全日本プロレスは12日、都内で今月7日に21歳で亡くなった長尾一大心(ながお・たいしん)選手の巡業バスの接触事故に関する記者会見を行った。
長尾選手は5月31日に巡業バスとの事故で腹部が圧迫されたことによる外傷性ショックで神奈川・横浜市内の病院へ救急搬送された。
会見には福田剛紀社長、十枝利樹取締役が出席した。会見を前に経過報告書を報道陣に配布した。報告書によると長尾さんは今月6日早朝に容体が急変し7日に敗血症のため亡くなった。10日には横浜市内の斎場で火葬が営まれた。今後、葬儀はふるさとの北海道釧路市で営む予定という。
福田社長は、会見で事故の経過と再発防止策について以下のように説明した。
「さる5月31日の午後、全日本プロレス道場付近の路上で長尾一大心選手が巡業バスを誘導中にバスに接触するという交通事故が起きました。
救急車で横浜市内の病院に緊急搬送され、腹部圧迫による外傷性ショックのため集中治療室で治療をはじめました。幾度も手術を行い、医療機関の方々も全力で治療にあたってくれました。
6月中旬以降は、病院とご両親の許可を得て所属選手とスタッフが長尾選手を面会に訪れました。また、ファンのみなさまからお預かりしたあたたかいお気持ちのメッセージや千羽鶴などはご両親を通じて病室に届けられました。
一日も早い回復をリング復帰を期待していたのですが9月6日の早朝に容体が急変し9月7日の早朝に敗血症によって誠に残念ながら帰らぬ人となってしまいました。
9月10日に火葬が執り行われ、所属選手とスタッフとご縁が深かった選手とで最後の見送りを行い、ご両親が収骨なさいました。
今回の事故の原因ですが、現在は警察が運転手から聞き取りを行うなどして捜査中であり、本当に申し訳ありませんが、まだ具体的な事象を申し上げられる段階ではございません。
今回、まったく予想していなかったこと、起きてはいけないことが現実に起きてしまったことを胸に刻み再発防止に務めております。
巡業に使っていたバスは自社所有ながら運転手は、その都度、2名ずつ外部の方々に委託をしておりました。今後は再発防止と安全の徹底のために社有バスの運行をとりやめ、外部のバス運行会社に選手の移動を委託するようにいたしました。
バスの乗降時には十分に安全に配慮し、例えば、出発地や目的地が細い道沿いなどで運転手が不安を感じているような場合には、絶対に止めず少し離れていても安全に乗り降りできる場所に駐車をさせて自分たち自身で移動するようにいたしました。
他団体でも交通事故を起こさないよう今回のケースを日本プロレスリング連盟に報告を行い業界全体に周知、啓もうさせていきたいと考えております。
交通事故は、被害を受けた者も事故を起こした者もそればかりでなくその周りの人もすべてに影響が及ぶ本当に怖いものだと今、改めて実感しております。
バスについてだけでなく普通車を運転する者も社内には、多くおりますので今後は警察署の協力を得て定期的に社内で安全講習を行い、安全運転を徹底させていくつもりでございます。
私どもも将来の全日を担うと期待されていた貴重な人材を失って深い悲しみの底におります。みんなから愛された長尾選手。
長尾選手は、2003年9月13日、北海道釧路市生まれの21歳。小中学校ではアイスホッケー、高校では柔道を経験した。2023年12月に東京・新木場1stRINGで行われた公開入門テストに合格し24年4月1日に入門。同年10月22日に後楽園ホールでの井上凌戦でデビューした。身長164センチ、体重75キロと小柄な体格も闘志あふれるファイトスタイルで将来が期待されていた。明日13日は22歳の誕生日だった。