4月26日、横浜。大同生命SVリーグ女子チャンピオンシップファイナルで、SAGA久光スプリングスが大阪マーヴェラスを下し(2戦先勝方式で第1戦はセットカウント3-2、第2戦は3-0で連勝)、新たな女王に輝いた。

「私は"攻めよう"と思っていました」

 取材エリアで多くの報道陣に囲まれた久光の北窓絢音(21歳)は凛とした声で言った。

「(1戦目は途中交代を命じられるなど)いろいろ考えましたけど、最後の試合だし、"考えすぎてプレーが縮こまり、(本来の)プレーが出なくなるのが一番よくない"って。たとえミスになろうと、私は1点1点、攻めようと思いました。コーチからは『状況が悪いときはリバウンドをもらってやり直して』と言われていましたが、そんなの関係なく、全部攻めて打ちました」

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 北窓は見かけこそ柔和でふわりとしている。表情が豊かに動き、笑顔を振りまく人気アイドルのようにも映る。しかし、スパイカーとしては太い芯が通っている。スパイクを打つことは"敵を仕留める"という苛烈さや無慈悲に通じる。そこで腹を括れる選手だけがエースの称号を得られる。人懐こいスマイルの裏側にある言行一致の度胸と反骨こそ、彼女の実体ではないだろうか――。

「いえ~! (木村)沙織さんのおかげで優勝できました!」

 優勝後、北窓はテレビカメラに向かって声を張り上げていた。テレビ用にメッセージを求められたのだろう。彼女が日本女子バレーボール界のスーパースターだった木村沙織の大ファンで、憧れていたことはよく知られている。

「エースの肖像」

 その点では、実は北窓は木村と重なりつつある。

 昨年、木村にインタビューしたとき、彼女は選手時代の信条をこう振り返っていた。

「どんなときもボールを託される選手になりたかった」

 そのむき出しの欲求こそスパイカーに求められる衝動で、それは北窓にも共通していた。

 バレーボールは「ボールを落とさなければ負けない」が定理のスポーツだからこそ、謙虚さ、善良さ、強い連帯が求められる。その結果、献身や犠牲心が強くなりすぎて、枠からはみ出せなくなることもしばしばあるが、プロの世界で勝負を決めるのは一種のエゴを持った選手だ。

【ミスもあったが、引かなかった】

 北窓は木村と同じく、エースの矜持を持っている。

「負けたくはないと思っています」

 北窓は小さな顔にある口角を上げ、目を細めて言う。

「エースっていうのは、どんな難しいボールでも"私なら決めてくれる"っていうのをみんながわかっていること。実際にボールを持ってきてくれて、それを私が全部決める。簡単ではないけど、それがエースなのかなって思います。小さい頃からずっと思ってきたことなので、そこはぶれないようにしていますね」

 木村も似たような信条をこう語っていた。

「みんながつないで1本を託してくれるんだから、私は攻めるべき、って思っていましたね。

とにかく最後まで打ちきれるか。逃げずに打ちきる。リバウンドを取るんじゃなくて、しっかり決めにいく選択ができるように」

 チャンピオンシップファイナルでは、北窓もハイボールを思いきり打ち込んでいた。確かに失敗もあったが、一歩も引かなかった。結局、その姿勢を貫いたことで、活路が見えた。

 北窓はその心境をこう説明している。

「ハイボールは、みんなが必死につないでくれたボールだと思うんです。それを自分は決めたいし、その瞬間が一番気持ちいいなって。どんなハイボールでも打ちきるっていうのを、今シーズンは意識してやっていました。チャンピオンシップは負けたら終わりで、自分のちょっとした甘さがボールに伝わると思って、それは絶対にやっちゃだめだなって。後悔につながるのが嫌だから、常に強い気持ちで攻め続けました!」

 北窓は勝負どころで"らしさ"を見せている。たとえば第1戦を落とした相手に押されるファイナル2日目の1セット目の出だしで、5-5から逆転のサービスエースを決めた。

 その後、14-14と一度追いつかれたが、このときも北窓がスパイクを決めた。直前にレシーブ、アタックの失敗が続いていたにもかかわらず、彼女は下を向かなかった。

 もっとも、彼女は自身のプレーには少しも納得していない。とくにチャンピオンシップは、得点数やアタック成功率など、真のエースにはもっと高い数字が求められた。

「試合が終わったあとも、もっと鍛えていかないとなってすぐに考えていました」

 北窓はその気持ちを口にしている。

「(シーズンを振り返って)自分的には全然ダメだったなって思います。できることは増えたけど、満足しては絶対にいけない。課題がいっぱい見つかったし、エースになるのは簡単じゃないですね。でも、この経験や練習を積んだからこそ、"強い気持ちを持とう"って譲れない目標も持てるようになりました。エースとしてはダメでしたけど、やるべきことは見つかったシーズンだなって」

 彼女は自分を律するように言った。レシーブやブロックでは健闘していたし、勝負どころで輝いていたが、エースとは圧倒的な輝きを放つ存在なのだ。

「去年は代表も経験して......それまでの自分は"チームに貢献できる選手になればいい"って思っていました。

でも、(久光の監督である中田)久美さんと話して、"エースになるのは難しいからこそ、すばらしい存在だ"というのがわかって。高いレベルの目標を目指していきたいって思いました」

 北窓には進むべき道が見えている。いずれ、木村が見た風景を目にすることになるのか。そのとき、彼女は新たなエース像を披露しているはずだ。

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