◆プロボクシング ▽世界スーパーバンタム級(55・3キロ以下)4団体統一タイトルマッチ12回戦 〇統一王者・井上尚弥(判定)WBA&WBC&WBO同級1位・中谷潤人●(5月2日、東京ドーム)

 日本ボクシング史上最大の興行が実現へと本格的に動き出したのは、25年3月31日。年間優秀選手表彰式の壇上で、尚弥が「中谷君、1年後、ここ東京ドームで日本ボクシングを盛り上げよう」と電撃オファー。

中谷も「やりましょう」と呼応し、握手を交わした。

 大橋秀行会長(61)も、全く聞かされていなかったサプライズだった。「尚弥には『聞いてないよぉ』と言いましたよ。事前に相談したら止められると思って、勝手に言っちゃった。でも、そこから盛り上がっていって、これでいけると思いました」。言葉の余熱が残るうちに、大橋会長はこの直後、26年5月2日の東京ドームの会場を押さえたという。

 先立つ24年5月、神奈川県内のボクシングジム関係者らの親睦会「神奈川拳志会」で、M・Tジムの村野健会長は大橋会長から「東京ドーム、中谷君でやるから」と告げられている。尚弥の名前こそ伏せられていたが、計画の青写真は2年前から描かれていた。

 どちらかが負ければ白紙となる一戦。尚弥は25年、4団体統一王座の4試合の防衛戦というボクシング界で誰も到達していなかった壁を越えた。

 一度だけ、計画が危ぶまれたことがある。昨年12月27日、サウジアラビアで両者が初めて同じリングで“共演”した。

前日計量後、尚弥が突然「大橋会長から来年5月の中谷戦、どうなるか分からないと言われている」と漏らした。万が一サウジで中谷が敗れた場合、尚弥はドームでフェザー級転向初戦に臨むプランも検討されていた。しかし無事に両者とも“前哨戦”をクリア。尚弥は試合後「かき乱してしまって申し訳なかった」と“釈明”。ドーム決戦が確定した。

 世紀の興行を実現させた大橋会長は「ボクシング界にとって、忘れられない一日になる。世間では井上家と井岡選手は交わらないというイメージを持たれていたかもしれないが、そんなことはもうありません。ボクシング界が一つになれば全然できるんですよ。ボクシング界は、これでいい流れになると思う。これが3回目、4回目と続けられれば」と言葉をかみ締めた。(勝田 成紀)

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