中国へ渡航する日本人の「30日間ビザ免除」がついに復活しました。その直前に香港から中国へ行った筆者。
2024年11月末に中国当局が発表した、中国へ渡航する日本人の「30日間ビザ免除」。4年半ぶりの解禁とあり、おおいに話題になっています。
香港の中心部からMRTたった45分。中国・深センへの入り口・羅湖駅の様子(2024年、松田義人撮影)。
この免除のおかげで観光・ビジネス双方で行き来がしやすくなるわけですが、しかし、コロナ禍以降、各地の国境では中国への入国の条件が異なったり、その条件もコロコロ変わったりしていたため、筆者個人的にはマユツバな感じを抱いています。
そんな今なのですが、筆者はこの「30日間ビザ免除」の数か月前、香港滞在中に中国・深センに日帰りで渡航しました。香港から中国・深センへの移動自体はMRTでわずか45分。
しかし、そのイミグレーションは、筆者が香港人でも中国人でもない「日本人」、しかもこの「ビザを持っていなかった」こともあり、相応の難儀を経て、ようやく入国するに至りました。
いまの香港は「昔以上のカオス」香港の中心部はイギリス統治時代からの古くからの街並みがそのまま残っている印象で、世界各地にある「中華圏エリア」の中でも独特の雰囲気があります。
中華系民族を中心に一攫千金を狙って香港にやってきたと思われる中近東系の人たちも多い一方、ヴィクトリア・ハーバー付近の尖沙咀(チムサーチョイ)エリアに行けば、高級ブランドの大型店が軒を連ね、アジア系・西欧系双方の富裕層がブランド品の袋をぶら下げて闊歩しています。
その一方で、裏通りに一歩入れば、すえた臭いが漂いネズミが走りまわっていたり、またある裏通りでは、古いビルを囲むように鋭い目つきの立ちんぼがいたりと、なかなかカオスな場所でした。
そのカオスな雰囲気の中を、急発進の荒っぽい運転で駆け抜けるのが香港のタクシー。TAMIYAカラーのような沈んだシルバーとエンジを基調とした車体で、トヨタのコンフォート、あるいはJPN TAXI(コンフォートハイブリッドのモデル名)ばかりです。
イギリス統治時代の面影、香港ならではの独特の雰囲気、そして近年の中国の浸透もあり、それが良いかどうかはさておき、カオスの上にさらにカオスをいくのが今の香港のように思いました。
香港からの国境付近はハイテンションの香港人・中国人でいっぱいこの香港から中国に入国することにしました。まずは、香港の中心部から中国の国境駅となる羅湖駅へ。香港側は「羅湖」ですが、中国側は「深セン」となる駅です。
MRTに乗ること約45分で羅湖駅に着きました。プラットフォームは中国に向かう香港人・中国人双方の人々でごった返しており、何か皆さんテンション高め。複数の団体の人たちは広東語で叫ぶように会話しながら羅湖駅の改札を目指します。
こういったテンション高めの人たちの後ろを、筆者もワクワクしながら向かいました。駅の改札を抜けるとすぐにイミグレーションがあり、ここでパスポートを提示し、中国に入国する行程のようです。
この際、筆者はビザを持っていませんでしたので心配でしたが、下手な中国語で、オバサンの係員に「ビザのない日本人だが、どこに並べば良いか」と尋ねると、ぶっきらぼうに「ここだ。
オバサンの係員に言われた通りに並ぶことが約30分。やっと筆者の番になりました。ただ、ゲートの係員とその後ろに配備された警察が筆者のパスポートを見て、何やら怖い顔をして文句を言います。
「お前ビザないのか!?」「ビザがなければ入れないことを知らんのか!?」と、とにかく怒っています。おそらくは筆者の下手クソな中国語がオバサン係員に通じず、そのために「ビザありの外国人」レーンに並ばされたようでした。
いよいよイミグレーションへ(2024年、松田義人撮影)。
他方、筆者の渡航時の入国の情報が錯綜していました。
「香港からならビザなしで入れる場合がある」といった情報があった一方、「ビザがないことがわかると、そのままいきなり日本に強制送還される」みたいな情報もありました。
また、東京のビザセンターに電話で問い合わせても、日本語が通じにくく、これもまた釈然としません。さらに、順当に東京のビザセンターで申請しても、発給までに数週間……という説もありました。
「なんか面倒くさいし、もういいや。
そして、別の怖い顔の女性係員がやってきました。「まさかどこかに連行されるのでは……」「噂の強制送還だったらどうしよう」と不安に思いましたが、女性係員は筆者を連れ、そのまま2階のビザ発給申請所へ。「ここでビザ作りな」と無愛想に言い、そのまま去っていきました。
「30日間ビザ免除」がずっと続きますようにゲートでさんざん怒られた後だったので、ここでも怒鳴られるかもと気を張っていましたが、申請は意外とスムーズ。特定の機械にパスポートを読み込ませた後、カウンターに申請書、パスポート本来、費用(このときは168元)を支払い、あとはビザ発給を待つのみ。
……なのですが、待てど暮らせどビザが発給されません。
朝9時に申請したものの、もう昼を回ろうとしています。お腹も空いてきた12時半頃、やっとカウンターに係員が現れ、パスポートの1ページにビザのシールを貼ったものを見せてくれ、そのまま返してくれました。
このビザ付きパスポートを持って再び入国ゲートに並び、そのまま中国・深センに入国。香港側のカオスな雰囲気は全くなく、むしろカオスな香港よりもはるかに近代的な都市といった雰囲気です。
ただし、深セン駅に直結する巨大ビル・羅湖商業城は、世界有数のブランド偽物品問屋ビルとして有名。
また、何か面白い買い物ができるかも? と、文具問屋や玩具問屋を見て回りましたが、これらも日本の100均などで売られているものが多く、「いかにも昔の中国的なケバケバしい雑貨」などはありませんでした。むしろ、海外輸出向けの割と洗練されたようなものばかりで、なんだか拍子抜け。
唯一「中国的で面白い」と思えたのは、「セブン-イレブン」そっくりの「セブン・プラス」というコンビニくらいで、3時間以上かけて国境を超えた筆者は少し残念にも思いました。
結果、中国・深センの滞在時間はわずか2時間。ビザ発給に3時間以上使ったことを考えると、なんとも非合理的な滞在ではありましたが、帰りはスムーズに国境を超え、移動時間も含めて1時間強で香港に戻ることができました。
街並み・売られている物など、昔の中国的なケバケバしい雰囲気を期待したものの、いずれも近代的で少し拍子抜け(2024年、松田義人撮影)。
特にコロナ禍以降、中国に入国する際の「ビザ発給」は情報が錯綜し、そしてその手続きもややこしく、これを怠っていきなり国境に行くと怒られたり、めちゃくちゃ時間がかかったりしたわけですが、今回の「30日間ビザ免除」によって、このプロセスが省かれることになります。
ビザが免除されたことで、どれだけ中国を訪れる観光客が増えるかどうかは未知数ですが、それでも中国に興味を持つ人、行ってみたい人がスムーズにアクセスできるようになったのは実に良いこと。どうかこのまま「30日間ビザ免除」が続いてくれることを願うばかりです。