◆第87回オークス・G1(5月24日、東京競馬場・芝2400メートル)

 歴史に新たな一ページを刻む。デビュー5年目、22歳の今村聖奈騎手=栗東・寺島良厩舎=がJRAの女性騎手として初めてクラシックに挑む。

騎乗するのは、所属する寺島厩舎の期待馬で忘れな草賞を直線一気で勝利したジュウリョクピエロ(牝3歳、栗東・寺島良厩舎、父オルフェーヴル)。「すごく能力がある子なので、自分はまだまだ恐れ多いですけど、彼女のことは一番分かっていたい」と一番の理解者を目指す。

 馬名の由来は伊坂幸太郎の小説「重力ピエロ」。第一印象は馬体、“力”を含め、牡馬だったが、教え込むことも少なく優秀な女の子。初めて追い切りに騎乗した時は「なんかこれ走るっすよ!って言いました(笑)」と手応えが違った。ほぼ追わずとも併せ馬で負け知らず。初めてしっかり追った昨年9月のデビュー戦で、能力を確信した。

 今村は22年のデビュー年に51勝。新人での50勝以上は史上5人目で、女性騎手では年間最多勝。その年の7月のCBC賞で女性騎手として初の重賞初騎乗初勝利と華々しい船出を切った。しかし、その注目度は19歳には重すぎた。「切羽詰まっていたしな…。

走るのは馬なのに、すごく余裕がなかった。だから、その時の自分はすごくピリついていたと思います」と、プレッシャーで神経をすり減らす日々だった。

 2年目は25勝。3年目は相次ぐケガにも泣かされた。「馬に乗るのが好きなのに、落とされたりすると馬が怖くなって、守りに入ってしまった」と6勝に終わった。

 一番の転機は昨夏の美浦滞在だった。「身近な人と相談して、自分をもっと知らないといけないなと。環境の変化ですごくモチベーションが上がった」と、持ち前のコミュニケーション能力で馬談義に花を咲かせ、騎乗回数も増加、勝ち星も22まで回復した。

 心身ともに再出発を遂げた5年目。調子の波も上向いている。「今の方が明るく、自分らしく楽しく仕事ができているからいいなと思います」。自身3度目のG1騎乗となるオークスは、騎手を志したレースのひとつ。

「父(康成さん)が騎手を引退して、すぐに(栗東・飯田厩舎の助手として)担当したメイショウマンボ(13年)が勝って、競馬に興味を持つきっかけになったレースのひとつ。非常に率直にうれしい」。テレビで応援していた少女が夢の舞台に立つ。

 自身のXにも数多く登場する大好きなピエちゃんとの大一番。「スタートを出たところから、彼女のリズム良く、4コーナーを迎えてあげて、後は彼女の脚の速さを信じてあげたい」。府中の525・9メートルの直線で、ファンの視線を独り占めにする。(松ケ下 純平)

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