大相撲春場所後に現役を引退した元幕内・剣翔(追手風)が14日、東京・両国国技館で引退会見を行った。「寂しい気持ちが一番。

もうこの先、本気で相撲を取ることがない。25年間、小学生からやってきた相撲から離れるということが、まだ信じられない」と心境を語った。

 24年春場所では取組中に土俵下へ転落した際に「前十字じん帯損傷、内側側副じん帯損傷、内側半月板損傷の疑い」の大けがを負い、古傷だった左膝を悪化させた。しかし、年齢を考えて手術しないことを選択。最近2年はけがと向き合いながらの苦しい土俵が続いていた。

 左膝の状態について、手術をしない以上は患部が良くなることはなかったというが、「出れば勝てることがあるかもしれない」との思いで、本場所の土俵に上がり続けた。その信念のもと、ケガを悪化させた24年夏場所以降の休場は、同年秋場所の2日間だけ。先場所も15戦全敗ながらも15日間を全うした。現役最後となった春場所については「15日間、取り切るのが最後の責任かなという気持ちでやっていた」と心境を明かした。

 また、昨年からはデビューから序ノ口、序二段、三段目を連続優勝で番付を駆け上がってきた注目株の幕下・可貴(追手風)が自身の付け人についた。期待の若手に剣翔は、食事面でもサポート。食事量を増やすことを促し、入門時は120キロほどだった可貴の体重は、一食で2、3合食べるなどして、半年あまりで145、6キロまで増量し、活躍を後押しした。

 部屋の若手への思いや、苦しい状況でも土俵に立ち続けることについて剣翔は「部屋も次に先頭を走る子が必要。自分の膝の状態を考えると、幕内を目指すというよりも、1場所でも長く十両にいたいという思いが強い。遠藤関、大奄美関、大翔鵬関が関取ではなくなって、翔猿関、大栄翔関も徐々に番付を落としてきている。関取として少しでも長くいることで、関取の良さというものを伝えたい。関取は誰でもなれるものではなくて、努力した人しかなれない。少しでもそれを伝えられれば」と話していた。ケガを抱える中でも土俵に上がり続け、次代を担う若手に自身の背中で、関取という存在の大きさを伝え続けた。

 取材では自身の心境を包み隠さず話した。本場所の15日間の取組を終えると、開口一番「長かった~」と安どした。バラエティ番組にも積極的に出演し、200キロを超える巨体で人気に。200キロ超キャラが定着してしまったため、健康診断の体重計測で200キロを下回ってしまった際には、「200キロちょうどでお願いします」と担当者にお願いするなど、おちゃめな一面も。責任感と人間味あふれる力士だった。

(大相撲担当・大西 健太)

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