タイ中部、巨大な仏塔「プラ・パトム・チェディ」がそびえる都市ナコンパトムから西へしばらく移動すると、タイ国鉄のノンプラドック駅があります。
【重連】これがタイに渡った2両のDD51形ディーゼル機関車です(写真)
首都バンコクから普通列車だと約2時間で着くこの駅は、南本線から支線のスパンブリー線とナムトック線が分岐します。
駅構内の外れには、凸型車体が特徴的な元JRのDD51形ディーゼル機関車の姿が見え、まるで日本にいるのかと錯覚しそうになります。DD51形は北海道からタイに渡ってきた1137号機と1142号機の2両で、青地に金帯の北斗星色です。
両機はタイ国鉄所属ではなく、インフラ整備会社AS社の建設機械として国鉄線などの近代化工事に使われており、ノンプラドック駅構内のデポ内に常駐します。日本で廃車後、JRの手を離れて販売業者によりAS社へ売却された際には、メンテナンスまでパッケージされていませんでした。同社の社員達は操作と整備をよく理解できないまま運転していましたが、偶然の出会いが重なって、日本人鉄道ファンと整備経験者が「TEAM51」を立ち上げ、適切なメンテナンスと運転がAS社に伝授されていきました。
ボランティアによる整備活動はクラウドファンディングによって支えられ、2026年現在も継続的なメンテナンスとボランティア活動が行われ、AS社内での整備環境改善と技能育成が徐々に育んできました。その模様は過去に乗りものニュースでお伝えしています。
タイのDD51形は、TEAM51メンバーとAS社の社員という、日タイ合同によるメンテナンス作業によって整備が続けられ、国鉄複線化事業などの近代化工事に従事してきました。両機はタイへ来てから5年以上が経過して塗装の劣化が著しく、クラウドファンディングによって2両の再塗装、ナンバープレートの新作を実施することとなりました。当初は2両続けて作業を予定していたところ、1137号機はナムトック線の線路工事に従事していたため、計画が後ろ倒しとなってしまい、1142号機を先に実施することとなりました。
満身創痍の1142号機南本線での線路工事では2両がともに稼働していましたが、1142号機は2025年から稼働していませんでした。
さらにネズミが電気配線をかじって被覆破れを引き起こし、2基のエンジンのうち第2エンジンが力行(加速状態)不能に陥りました。被覆破れは配線がショートして火災の危険性をはらみます。そのため、早急な配線の養生が必要となります。また、コンプレッサーから空気を溜める「元ダメタンク」への配管が腐食を起こし、穴が空いてエアー漏れしていました。
「力行不能は応急的に制御できますが、ネズミの問題は防ぐのが難しく厄介です。エアー漏れ対策については、配管の取り替えとなりますが、車体を持ち上げる必要があります。これはデポで作業できないため、別の修理方法を提案しています」
TEAM51で整備を担当する辛島隆昭さんは、険しい表情をします。第2エンジンの変速機の制御回路がネズミによる被覆破れで不具合を起こしているため、大丈夫なほうの回路へ接続して対応しています。エンジンは応急的に第1、第2の両方で力行できる状態にしていますが、まともに走らせられる状況ではありません。
1142号機は再塗装が施されて美しくなり、ナンバープレートの字体も国鉄時代を模したものへと更新されました。とはいえ、機能はかなり修繕をしなければ使用できない状態にあります。
「僚友」1137号機の調子は?では1137号機はどうでしょうか。辛島さんへ尋ねると「まぁまぁと言った状態です。コンプレッサーの油漏れが気になりますが……」と、こちらも懸念事項はあるものの、総合的に判断して使用してもよい状態とのことです。
油漏れは給油して経過観察とし、第2エンジンのシリンダーヘッドカバーと燃料戻し管に油にじみが発生しており、パッキンの取り替えが必要です。また、フィルター関連の目詰まりが各所で見受けられ、パッキンの破損箇所も見受けられました。対策として清掃や目詰まり対策、パッキンの現地製作を検討しています。
2両のDD51形は日本のように定期的な点検と検査、万全体制の部品交換によって常に最良の状態を維持するのが困難で、あくまでもインフラ整備会社の機械として導入されたゆえに、鉄道車両として正式にタイ国鉄の工場で整備されるわけでもなく、設備に制約のあるAS社のデポで作業をするしかありません。
一連の技術支援は国の事業ではなく、「DD51を助けたい」という日本人鉄道ファンによるボランティア活動と、クラファン出資者の原動力があってこそ成り立っています。
さらに、懸念事項もあります。ノンプラドックでのDD51形2台体制は解消され、デポが分散することです。
また、メンテナンスに対する考え方は、予防保全修繕をベースとした日本と、故障してから対処するタイとで思想が異なります。日々の整備と蓄積していく小さなトラブルに関しても、なかなか解消されません。そもそも国民性が異なるため、こればかりは致し方のないことです。
「メンテナンスに対する考え方の溝は日々痛感していますが、AS社も何とか直して動かしたい熱意は十分に感じています」とTEAM51リーダーの吉村元志さん。その熱意があるからこそ、TEAM51のメンバーは可能な限りサポートして応えていきたいと考えています。
偶然の出会いから始まったタイのDD51形技術支援は、継続的なクラファンを実施しつつ、日本とタイを結んで連絡を密にしながら、一年に一度は大きなメンテナンスと勉強会を実施し、マンパワーによって支えられています。

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