私は1987年に投資顧問会社で日本株ファンドマネジャー兼アナリストとなりました。最初に担当したのが半導体産業で、その後も半導体業界について考え続けてきました。
半導体は成長産業だが、好不況の波が大きい
半導体産業は、グローバルな成長産業です。ただし、「安定成長する産業」ではありません。「シリコン・サイクル」といわれる「ブームと不況」を繰り返しながら、成長しています。だから、半導体関連株への投資は面白く、かつ難しいのです。
半導体関連株への投資を考える時、以下三つのポイントを知っていた方が良いと思います。
【1】半導体は成長産業
【2】好不況の波が大きい(「シリコン・サイクル」といわれる)
【3】半導体関連株はシリコン・サイクルを1年近く先取りして動く傾向がある
それでは、一つずつ説明します。
【1】半導体は成長産業
半導体産業は、成長産業です。IT革命→インターネット革命→生成AI革命と呼び名は変わり続け、人類の情報処理技術は急ピッチで進化を遂げていますが、そのインフラ構築に不可欠な基幹部品が「半導体」なので、その需要は拡大し続けています。
半導体の能力は、幾何級数的に拡大しています。半導体回路の線幅は、どんどん縮小して、最先端では2ナノ(1ナノメートル=10億分の1メートル)を切る開発競争となっています。日本の国策半導体企業・ラピダスが、2ナノ半導体の試作品を作り上げたことで注目されています。
半導体は、線幅の縮小だけでなく集積化による能力拡大も進んできました。半導体素子からIC(集積回路)、GPU(画像処理装置)と進化しています。
【2】好不況の波が大きい
半導体産業は、1980年代以降、ブームと不況を繰り返してきました。まずは、1998年以降のシリコン・サイクルをご覧ください。
<世界半導体出荷金額(3カ月移動平均):1998年1月~2026年3月>
ご覧いただくと分かるとおり、世界の半導体産業は右肩上がりの成長産業です。ただし、シリコン・サイクルといわれるブームと不況の大きな波をつくる産業でもあります。
誰もが強気で半導体は絶好調がいつまでも続くと思っているときに突然ピークアウトし、半導体不況が始まります。もう、半導体産業は永遠に復活しないと思われる半導体不況の大底から、突然、急回復が始まります。
今まさに半導体ブームのさなかにあります。かつて経験したことのない大ブームです。生成AIの普及で、世界中でデータセンターへの投資が急拡大しており、その恩恵が半導体産業に表れています。
GPUだけでなくCPUもDRAMも需給がひっ迫しています。最先端の半導体も前世代の半導体も、幅広く不足する大ブームとなっています。
ただし、忘れてはならないのは、半導体ブームにはサイクルがあるということです。永遠にブームが続くことはありません。ブームの後には半導体不況が来ます。この特色ゆえ、半導体関連株は、長期的には大きく上昇しているものの、短期的には急落することもあり、激しく乱高下します。それが半導体株投資を面白く、また、難しくもしています。
【3】半導体関連株はシリコン・サイクルを1年近く先取りして動く傾向がある
半導体関連株は不思議なことに、1年近く、シリコン・サイクルを先取りして動く傾向があります。半導体ブームのさなかに、半導体関連株が下げ始めて「変だなぁ」と思っていると、しばらくして急速に業況が悪化して1年後に半導体不況になっていることがあります。
逆に、半導体不況のさなかに半導体関連株が急騰を始めることもあります。半導体は成長産業なので、半導体不況で下がっているうちに買っておこうと考える投資家が多いためだと思います。
過去の半導体関連株の値動きを検証
それでは、このようなシリコン・サイクルを反映しながら、半導体株がどう動いているか、見てみましょう。図表で2012年以降の日本の半導体株価指数と日経平均株価の動きをご覧ください。
<半導体株価指数と日経平均月次推移:2012年1月~2026年5月>
ご覧いただくと分かるとおり、半導体不況が始まる前、まだ半導体ブームが続いているうちに、半導体関連株は急落しています。後から振り返ると、不況を先取りしたことになります。
実際に半導体不況が始まると、もう半導体株は底打ちして急騰し始めていることが分かります。次のブームを見込んで、不況のうちに半導体株を買い始める投資家がいます。
それでは2018~2026年までのシリコン・サイクルと半導体関連株の動きを振り返ります。
【1】ブームの中で半導体関連株が急落した2018年
2018年の初めには、半導体ブームが続いていました。ところが、半導体関連株は、急落しました。2018年の後半に入ると、活況が続いていたフラッシュメモリ(データセンターやスマホの記憶媒体に使われる半導体)やDRAM(一時的なデータ保存に使われる半導体)の需給が緩み、市況が下落し始めました。
さらに、米中ハイテク戦争の影響を受けて、中国での需要鈍化が鮮明になりました。2019年から半導体不況に入りました。日本の半導体関連株は、不況を1年あまり先取りして2018年初めから急落していました。
【2】半導体不況の中で関連株が急騰した2019年
2019年になり半導体不況が始まると、株価は逆に急騰を始めました。次のブームを織り込む動きが始まっていました。2020年後半から半導体ブームとなり、半導体関連株は一段高となりました。
【3】半導体ブームの中で関連株が急落した2022年
2022年はまだブームが続いていましたが、メモリ市況が下落するなどブーム終焉(しゅうえん)を思わせる事象が表れていました。次の不況を織り込んで、株価は急落しました。
【4】半導体不況の中で関連株が上昇し始めている2023年
2022年後半から半導体不況が始まりましたが、半導体関連株はすでに上昇を始めています。2024年からのブーム復活を先取りした動きと考えることができます。生成AI(人工知能)の利用が世界で急拡大したことを受けて、AI半導体がブームをけん引しました。AI半導体以外の半導体は不振が続きました。
【5】2024年から半導体株急落、2025年4月以降反発、2026年はブーム復活で急騰
2023年中は半導体関連株は急騰しましたが2024年に入ると、一転して急落し始めました。これは何を示しているのでしょうか?
過去の経験則だと、2025年から半導体不況が始まるのかと思ってしまいます。実際にはそうなっていません。AI半導体を中心に2025年も順調な成長が続き、2026年にはまた半導体ブームとなり、半導体関連株は急騰しています。
なぜ、シリコン・サイクルが起こるか?
半導体産業は成長産業なのになぜ、ブームと不況を繰り返すのでしょうか? 原因をひとことで言えば、「過剰投資」です。最先端の半導体を誰よりも早く量産しようと多くのメーカーが競って投資し、一斉に量産に成功する時、一時的に供給過剰が起こって半導体価格が急落して半導体不況が起こります。
それでも、長期的に需要は増え続けるので、いずれまた半導体ブームになります。ところが、その次世代の半導体の量産競争をめぐって過剰投資があると、いずれ次の半導体不況が起こります。その繰り返しが、シリコン・サイクルです。それを、かつて半導体産業の中核を占めていた「半導体メモリ」を例にとって説明します。
1980年代の半導体の用途は、PC向けがほとんどでした。
CPUでは米国のインテル(INTC)が圧倒的に強く、独壇場でしたが、半導体メモリでは、東芝、日立製作所(6501)、NEC(日本電気:6701)など日本メーカーが激しい競争を繰り広げていました。その激しい競争が、シリコン・サイクルをつくりました。
CPUもDRAMも、3~4年ごとに世代交代してきました。新世代になるたびに、PCの性能が拡大し、新たな需要を掘り起こしてきました。
DRAMは世代交代するたびに、能力が4倍に拡大していきました。世代交代するたびに、トップメーカーが入れ替わることもありました。誰もがトップメーカーになろうとして競争するために、供給不足と供給過剰を繰り返すことになりました。
新世代DRAMは、開発当初、旧世代品の4倍以上の値段がつきます。どのメーカーも、価格の高いDRAMを誰よりも早く量産したいと思いますが、技術的に難しく、歩留まり(良品比率)がなかなか上がりません。
そのうちに、1社が量産に成功すると、その会社は値段の高いDRAMを大量に生産して、ばく大な利益を上げます。そのうち他社も歩留まりが上がり始めます。
このように世代交代を繰り返すたびに、誰がトップになるかを巡って熾烈(しれつ)な競争が行われます。誰もが新世代でトップになろうとして過剰な投資を行います。各社の歩留まりが低いうちは、半導体の価格が高いのでブームが続きますが、各社の歩留まりが一斉に上昇した時に半導体は供給過剰となり、価格が急落します。そこで、半導体産業は、不況に転落します。
以上が、1980年代以降のシリコン・サイクルの仕組みです。今は、半導体の種類も用途も格段に広がり、半導体メモリは、半導体産業の中心ではなくなりました。好不況の波がない、安定成長する半導体分野も増え、かつてほど激しい山谷はなくなりました。
そうした環境変化を受けて、「半導体スーパーサイクル説」(半導体産業はもはや不況に陥ることなく永続的に成長していく産業になった、という説)が時々出てきます。
それでもシリコン・サイクルはなくなりません。今でも、最先端の半導体で、供給不足と供給過剰の波は、どうしても起こります。
半導体株をここからまだ買って良いか?
急騰した半導体関連株を追いかけて買うべきではないですが、出遅れの半導体材料株などには投資妙味があると思います。
【1】急騰する半導体関連株を追いかけて買うべきではない
過去の経験則では、半導体ブームの時に、急騰する半導体関連株を追いかけて買うと、次の半導体不況が始まる前の急落で痛い目に遭います。ブームの時は、いつまでもブームが続くと思えますが、いつか半導体が供給過剰になって値が下がる時は来ます。シリコン・サイクルはなくなりません。
【2】出遅れの半導体材料や関連する電子部品株などに投資妙味
今回の半導体ブームは、人類がかつて経験したことのない程の大ブームです。AIデータセンターへの巨額の投資が継続するうちは、ブームが続くと考えられます。半導体材料や関連する電子部品など、幅広い分野にブームの恩恵が出ています。
出遅れの電子材料・電子部品には、ここから上昇が加速するものもあると思われます。出遅れの半導体関連株への投資はまだ続けて良いと思います。
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(窪田 真之)

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