プロボクシング世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(33)=大橋=と、WBA、WBC、WBO世界同級1位・中谷潤人(28)=M・T=が対戦するスーパーファイトまで、あと3日となった。4階級制覇の尚弥に対し、挑戦者の中谷は3階級を制覇。

ともに32戦無敗という両雄を、元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者で、KOD LABジムの内山高志会長(46)が、独自の視点で徹底比較。勝敗の行方にも言及した。

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 尚弥はアウトボクシングでもインファイトでも、何でもできる正真正銘のオールラウンダーだ。私の知っているすべての選手を思い浮かべても、あまりこういったボクサーは見当たらない。海外に目を向けても、なかなかいない。どんなに優れている選手であっても、何か不得意なものがあるのだが、尚弥には穴がないというのが本音だ。

 中谷は173センチというサイズを生かし、遠い距離で戦わせたら天下一品。だからといって接近戦が苦手なわけではない。距離の近い打ち合いでも、両腕をコンパクトに振り抜き、確実にダメージを与える。昨年12月に判定勝ちしたセバスチャン・エルナンデス(メキシコ)戦では、体のパワーでぐいぐい前進する相手に苦戦を強いられる珍しい一面も見せたが、すべてを兼ね備えていると言っていいだろう。ただ、尚弥よりすべての要素で少しずつ落ちる気がする。

 尚弥の直近の2試合は判定勝ちという結果でも、内容的には相手に何もさせない完勝だった。

過去にルイス・ネリ(メキシコ)、ラモン・カルデナス(米国)にダウンを奪われた経験を持つが、これはファンを喜ばせようと無理にKOを狙いに行った結果の出来事。リスクを冒さず勝利に徹すれば、超一級品のテクニックがあるだけにスキはなくなる。相手にとってはお手上げ状態となる。

 しかしだ。中谷はこれまでの対戦相手とは、質が違う。懐が深く距離がつかみづらい。実力的には一番強く、一番苦手とするタイプだと思う。さらにルディー・エルナンデス・トレーナーの戦略というのも、尚弥陣営にとっては不気味だろう。中谷はトップアマからプロ入りしたエリートとは真逆の道を進み、ここまでたどり着いた。これはある意味、ボクサーを志す若者の希望でもある。強豪高校や大学に行かなくても、拳ひとつでここまではい上がれるというお手本だからだ。尚弥は数試合後にフェザー級へと階級を上げて、チャンピオンにはなると思う。

ただ、相手のサイズも大きくなり倒しづらくもなるはず。一方の中谷は、サイズ的には体のパワーさえつければ、現在のスーパーバンタムより2階級上のスーパーフェザー級までいけるのではと、見ている。

 さて、試合だが、お互い相手の動きを見る静かな入りだと思う。3回ぐらいから動きがあり、流れの中で尚弥がポイントを取られるラウンドもあり、両者にダウンがあってもおかしくない。試合は判定までもつれような気がする。そして最後に手を上げているのは、尚弥かな。(元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者)

 ◆内山 高志(うちやま・たかし)1979年11月10日、埼玉・春日部市出身。46歳。花咲徳栄高1年でボクシングを始め、拓大4年から全日本選手権3連覇などアマ戦績は91勝(59KO・RSC)22敗。2005年7月にプロデビュー。10年1月にWBA世界スーパーフェザー級王座を獲得し、11連続防衛に成功。プロ戦績は24勝(20KO)2敗1分け。

身長172センチの右ボクサーファイター。引退後の18年12月に東京都新宿区荒木町にボクシングジム「KOD LAB FITNESS BOXING」をオープン。

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