プロ野球2023開幕特集 
真中満インタビュー前編 セ・リーグ順位予想

3月31日、いよいよプロ野球が開幕する。昨年のセ・リーグは東京ヤクルトスワローズがリーグ連覇を果たしたが、今年のペナントレースの行方はどうなるだろう。

ヤクルトでの現役時代に計4度の日本一を経験し、監督としても2015年リーグ優勝を果たしている解説者の真中満氏にセ・リーグの順位予想をしてもらった。

中編「2023年パ・リーグ順位予想」>>

後編「ヤクルト3連覇のカギ」>>

●ヤクルトがリーグ3連覇、中日が最下位からの大躍進

ーーさて、2023年ペナントレース開幕も近づいています。真中さんの順位予想を伺います。まずはセ・リーグからお願いします。

真中満(以下、同)
 まずは、ひととおり順位を発表しますね。

1位・東京ヤクルトスワローズ 

2位・中日ドラゴンズ 

3位・読売ジャイアンツ 

4位・阪神タイガース 

5位・横浜DeNAベイスターズ 

6位・広島カープ

 これが、僕の予想です。最初に言っておきたいのは、セ・リーグの場合は例年よりもさらに、1位から6位までの力の差が少ないですよね。



 カープを最下位予想にしましたけど、Aクラス入りの可能性も十分にありますから。

【真中満のセ・リーグ順位予想】中日が「No.1の投手力」で大...の画像はこちら >>

野球解説者の真中満氏 photo by Tanaka Wataru

ーー1位はヤクルト。実現すれば、球団史上初となるリーグ3連覇達成です。

 別にヤクルトの春季キャンプで臨時コーチを務めたから言うわけじゃないけど、投打のバランスを考えるとヤクルトの戦力は充実していますよ。

 村上宗隆、山田哲人、オスナ、サンタナと並ぶ超強力打線は他球団の脅威です。

ーー毎年ヤクルトは「投手力に課題」と言われています。
そして今年は守護神のスコット・マクガフ投手が移籍しました。この点についてはいかがですか?


 確かに先発ローテーションを考えると、先発の頭数は少ないし、小川泰弘にしても、サイスニードにしても他球団のエースと比べると迫力に欠けるきらいはありますよね。

 ただ、ルーキーの吉村貢司郎がかなりいいこと、新外国人のケラ、清水昇、木澤尚文、石山泰稚など、守護神候補がたくさんいることから、何とかリーグ3連覇を達成できると信じたい(笑)。

ーー2位に挙げたのは、昨年最下位の中日ドラゴンズです。その理由を教えてください。

 何と言っても、ドラゴンズは投手力が12球団有数の陣容です。
少なくともセ・リーグではナンバーワンでしょう。

 右投手は柳裕也、髙橋宏斗、新加入の涌井秀章がいて、左投手は小笠原慎之介、大野雄大、松葉貴大がいる。

 中継ぎ陣も豊富で、抑えはライデル・マルティネスが控えている。もう何も問題ないですよ(笑)。

【真中満のセ・リーグ順位予想】中日が「No.1の投手力」で大躍進 Aクラス争いの巨人と阪神の課題と絶対条件を指摘

WBCでも活躍した中日の髙橋宏斗 photo by Kyodo News

ーーここ数年ずっと「打撃陣が課題」と言われている点についてはいかがですか?

 新加入のアキーノがどこまで活躍できるかにもよるけど、僕はけっこうやると思いますね。

 それによって、ビシエドにもいい刺激となる相乗効果が生まれそうだし、立浪和義監督が積極的なトレードを敢行したことで、チーム内に危機意識が芽生えていることもあって、ヤクルトと首位争いを演じるのはドラゴンズとしました。

●3位以下は例年以上の混戦必至

ーー3位は読売ジャイアンツ。その理由は?

 打線に関しては、ヤクルト、横浜に次ぐ陣容を誇っていると思います。WBCでも活躍した岡本和真丸佳浩を中心に、坂本勇人は手堅く結果を残しそうだし、吉川尚輝中田翔もいる。打線自体は問題ないと思います。

ーーそうなると、ヤクルト同様、投手陣が課題となりますか?

 クローザーの大勢は今年もやるでしょう。でも、先発投手陣の顔ぶれが、ヤクルト同様、ちょっと迫力に欠けるんですよね。

 侍ジャパンの戸郷翔征はいいとして、菅野智之にかつての迫力が感じられないし、その後に続く顔ぶれがやや心もとないですよね。



ーー昨年は、プロ初勝利をマークした若手投手が続出しました。潜在能力を秘めた選手はたくさんいますよね。

 山﨑伊織、赤星優志、堀田賢慎、井上温大といい人材はそろっているけど、1年間フルに活躍できるかというと、ちょっと疑問符が残ります。

 もちろん、4人も獲得した新外国人、今挙げた若手のなかからふたりくらい出てくれば、もちろん優勝争いに食い込んでくるとは思います。

ーー続いてBクラスに移ります。4位は岡田彰布新監督率いる阪神です。


 セ・リーグで言えば、阪神は中日に次いで投手陣が充実しています。

 唯一、クローザーをどうするのかという課題はあるけれど、それでも先発も中継ぎも、質量ともに豊富だから、中日同様に「投手陣が頑張りながら何とか打線の援護を待つ」という戦い方になるでしょうね。そう考えたときに、打線は中日にはちょっと劣るかな、と。

ーー打線の軸となるのは大山悠輔、佐藤輝明両選手ということになりますね。

 もちろん、大山と佐藤が軸になるのは間違いないです。ただ、この2人は好不調の波が激しすぎる。

 ヤクルトの村上、山田と比べると、それはとても顕著です。阪神がAクラスにいくには「大山と佐藤が年間を通して活躍する」というのが絶対条件。

 ここに新人の森下翔太が絡んでくれば面白いことになりますね。

●広島・新井貴浩新監督はどんな野球を演じるのか?

ーー続いて、5位は横浜です。昨年は2位に躍進。首位ヤクルトをかなり苦しめましたが、どうしてこの順位に?

 ベイスターズについては、打線は問題ないと思います。投手陣についても、今永昇太を筆頭に先発陣はそろっている。

 でも、東克樹、石田健大、大貫晋一、浜口遥大、上茶谷大河といろいろ名前は上がるし、それぞれ試合をつくることはできるんだけど、安定感に欠けるんですよね。

 大貫の故障は気がかりだし、東は去年は1勝6敗だし、石田も年間を通じてローテーションを守れるのか? いろいろ懸念材料があるんですよね。

ーー下馬評では、昨年2位のベイスターズを上位に推す声も多いですが......。

 そうなんですよね。他の解説陣はベイスターズを上位予想していると思うんですけど、そこをあえて、僕は5位予想とします。

ーーそして最下位予想は、新井貴浩新監督率いる広島東洋カープですか。

 カープに関しては、投打のバランスの取れたいいチームだと思います。

 去年の戦い方を見ていても、先発投手陣はそろっているし、打撃陣も悪くないのに、どうしてなかなか勝てないんだろうと思っていたんですけど、詳しく見ると、打撃陣は長打力不足で、投手陣は中継ぎ陣に課題があると思いますね。

 長打を期待されるマクブルームも20本塁打程度を期待できるかどうかだから、新外国人のデビッドソンがどこまでやれるか? 移籍2年目の秋山翔吾とともに、デビッドソンにも注目しています。

ーー打撃力ではヤクルト、横浜が、投手力では中日、阪神が目立っているとなると、カープは総合力で勝負するということになりますか?

 もちろん、そうなんですけど、まずは中継ぎ陣の整備ですよね。

 抑えの栗林良吏は計算できるとして、そこにつなぐための「勝利の方程式」をどう構築するか? 社会人出身の3人のルーキーから、誰かが抜け出せるか? そこがポイントですね。

ーー今季から就任した新井貴浩新監督についてはどう見ていますか?

 僕も、新井監督がどんな野球をやるのかということは注目しています。オープン戦の段階では、まだどんな野球を目指しているのかが見えてきていない。

 ただ、まだ就任1年目だし、いきなり結果を求めることなく、じっくりと腰を据えて自分の目指す野球をやってほしいと思いますね。

 でも、最初に言ったように、今年のセ・リーグは本当に混戦。故障者が続出したり、新外国人やルーキーの台頭があれば、ガラッと変わってくる。いずれにしても、今年のセ・リーグはますます面白くなりそうです。

ーー中編では、パ・リーグの順位予想を聞いていきます。

中編「2023年パ・リーグ順位予想」>>


後編「ヤクルト3連覇のカギ」>>

【プロフィール】
真中 満 まなか・みつる 
1971年、栃木県生まれ。宇都宮学園、日本大を卒業後、1992年ドラフト3位でヤクルトスワローズに入団。2001年には打率.312でリーグ優勝、日本一に貢献した。計4回の日本一を経験し、2008年に現役引退。その後、ヤクルトの一軍チーフ打撃コーチなどを経て、監督に就任。2015年にはチームをリーグ優勝に導いた。現在は、野球解説者として活躍している。