歌手の市川由紀乃(50)が、このほどスポーツ報知のインタビューに応じ、13日発売の新曲「ちりぬるを」にかける思いを語った。

 「今年は和の世界を歌いたい」という市川にとって、演歌らしい原点回帰の一曲だ。

徐々に激しく盛り上がっていく、ドラマチックな曲調。タイトルを見た段階から「ストーリーと展開にワクワク感が止まらなかった。道ならぬ恋、という世界観に衝撃を受けた」と声を弾ませた。

 2024年に卵巣がんを患い、開腹手術を受けた。「治療中は声を出しておなかに力を入れると激痛が走った」という過酷な闘病を経て、昨年5月にステージ復帰した。同月にリリースした「朧(おぼろ)」に続く今作のレコーディングに「自分の歌の中でも音域が広い。何度もレッスンを重ねて挑んだので、気持ち良くサビの部分を歌えた時はうれしかった。思い描いていた以上に深い作品になった」とかみ締めた。

 抗がん剤の副作用で手足の指のしびれが続いたが、それも和らいできた。今年2月に大阪・新歌舞伎座で行われた三山ひろしの座長公演では、20キロ以上の衣装を着て花魁(おいらん)を演じ、半月以上にわたる公演を完走。体力面でも手応えを得た。

 尊敬する長嶋茂雄さん(享年89)が、昨年6月に死去。

脳梗塞(こうそく)のリハビリに励む姿を自身と重ね合わせていた。食事会で歌を披露した思い出を振り返り「ご病気の後の姿を皆さんに見せることによって、誰かの力になることをきっと分かっていらっしゃった。自分も頑張らなきゃ、と力をいただいた」としみじみ。「ちりぬるを」は没後初めての新曲となるが、「長嶋さんへの愛は永久に不滅です」と天国のミスターにも届けるつもりだ。

 闘病中には矢沢永吉の曲を聴いて励まされ、昨年12月のツアー最終公演にも足を運んだ。昨秋に始まった自身の復活コンサート「新章」でも「止まらないHa~Ha」を披露するほど傾倒。大病によって「普通であることがどれほどありがたいことか。当たり前のように過ぎていった時間が、本当はとてもスペシャルなことだと学んだ」と前向きに捉えている。

 今年50歳を迎え、将来が楽しみでしかないという。「(闘病から復帰した)49歳の年に、いろんな感情との闘いがあった。今はどう楽しく生きるのかがテーマ。演歌界の先輩が現役バリバリなので『私はまだ若手』という気持ちもありますが、自分も引っ張っていける一人でいたい。

声が続く限りは歌っていきたい」。市川にしかない経験を歌声に反映させる。(堀北 禎仁)

 ◆市川 由紀乃(いちかわ・ゆきの)1976年1月8日、さいたま市生まれ。50歳。93年8月に「おんなの祭り」でデビュー。2002年4月から約5年間、燃え尽き症候群のため活動を休止。16、17年のNHK紅白歌合戦に出場。19年に「雪恋華」で日本レコード大賞最優秀歌唱賞を受賞。

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