日経平均7万円が意識される中、日本株をけん引するのは生成AI需要による半導体産業の収益拡大です。HBMや先端パッケージへの投資が業績を押し上げ、キオクシアや東京エレクトロン、アドバンテストなどは、中長期的な成長と再評価の余地が大きく、引き続き市場の注目を集めています。
日経平均7万円到達へのマクロ経済環境と株式需給の地殻変動
日経平均株価は、2026年6月3日、AI需要の高まりを背景に一時6万8,000円台に乗せるなど、歴史的な急騰劇を演じています。これまで市場で議論されてきた日経平均株価7万円という大台は、もはや夢物語ではなく、現実的な水準として市場に強く意識されています。
この上昇を支える構造として、主に三つの1株当たり利益(EPS)増加ドライバーが挙げられます。以下の三つです。
[1]海外での利益成長
[2]デフレからインフレへの経済転換
[3]東証改革に伴う自社株買いの恒常化
特に、日本企業のバランスシートに眠る余剰キャッシュや持ち合い株式などを原資とする自社株買いの拡大余地は大きく、実質的な株価純資産倍率(PBR)から見ても現在の日本株は純資産価値に対して依然として極めて割安な水準にあります。短期的な金利上昇や中東などの地政学的リスクによる下値模索があるものの、長期的なトレンドは強いと考えています。
生成AI関連需要の爆発とグローバル・ボトルネックの構造
この上昇相場をミクロの産業面から強力にバックアップしているのが、世界的な生成AIブームの継続と、それに伴うメモリ半導体産業のパラダイムシフトです。
2026年現在、AIへの投資が世界規模で積極的に行われています。この巨額投資は、市場の約70%のシェアを占めるエヌビディア(NVDA)製のGPUや、高速ネットワークインフラへ向かっています。あまりの需要過多により、エヌビディア製GPUの納期は一部の高性能GPUでは36~52週間規模の長納期が想定されています。
ここで最も注目すべき変化は、半導体の製造におけるボトルネックが最先端ロジックの微細化から、データを高速に転送する高帯域幅メモリ(HBM)や台湾積体電路製造(TSMC:TSM)(台湾の半導体受託製造企業)のCoWoS(チップをウェハー上に載せ、さらに基板に実装する技術)をはじめとする先端パッケージング技術へと完全に移行している点です。
<移行する半導体製造のボトルネック>
特にHBMは、AIシステム全体の性能を決定づける超高付加価値コンポーネントです。SKハイニックス(韓国のテクノロジー企業)、サムスン(韓国の多国籍コングロマリット)、マイクロン テクノロジー(MU)のメモリ大手3社は、積層化や極限的な微細化を巡り激しい開発競争を繰り広げています。
2026年5月29日には、サムスンが次世代仕様である「HBM4E」のサンプル出荷開始を発表し、巻き返しを図っています。
このHBM特需が引き起こす重要な効果として、最先端の生産ラインがHBM専用に割り当てられるため、スマートフォンやPCなどで用いられる汎用DRAMの供給が必然的に圧迫され、メモリ価格全体に上昇圧力を生んでいます。このような世界的なAI需要の恩恵をフルに享受し、日本の半導体メモリ市場規模は、急速に拡大しています。
キオクシアHDの急成長とバリュエーションの非対称性
こうしたAI特需とメモリ市場の地殻変動による最大の恩恵を享受し、日本株をけん引するニュースターとして躍進しているのが、キオクシアホールディングス(285A)です。
同社は2024年12月18日、日本の株式の新規公開(IPO)史上初となる承認前提出方式(S-1方式)を活用して上場を果たしました。連結の従業員数は約1万5,000人を誇る巨大メーカーであり、株価は上場初値の1,440円から驚異的な上昇を続け、2026年6月3日時点の終値では7万8,080円という超大物銘柄へと成長を遂げています。
株価急騰を正当化しているのは、その業績の大きな伸長にあります。同社が2026年5月15日に発表した決算では、売上が前期比37.0%増の2兆3,376億2,800万円、営業利益が同92.7%増の8,703億6,900万円、純利益が同103.6%増の5,544億9,600万円という飛躍的な成長を達成しました。
<キオクシアHD業績> 【単位:円】 2025年3月期 2026年3月期 売上高 1兆7,064億 2兆3,376億 営業利益 4,517億 8,703億 純利益 2,723億 5,544億 出所:会社資料より楽天証券作成
自己資本利益率(ROE)は51.9%に達し、設備投資も営業活動によるキャッシュフローで十分賄えています。生成AIの爆発によるデータセンター向け高付加価値ソリッドステートドライブ(SSD)の単価高騰や、PC・スマホ向け需要の底打ちがこれを強くけん引しました。
さらに2027年3月期第1四半期の連結業績予想では、わずか3カ月間で売上収益1兆7,500億円(前四半期比74.5%増)、営業利益1兆2,980億円(同117.5%増)という目覚ましい業績を決算短信で提示しています。
また、2026年5月15日には米国証券取引所への米国預託株式(ADS)の上場準備を開始したと発表しており、グローバル資本からの直接投資ルートを開拓しています。さらに2026年4月8日には台湾のDRAM大手ナンヤ・テクノロジーの株式を約782億円(約156億台湾ドル)で取得し、DRAM領域とのシナジー創出を模索する攻め経営を行っています。
これほどの急成長企業であるにもかかわらず、2027年3月期の予想EPS(約7,687円)ベースで評価すると、予想株価収益率(PER)は10倍程度となり、割安感が意識されています。
ロジック半導体におけるラピダスの2nmパイロット検証とRUMSモデルの革新性
次世代ロジック半導体の分野においては、日本政府による最大級の支援を背景に、北海道千歳市に製造拠点を置くラピダス(Rapidus)が驚異的なスピードで技術的進捗(しんちょく)を遂げています。
2025年4月に研究製造拠点IIM-1で試作ラインを稼働開始させると、わずか3カ月後の2025年7月18日には、世界最先端の2nm GAAトランジスタの動作確認を、通常は6カ月を要するプロセス検証からわずか12日と18時間という短期間で完了させました。さらに2026年2月には2nmの設計用プロセス開発キットをリリースし、クリーンルームを稼働させています。
ラピダスの最大の優位性は、設計支援から前工程・後工程までを垂直統合型で一貫して最適管理するRUMSモデルにあります。従来の半導体製造で主流である大量生産バッチ処理を廃し、ウェハー1枚ずつを精密に処理する枚葉式を徹底することで、ウェハーの製造リードタイムを従来の約120日から50日へと約60%も短縮することを目指しています。
また、後工程においては、2024年12月にセイコーエプソン千歳事業所内に開設したRapidus Chiplet Solutions(RCS)において、2026年4月に本格的な研究開発がスタートしています。
SEMICON Japan 2025で公開された世界初の600mm角ガラス基板を活用したインターポーザー試作の成功は、従来の300mmシリコンウェハー比で最大10倍のパッケージ製造効率を誇り、先端パッケージングにおける主導権獲得を強くアピールしています。
政府は2030年度に向けて半導体・AI分野へ10兆円以上の支援を表明しており、ラピダスへの個別支援も累計約2.9兆円規模に及んでいます。民間からの資金調達も、2026年初頭にはソフトバンクグループ(9984)やソニーグループ(6758)といった最大の民間株主をはじめ、株主数は30社以上に拡大し1,600億円超を確保するまでに成長しています。
これに伴い既存大手の再編も進んでおり、ルネサス エレクトロニクス(6723)は2026年初頭にタイミング事業をSiTime(SITM)に売却することを決定し、車載マイコン(MCU)などの自社コア領域に経営資源を集中させる、選択と集中を推し進めています。
半導体製造装置・検査装置セクターの設備投資サイクルとグローバル競争力
日本の半導体およびメモリ関連の復活劇は、そのまま日本の製造装置・検査装置セクターを空前の設備投資サイクルへと巻き込んでいます。
日本半導体製造装置協会(SEAJ)の2026年1月予測によれば、2026年度の日本製半導体製造装置販売高は前年度比12%増と急増し、全体でも前年度比12%増の5兆5,004億円に上る予測となっています。
特に前工程で圧倒的な存在感を示すのが東京エレクトロン(8035)です。同社の2026年3月期の通期売上高は2兆4,435億円に達し、自己資本比率は71.5%と頑健な財務基盤を構築しています。
検査装置分野においては、世界最高水準のSoCテスタや高性能DRAM・不揮発性メモリ向けテスタを提供するアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)が好業績に沸いています。同社の2026年3月期(2025年度)の決算は、売上高が前期比44.7%増の1兆1,286億円、営業利益が同118.8%増の4,991億円に達し、全ての指標で過去最高を大幅に更新しました。
同社は2026年度(2027年3月期)の見通しとして売上高1兆4,200億円、営業利益6,275億円という強気な数字を打ち出しています。一時的な決算後の利益確定などは見られますが、中長期のAIテスタ需要の拡大ペースに対して、株価評価(フェアバリュー)の上方修正が進んでいます。
<国内の主要な半導体関連銘柄> 企業名
(証券コード) 主な製品・技術分野 2026年3月期実績
(売上高) 2027年3月期予想
(売上高) 主な強み・注目ポイント キオクシアHD
(285A) NAND型フラッシュメモリ 2兆3,376億円 Q1だけで1兆7,500億円
(会社予想) データセンター向けSSD急拡大、
今期予想PER10倍台と割安 東京エレクトロン
(8035) 前工程製造装置
(成膜・エッチング) 2兆4,435億円 1兆5,700億円(会社予想) 世界シェアトップクラスの装置群、主要ファウンドリの投資拡大と連動 アドバンテスト
(6857) 半導体テスタ
(SoC・メモリテスタ) 1兆1,286億円 1兆4,200億円
(会社予想) HBMやAI用GPUの複雑化に伴うテスト需要の爆発、
過去最高益更新 出所:各社資料より楽天証券作成
まとめ
日本株の最高値更新、今後の日経平均7万円に向けた動きは、これら半導体・AI産業の成長に裏打ちされたものです。
現在の半導体・AI関連株の強気相場は、単なるバブルや夢先行の株高ではないと考えています。むしろ企業のEPS(利益成長)の実質的な裏付けを伴った必然的なパラダイムシフトであると考えています。
特にキオクシアやアドバンテスト、東京エレクトロンなどの関連主力企業は、いずれも世界でもトップレベルの技術的地位を築いており、高い価格転嫁力を背景に、今後予想されるインフレ期にあっても極めて高い収益率を維持することができます。
このような歴史的変革期を捉え、株価の一時的な乱高下で過度に一喜一憂するのではなく、成長ポテンシャルに満ちたAI・メモリ需要を冷静に見て、長期分散投資していくことが資産形成に寄与すると考えています。
(茂木 春輝)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
