パ・リーグ 西武1―4ソフトバンク(27日・ベルーナドーム)

 リーグ連覇に貢献したソフトバンクのリバン・モイネロ投手(29)がスポーツ報知に手記を寄せた。先発転向2年目の今季はここまで2年連続の2ケタとなる自己最多12勝(3敗)。

リーグトップの防御率1・46を誇る左腕が、大黒柱の自覚と自身の野球人生をつづった。

 ファンのみなさん、応援ありがとう。今季はファイターズといいライバル関係で戦えた。みんなが集中して、とてもいい雰囲気だったよ。自分の働きも、すごく良かったね。印象に残る登板は選べない。大半が僅差やロースコアだったから。日本ハム戦も多かったし、いい投手との対戦ばかり。そういうチームの戦略の中で勝つ、イニングを多く投げる。期待されたことがしっかりできたと思う。

 勝っても負けても表情が変わらないと言われる。1週間も調整して、投げるのは2時間だから。

最善の準備をして集中力を高める。だからといって、必ずうまくいくわけではなく、悔しさをすぐにぶつけることもできない。感情に左右されず、次の準備をするしかないよね。意識せずとも、自然とそうなっているよ。

 キューバで野手をしていた時は違った。毎日打席があり、その一喜一憂を楽しんでいた。キューバの若手は、登板翌日も野手での出場は当たり前。一塁や右翼を守っていたよ。10代後半に適性を判断される仕組みで、投手に専念したのは17歳。今は投手になって良かったと思うけど、打者だったら失敗していたとも思わないね。どちらかといえば、打つ方が好きだったから。

 そもそも、少年時代は友だちとサッカーをしていた。

野球は国を代表する競技だけど、キューバは物が少ない。ボール1個で、みんなが集まれるサッカーは楽しかったよ。野球を始めたきっかけは、石や果物を投げて遊ぶ姿を近所に住んでいた指導者が見つけて、才能があると言ってくれたこと。『毎日球場に連れていく』と、送り迎えをしてくれるようになった。すぐに夢中になったか? ならなかったね。釣りをしたり友だちと遊ぶ方が楽しいし、練習には行きたくなかったよ。

 実は、今も野球の練習は楽しくない。好きだから続けてきたというより、歴代のコーチが才能を磨いてくれただけ。感謝しないとね。野球に誘ってくれた人は昨年亡くなってしまったけど、日本でのプレーをとても喜んでくれていた。少しは恩返しができたかな。

 キューバでは、通信環境に恵まれた一部の人しか日本の野球を見られないし、自分も見たことはなかった。

でも情報は共有され、帰国すると、みんなが喜んでくれる。同じ町に住む人はもちろん、最近は別の町からも『頑張ったね』と集まってくれるようになったよ。

 日本に来て9年。最初はどれだけいるのか想像もしなかった。でも、成功するという自信、強い気持ちはあったよ。メジャー挑戦を考えたことがないのか聞かれる。通用すると言われて光栄だけど、メジャーで活躍するラテンの選手は、みんな20歳より前から挑戦している。自分の成功は年齢を重ねてから。そう考えると『行きたい』とか『行くべき』と思うことはなかったよ。このまま日本で現役を終える可能性もあるけど、それは誰にも分からないこと。今はホークスのために頑張るだけだよ。(福岡ソフトバンクホークス投手)

 ◆リバン・モイネロ(Livan Moinelo)1995年12月8日、キューバ生まれ。

29歳。キューバ国内リーグから2017年5月に育成枠でソフトバンク入団。同6月に支配下登録。20年に最優秀中継ぎ投手。先発に転向した24年に最優秀防御率。25年6月6日ヤクルト戦(神宮)で球団新記録の1試合18奪三振。17、23年WBCでキューバ代表。178センチ、69キロ。左投左打だが、交流戦で右打ち、球宴で右投げを披露。25年から総額40億円で4年契約。

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