NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=木下小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(=木下藤吉郎/池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの奇跡を描く物語は快調に進行中。

4月26日に放送された第16回「覚悟の比叡山」では、主君・織田信長(小栗旬)の命により、浅井配下の武将・宮部継潤(ドンペイ)の調略と浅井・朝倉方に味方する比叡山・延暦寺の焼き討ちに臨む小一郎&藤吉郎兄弟の姿が描かれた。

 さまざまな人間ドラマが繰り広げられたこの回で、特に強い印象を残したのが、「わしらはもう、百姓ではない。侍なんじゃ」という小一郎の言葉だ。

 信長から宮部継潤の調略を命じられた小一郎と藤吉郎は、農民に化けて宮部が訪れた寺に押しかけ、直接交渉する。そこで、織田に味方する条件として、宮部から身内の子を養子に出す、つまり人質として求められた2人は、子のない自分たちに代わり、姉・とも(宮澤エマ)と弥助(上川周作)の子・万丸を差し出そうとする。当然、ともの猛反発を受け、交渉は難航。だが、弥助の方は板挟みになった小一郎に理解を示し、こう告げる。

 「わしは、侍になってよかったと思うておる。このような暮らしができるのも、おぬしらのおかげじゃ。感謝しておりまする。侍なら、子を手放さねばならぬことも、覚悟の上じゃ」

 これを受け、母のなか(坂井真紀)や妹・あさひ(倉沢杏菜)もそろった場で、再びともの説得に臨んだ小一郎が口にしたのが、前述の「わしらはもう、百姓ではない。侍なんじゃ」という言葉だ。

続けて小一郎は、こう語る。

 「わしら家族は、守られる側ではなく、守る側になったのじゃ。一人でも多くの者が助かる道を選ばねばなりませぬ。人質などなくとも、みんなが笑って生きられる世を、いつか作ってみせまする。わしらはそういう侍にならねばなりませぬ」

 さらに弥助も、ともを次のように説得する。

 「わしは、侍になってこれまで何をしたということもない。じゃが、そんなわしらの子が、多くの者の命を救えるのかもしれん。わしらの万丸が、大きな役目を果たすのじゃ。誰にでもできることではない。その姿を、見守ろうではないか」

 こうして、とももようやく万丸を養子に出すことを受け入れる。木下家の全員が、自分たちが今までとは違う立場になったことを認め、覚悟を決めた瞬間だった。

 一方、信長が明智光秀(要潤)に命じた比叡山・延暦寺の焼き討ちに自ら志願した藤吉郎は、その真意を小一郎から問われ、「延暦寺には逃げ込んだだけの者がたくさんおるのじゃ。

せめてその者たちだけでも、と思うたのじゃ」と答える。だがそれは、皆殺しを命じた信長に背くことになる。それでも現場で葛藤した末、女子どもたちを逃がした藤吉郎の姿は、小一郎が語った「守る側」としての姿そのものだった。この二つを並行して描いたこの回のクライマックスは、まさに小一郎と藤吉郎が“守る側”としての侍になった瞬間だといえるだろう。

 焼き討ちの後、信長にその真意を見透かされた藤吉郎は、切腹を命じられる。だがここで、小一郎が連れてきた宮部が「こたびの叡山攻めで、木下殿に命を救われた者の中には、なじみの者が大勢おりました」と証言したことで、かろうじて信長の許しを得る。だが同時に信長は、「こたびだけだ」ともくぎを刺す。これから先、2人に険しい道が待っていることを予感させる一言だった。農民から侍に変わったことを自覚した小一郎と藤吉郎、そしてその家族たちはこれからどんな選択を重ねていくのか。「覚悟の比叡山」というサブタイトルの通り、農民から侍に身分が変わった木下家の覚悟が試された回だった。

(井上健一)

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