34年ぶりに日本の首都・東京で開催される世界陸上。スポーツ報知では連日、見逃せない日本人選手を紹介する。

初回は大会初日13日の最初の決勝種目35キロ競歩に出場し、日本人大会第1号メダルの期待がかかる川野将虎(26)=旭化成=。静岡・須走(すばしり)中時代、陸上を始めるきっかけを作った恩師の船津拓也さん(64)が、親交の深い愛弟子へエールを送った。

 元世界記録保持者・川野は35キロ競歩で22年大会で銀、23年大会でも銅メダルを獲得。タフさを武器に日本人初の3大会連続表彰台&悲願の金メダル獲得に挑む。中学時代の恩師・船津さん(現御殿場南中教諭)は「もちろん、メダルを取れれば最高だけど、本人が納得するレースをしてほしい」とエールを送った。

 須走中には陸上部がなく、川野は卓球部に所属。当時は部活に関係なく、多くの生徒が朝練で校庭を走った。駅伝シーズンには各部活から選手を集め、船津さんが指揮を執って大会に出場。陸上に導いてくれた恩人だ。決して目立つ選手ではなかったが「コツコツ努力する姿勢は、中学生とは思えなかった」と振り返る。入学当初、6分以上かかっていた1500メートル走は3年時に4分20秒台へ飛躍。現在の競歩のレース時と同じく余力を残さず、ゴール後に倒れ込む姿が印象的だった。

 師弟関係は現在も続く。21年3月に一度定年を迎えた船津さんへ、川野から祝電とバラの花が贈られた。同年の東京五輪では北海道開催だった競歩を船津さんは観戦。コロナ禍で声出しは自粛だったため、手書きのボードを掲げて応援した。川野から「ぜひ応援に来て下さい」と言われた今大会も観戦する。「大きな声で応援したい」と日本人第1号メダリストへ、愛弟子の背中を押す。(塩沢 武士)

 ◆川野 将虎(かわの・まさとら)1998年10月23日、宮崎・日向市生まれ。26歳。静岡・御殿場南高1年時から競歩を始める。17年に東洋大進学。50キロは19年全日本高畠大会で3時間36分45秒の日本新記録で初優勝。21年に旭化成に入社。

同年東京五輪6位入賞。35キロ競歩は世界陸上で22年オレゴンで銀、23年ブダペストで銅メダル。名前の由来は寅(トラ)年生まれで、武将のように力強く育ってほしいと願って。177センチ、60キロ。

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