◆JERA セ・リーグ 巨人11×―10阪神(13日・東京ドーム)

 巨人が坂本勇人内野手(36)の逆転サヨナラ打で阪神とのレギュラーシーズン最終戦を制した。初回、3点を先行された直後に中山礼都内野手(23)がプロ初の逆転満塁本塁打。

5回に一挙7失点したが、7回に3点を返し、9回に坂本が「打撃の神様」川上哲治を抜き球団歴代4位の原辰徳に並ぶ12本目のサヨナラ安打を放った。両軍計21得点の乱打戦を制し、3位DeNAとの1ゲーム差をキープ。14日からは敵地でDeNAとの直接対決2連戦に臨む。

 興奮と歓喜の輪の中心で坂本が破顔した。サヨナラが決まると、一塁ベース付近で右手を突き上げてジャンプ。大歓声を浴びながらナインからの手荒い祝福に身を委ねた。23年6月16日の楽天戦(東京D)以来、通算12本目のサヨナラ安打。「当たりは良くなかったですけど、良かったです。(ウォーターシャワーは)浴びてないです。水は誰もかけてない。リスペクトがあるので」と、はにかんだ。阪神とのレギュラーシーズン最終戦。

ルーズベルトゲームを超える両軍合計21得点の乱戦に終止符を打った。

 1点を追う9回1死二、三塁、満を持して代打で登場した。東京D全体が震え、期待感が膨らんだ。フルカウントからドリスが投じた真ん中151キロツーシームに反応。「なんとか前に飛ばしたいと思っていた」。コンパクトにはじき返した打球は遊撃の熊谷のグラブを強襲して、中堅へと抜けた。サヨナラ2点打で最高のフィナーレを告げた。

 切り札として抜群の勝負強さを示している。8月12日の中日戦(東京D)を最後にスタメンはないが、代打として17打数6安打、打率3割5分3厘。10日の広島戦(東京D)で決勝犠飛を放つなど、直近は3戦連続打点を挙げている。阿部監督は「もう、あそこしかなかった。ああやって打てるのは大したもんですよね。

(代打の)難しさは僕も知っているんで、とにかくインフィールド内に飛ばすというのはすごく難しくて、それができるからこそ一番大事なところに取っておいている」とうなった。

 どんな時も勝利のために動く姿は変わらない。ベンチスタートが続く中でも、試合中にオコエやリチャードに配球の考え方などをレクチャーする。ファームにいた時もそうだった。打撃不振による2軍調整中は、自らへの復活へ注力する一方、ヤングGに技術や経験を惜しみなく伝授した。同じ内野手の浦田には守備の際の足の運びや、打席での考え方を助言。ドラフト2位ルーキーは「すごい時間だった」と感謝が尽きない。その浦田がこの日1軍昇格して犠打を成功させ、直後に坂本が試合を決めた。「前の浦田が一発でバント決めて、すごくいい流れで打席には入れた」と背番号6。プレーでも最高の姿を見せた。

 リーグ連覇はかなわなかったが、阪神にやり返すチャンスはある。まずはCS第1ステージが本拠開催となる2位を必ず勝ち取り、その先で虎への雪辱を描く。

クライマックスシリーズもあるし、僕らは2位争いをしている。監督も全試合勝つつもりでやると言っているのでそこにフォーカスしてやりたい」。絵になる代打の神様がチームを高みへ連れていく。(宮内 孝太)

チーム全体が「坂本に回そう」の意識

◆村田真一Point 坂本はさすが千両役者やね。5球連続でスライダーで誘われていたけど、我慢するところは我慢して、浮いたツーシームをきっちりと捉えた。(阿部)慎之助監督も現役の晩年はそうやったけど、あれほどの打者が切り札で控えていると、8回でも9回でも野手陣が「坂本に回そう」という意識になってくるよ。直前の無死一、二塁から浦田が犠打を決めたけど、もう勝利を確信したようなガッツポーズを繰り出して、ベンチでほえてたもんね。もう坂本が決めてくれるって思ってたはずよ。それが全てを物語ってるよ。(スポーツ報知評論家・村田 真一)

◆記録メモ 坂本(巨)が9回に代打で逆転サヨナラ2点タイムリー。10日の広島戦で8回に打った勝ち越し犠飛に続き、代打で2打席連続の勝利打点をマークした。サヨナラ安打は23年6月16日楽天戦の9回、逆転3ランで記録して以来、通算12本目。

代打では初。巨人では11本で並んでいた「打撃の神様」川上哲治を抜いて、原辰徳に並ぶ4位となった。なお、サヨナラ安打のプロ野球最多記録には、清原和博の20本がある。

編集部おすすめ