輸送機から無人機ドバドバ…まさに「空中空母」

 エアバスは2026年4月18日、A400M輸送機から最大50機の中型UAS(無人航空機システム)または最大12機の巡航ミサイルを展開させる、いわば「空中空母」とでも言うべき、新しい運用コンセプトを発表しました。

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 A400Mはターボプロップエンジン4基で飛行する輸送機で、2026年5月現在、エアバスが拠点を置くフランス、ドイツ、スペインをはじめ10か国に採用されています。

これまで航空自衛隊とイギリスやフランス、ドイツなどの同志国による戦闘機共同訓練に随伴して来日しているため、実機を見た事のある方も少なくないのではないでしょうか。

 そのA400Mの生産が行われているスペインは、フランス、ドイツと共に次世代航空戦闘システム「FCAS」(フランス語ではSCAF)の共同開発計画を進めています。ただ、このプロジェクトは現在、フランスとドイツの開発主導権争いなどにより空中分解寸前になっています。

 FCASの計画が正式にスタートしたのは2019年6月のことですが、エアバスが2018年に公開したFCASのコンセプト動画では、FCASの中核となる有人戦闘機「NGF」と行動を共にするUASが、A400Mから発進する姿が描かれていました。

もう8年前の段階で決まってた!?

 日本がイギリス、イタリアと共同開発を進めている「GCAP」、アメリカが開発を進めている「F-47」など、第6世代に分類される戦闘機は、「CCA」(Collaborative Combat Aircraft:協調戦闘機)と呼ばれるUASとの協働が前提となっています。

 第6世代戦闘機と行動を共にするCCAは必ずしも一種類のUASではなく、大小様々なタイプが想定されています。大型のCCAは有人戦闘機と同様の降着装置を備えるため、自力で離着陸できますし、航続距離もそれなりに長くなると考えられますが、降着装置を持たず、航続距離も短い小型のCCAを、どうやって戦闘空域に投入するのかが、課題の一つとなっていました。

 FCASの開発が正式決定した2019年6月のパリエアショーでは、エアバスが展示したCCA「リモートキャリア」のコンセプトモデルは、降着装置を備えていませんでした。

 そこで筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)がリモートキャリアをどうやって戦闘空域の投入するのか尋ねたところ、エアバスの担当者は「A400Mを空中空母として使う」と明言していました。

 前に述べたようにFCASの前途は不透明なのですが、おそらくエアバスはこの時点で、将来の戦闘航空システムにはCCAの存在が不可欠であり、A400Mを使って小型のCCAを戦闘空域に投入するという考えは、固まっていたのではないかと思います。

輸送用USAもミサイルも繰り出す!?

 エアバスは2022年にA400Mから同社の無人標的機「Do-DT25」の空中発進・データ転送試験に成功しています。

「空中空母」がいよいよ現実に!? 無人機&ミサイルどっさり 空戦を一変させる“輸送機の使い方”
A400Mの後部ランプドア。UASや巡航ミサイルはここから投入されるものと思われる(竹内 修撮影)

 筆者は2026年2月にスペインのヘタフェで、エアバスからA400Mの説明を受けました。

この席でエアバスの担当者から、A400MはDo-DT25より大型のUASであっても、大きな改造を加えることなく空中発進が可能であるとの見解が示されていました。

 エアバスは2025年の秋に、ドイツのヘンゾルトが開発を進めている貨物輸送用無人グライダー「HADIS」の試験機をA400Mから発進させる試験にも成功しています。このプロジェクトがこの先どのように進むのかは未知数ですが、順調に進むのであれば、A400Mは輸送用UASの運用も可能な「空中空母」になるのかもしれません。

 この空中空母構想は、2026年4月20日から23日まで、マレーシアの首都クアラルンプールで開催された防衛総合イベント「DSA2026」でも説明が行われています。この直前には巡航ミサイルもA400Mで運用する構想が披露されました。

 筆者がDSAの会場でエアバスの担当者に、どのような巡航ミサイルの搭載を考えているのかを尋ねたところ、エアバスの担当者はまだ構想段階だが、タウルス・システムズ(以下タウルス)の「KEPD350」も有力な候補であると述べていました。

 KEPD350は前方の成型炸薬弾頭が地下施設や強固な防護力を持つ指揮所などに穴を開けた後、後方に配置された弾頭により内部を破壊する「メフィスト」と呼ばれる弾頭を使用すれば、厚さ5m以上の鉄筋コンクリート構造物を貫通する能力があると言われています。またエアバースト(空中炸裂)モードを備えた弾頭を使用すれば、屋外に露天駐機された航空機はもちろん、レーダーや地対空ミサイルなどにより構成される敵防空網を面制圧することもできます。

タウルスミサイルで思い出される「日本企業」&「航空自衛隊」

 2025年10月17日、ロイターなどの複数メディアは、タウルスと川崎重工業が、巡航ミサイル向けエンジン技術で協力を検討していると報じています。この報道の続報については筆者も把握していないものの、前に述べた厚いコンクリート構造物への攻撃能力や面制圧能力は、現状航空自衛隊が保有している兵装にはありませんし、タウルスと川崎重工業の協力が実現すれば、日本の航空防衛産業にとって大いにプラスになるはずです。

 また、A400Mは現在航空自衛隊が運用しているC-130H輸送機/KC-130H空中給油輸送機の後継機の有力候補の一つと目されています。

 輸送力の強化と、GCAPで開発される有人戦闘機と協働する小型のCCAの戦闘空域への投入、スタンド・オフ防衛能力の強化、航空防衛産業の強靭化――これら将来の自衛隊が解決しなければならない課題を一挙に解決するためには、UASと巡航ミサイルの投入能力を備えたA400Mと、KEPD350の導入も考えていくべきなのかもしれません。

【▶】ケツから無人機がぴゅんぴゅん出てくるA400M「空中空母」のイメージ動画を見る(当該シーンは1:12頃~)

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