今月から全国の保育現場で新しい試みが始まりました。「こども誰でも通園制度」、通称「誰通(だれつう)」。
これまでは共働きなどの「預ける理由」がなければ原則利用できませんでしたが、今月からは理由を問わず預けられるようになります。
「通称「誰通(だれつう)」、本格スタート」
では、いち早く先行モデルとして動いてきた現場はどう運営してきたのか。千葉県で保育園を展開する認可保育園「キートス」の日向 美奈子さんに聞きました。
千葉県の認可保育園「キートス」統括園長 日向 美奈子さん
<「キートス」ホームページ>保育園っていうと、今まで保護者の方が働いていたりとか、そういう理由がないと預けられなかったんですけども、お仕事されてない方のお子さんの、0歳~3歳になるまでのお子さんを、保育園に預けることができるという制度です。専業主婦の方であったりとか、育休中の方で今お休み中という方が対象になります。
利用したい時間がお昼寝の時間にかぶれば、もちろん給食も食べますし、お昼寝もします。ただ、午前中だけの利用であれば、遊んだらバイバイっていう感じで。
今全部で10か所で保育園をしてますので、延べで言うと2024年~2026年3月で、延べ1000人ぐらいの方にご利用いただいてます。本当にこんなに来るとは思ってなかったですね。やっぱり予約枠が大きいところは、どうしても集中しますね。
全国での本格開始は今月1日からですが、こちらの「キートス」では、国の実証実験にあたる「試行的事業」に2年前から参画して現場の課題を探ってきました。
この「誰通(だれつう)」、使い方はまずスマートフォンで専用サイトにアクセスし、近くの施設を探して申請。
保護者「短すぎました」
ただ、ここで一つ大きなハードルとなっているのが、利用時間の上限です。国が定めたルールでは、1人あたり「月に10時間」まで。1日2時間の利用なら月に5回。1日5時間預けたら月に2回しか利用できません。この「10時間」という枠、親御さんはどう受け止めているのか。実際にこの制度を先駆けて2年近く利用してきた、さとみさんにお話を伺いました。
さとみさん(「こども誰でも通園」利用者)
それはありました、短すぎました。「月に10時間」っていう制限があるんですよね。そんな中で毎週通わせたいと思ったら(週に)2時間ずつっていう。
例えば歯医者さんに行って、ちょっとお茶飲んで終わりという感じですね。もう1時間ぐらいあれば、園にもしっかりなじめてっていう感じでしたかね。去年の冬ぐらいからはイヤイヤがひどくて、予約しても行けなかった日があってご迷惑はかけてたんですけど、それも波があって、園のルートを覚えてるので、「あっち~!」って言って泣いて、玄関先でもギャン泣きでした。
最後までなじめず。でも入ったらケロッと笑顔で帰ってくるみたいな感じなんですけど。なじむのは大変でした。
さとみさんは「一日中、子どもと二人きりだったので、わずかな時間でも助けられた」と話していましたが、一件病院に行ったらあっという間。 細切れで通うので子どもが馴染むのも大変です。
こうした声を受けて自治体の中には独自に時間を延ばすところも出てきています。東京都の一部の区では「月最大48時間」、福岡市も「月最大40時間」と、国の基準の4~5倍を確保しているんです。ただ、住んでいる場所によって「たっぷり預けられる親子」と「短時間で苦労する親子」に分かれてしまう、地域格差が生まれている状況です。
苦みんなで声を上げるべき」 現場が突きつける、制度への宿題
そしてこの格差、受け入れ側の「園」も同じ。手厚い補助がない地域では無理に預かろうとすればするほど、赤字が膨らんでしまうんです。じつは今回取材した「キートス」もこの4月、「いったん、やめる」ことにしたそうです。
千葉県の認可保育園「キートス」統括園長 日向 美奈子さん
1時間300円で、1時間以降は30分単位での利用が可能なので、30分150円っていう。
(国の)補助はあります。実施事業者に対してはありますね、それが1時間850円だったんですよね。なので300円+850円=1150円なので、ほんとに、千葉県でいう最低賃金っていう感じですかね…。時間でパートの方の保育士をうまく配属できればそうですけど、例えば正社員で「誰でも通園」のために採用しましたとか、配置しましたってなると、そこは(採算をとるのは)やっぱり難しいですよね。お子さんの利用がなければ、その部分の人件費というのはどうしても持ち出しになってしまうのが実態なので、改善していただきたいところかなと思います。
皆さん「本当に残念です」っていう方…。やっぱりお互いにとって良い形になるといいなと思っていますけども、一事業者じゃなくて、運営している事業者さんがみんながそういう声を上げていくべきだと思うので、はい…。
国から園に支払われる補助金は、1時間「850円」から、「1000円台」に今月から引き上げられたようですが(預け入れる子どもの年齢による細かな差がある)、「誰でも通園」は予約のたびに子どもの顔ぶれが変わります。初めて会う子の安全を守るには、アレルギーの確認など普段以上の神経と人手が必要ですが、今の金額ではこの負担をとても賄いきれません。
また、「誰通」を利用するこどもが来ない時間帯が発生すると、その分、人件費の持ち出しが増えてしまいます。
こうした事情もあって、自治体によっては「園が見つからない」ところもありようで、例えば三重県四日市市では、そもそも保育士が足りず、待機児童も出ている状況で、「今は誰でも通園ができる状況ではない」という趣旨の案内が出ているほど。制度はできたけど、預け先が十分に確保できていないというスタートとなりましたが、せっかく始まった制度、知恵を出し合って続けていってほしいところです。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』より抜粋)

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