市の出身。多分、その一族の流れなんだろうなと。近しいなという感じを持ちました」
今年の春場所からの2場所連続十両V、新入幕の名古屋場所で優勝争いに絡んだ活躍は可能な限り、チェックしてきた。
「相撲を見ていると、正統派で攻めのポイントが非常に良く分かっている。苦しいところからの逆転の投げもあり、いい運動神経をしているな、さすが学生横綱だなと。きっと出世してくれると思いますし、横綱にもなれる可能性があると思って見ています。秋場所は(西前頭)6枚目。役力士とも対戦しなきゃいけないでしょうから、そういう人たちを倒して、いい経験を積み重ねてほしい」
秋場所では日翔志も新入幕を果たした。草野との十両時代の2度の対戦は“草野ひとし対決”として、SNSやファンの間で話題となっていた。
「うちの息子が春場所の頃に『話題になっているよ』と見つけてきて、そのことは知っていました。そうやって皆さんが話題にして、注目してくださるのはありがたいこと。ぜひ日翔志関にも頑張ってもらって、幕内でも対決を見たいですね」
秋場所は大の里、豊昇龍の両横綱の奮起や、幕内で40歳の玉鷲、35歳の高安らベテラン勢にも期待するが、今場所の注目力士として「スーパーヒトシ君」【注1】を託すとすれば、やはり草野だ。
「草野という新進気鋭の力士が上がってきて、これから両横綱とか、そういう相手にどこまでの相撲が取れるのか。非常に興味深いですね」
【注1】TBS系で38年間放送された「世界ふしぎ発見!」のクイズで使用。解答者は草野さんがモデルの「ヒトシ君人形」を賭け、正解すると得点となる。「スーパーヒトシ君人形」は通常の2~3倍の得点となり、トップ賞を獲得するための切り札的存在だった。不正解の場合は、賭けた「ヒトシ君」は没収(ボッシュート)される。
◆草野 仁(くさの・ひとし)1944年2月24日、満州国新京(現・中国吉林省長春)生まれ。81歳。長崎・島原市で育ち、長崎西高から東大文学部社会学科を主席で卒業。67年にNHK入局。
〇…幕内・草野は“草野ひとし対決”に闘志を燃やした。日大の先輩でもある日翔志とは幕下、十両で3度対戦。「日翔志先輩と対決する時にSNSで盛り上がっているのは知っていました。幕内でも組まれれば、頑張ります」。東前頭14枚目で新入幕の先場所は11勝4敗で千秋楽まで優勝争いに絡み、敢闘賞と技能賞を受賞した。秋場所は番付を大きく上げ、さらなる飛躍が期待される。