日本相撲協会は12日、秋場所(14日初日、東京・両国国技館)の取組編成会議を開き、2日目までの取組を決めた。横綱昇進後初優勝を狙う大の里(25)=二所ノ関=は初日に新小結・安青錦(21)=安治川=、2日目に玉鷲(40)=片男波=の挑戦を受ける。

大の里はこの日、東京・墨田区の野見宿禰(のみのすくね)神社で土俵入りを行い、気持ちを高めた。十両以上の休場は幕内・尊富士(26)=伊勢ケ浜=、十両・遠藤(34)=追手風=だった。

 気持ちを込めて四股を踏んだ。大の里は両親も見守る中、野見宿禰神社で力強い雲竜型を披露した。同神社での土俵入りは、横綱として最初に迎える東京場所前の恒例で「横綱になった実感が湧いた」と笑顔。神社には、2023年の新弟子時代に通った相撲教習所の奉仕活動で清掃に訪れた。「来るのは教習所以来。こういう形で戻ってきて、すごくうれしい」。汗だくで雑草を取った日から、わずか2年で角界の頂点に立った。境内で頭を下げ、15日間の無事と活躍を願った。

 神社には歴代横綱の名前と出身地が刻まれた石碑がある。新弟子時代から「いつかはという思いを持っていた」という。

「石川県としこ名が書いてあり、親方以来の日本人の名前が刻まれてうれしかった」と、師匠の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)に並べたことに感慨をにじませた。

 この日の取組編成会議では、初日は新小結・安青錦、2日目には先場所黒星を喫した平幕・玉鷲との対戦が決まった。土俵入り後は「(相手は)まだ見てない」としたが、賜杯を手にするためには、初日黒星は絶対に避けたいところだ。安青錦とは同時期に研修所に通い23年10月には一緒に神社の清掃を行った。教習所では一緒にランニングし、座学も受けて「色んなことを聞かれた」。新弟子時代から切磋琢磨(せっさたくま)してきた相手には負けられない。

 秋場所の目標は横綱初優勝。「横綱になって最初の東京場所で、東横綱として迎える。最初の5日間が大事なので一生懸命頑張っていく」と序盤戦をポイントに挙げる。大の里に懸けられた指定懸賞は力士別最多の344本。結びの一番指定の326本より多く、日本相撲協会関係者によると「とても久しぶり」と期待は高まる。「切り替えてまた日曜日から頑張る」。

実りの秋へ、大の里は勝利の神様を祭る神社で表情を引き締めた。(山田 豊)

 ◆野見宿禰神社 野見宿禰とは日本書紀に登場する出雲国(島根)出身の相撲の神様。当麻蹴速(たいまのけはや)に相撲で勝ち「勝利の神様」とあがめられる。神社は1884年に墨田区に創建。東京大空襲で全焼したが、1953年に再建され歴代横綱記念碑が建立された。東京場所開催前は協会の理事長、審判部長らが出席して例祭が行われる。

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