SV.LEAGUE 大河正明チェアマン

インタビュー 中編

(前編:SVリーグの大河正明チェアマンが、川淵三郎の参謀を経て実感したプロ化の神髄 「ハードルが高いんだなと思っていました」>>)

 2025年3月、大河正明(67歳)は「大同生命SV.LEAGUE(以下、SVリーグ)」の"プロ化"を発表した。

SVリーグの「主役」たちへの感謝を大河正明チェアマンが語る ...の画像はこちら >>

 2024-25シーズン、新たに開幕したSVリーグは大幅な集客アップなどで売り上げも上がり、大人気を博した。

望外の成果だったと言えるだろう。そこで2026-27シーズンからは、男女とも「選手・クラブのプロ化」を実施し、過半数がプロ契約選手であることや、クラブの法人化などを規定することになった。

 高まり続ける注目を背景に、日本バレーボール界はパラダイムシフトを起こしつつある。

「当初、プロ化に対してあまりよくない印象を抱いている関係者もいました。いくつかのチームは、あまり話を聞いてもらえないこともありましたね。でも、何度か会議を重ねると、Bリーグをはじめとするほかのスポーツリーグに差をつけられてしまうという危機感を持っている方も多いことがわかってきました」

 そう語る大河は、次々に変革と手を打った。

「まずは男子から、『2026-27からクラブをプロ化にしよう』という話をしました。1チームずつ、プロ化に積極的なところから話をして、4,5カ月くらいキャッチボールをしていたら、胸の内に抱えるものはあるかもしれませんが、みなさん納得してくれました。

 それで、2025年1月の理事会で男子のプロ化が決まったんですが、女子も何チームか『同じ船に乗るべき』という話をしてくれて。そこからまた話し合いをして、男女ともプロ化ということで決議したんです」

 Jリーグ、Bリーグでプロ化の本丸で戦ってきた大河だからこそのガバナンスだ。

「各チーム、会社内では、いろんな意見がありました。だからこそ、こちらの意図を繰り返し発信していき、少しずつ理解してもらえるようにしたい。

プロ化は、マインドチェンジが大事です。今までは、コストセンターで『年間予算何億円でやってください』と受け身の立場だったところから、『自分たちでいくら稼ぐか』が問われるわけですから」

 言い換えれば、「すべて自分たち次第」となる。保証はない。しかし、創意工夫で大きな事業になるのだ。

 プロスポーツはお金が欲を生み、欲が夢につながり、夢が物語を紡ぐ。そこで主役になるのは選手だ。SVリーグには、物語の主役になれる時代の寵児がいた。それは僥倖(ぎょうこう)だった。

【SVリーグの人気をけん引した選手たち】

――SVリーグの人気が沸騰した要因のひとつとして、髙橋藍選手(サントリーサンバーズ大阪)の存在は大きかったのではないでしょうか。イタリア・セリエAから戻ってきた彼の実力はもちろん、明るく社交的で、野心も旺盛なパーソナリティは、新たに誕生したリーグに求められたものでした。

「藍選手は、本当にタイミングよく、イタリアから帰ってきてくれました。彼は『SVリーグを成功させたい』という気持ちが強く、自分の成長だけでなく、日本バレー界全体の成長を考えている。サービス精神が豊かで、ファンやメディアを大事にしていますね。

『これぞプロ』と言える選手だと思います。

 試合後にコートを一周して退場するときも、本当にひとりひとりの顔を見ながら両手を振っていますね。そうして『目が合った』と感じた人は、絶対にファンになるはず。Jリーグが始まった時、ブラジルから帰ってきたカズさん(三浦知良)のイメージに近いですかね」

――大阪ブルテオンの西田有志選手も、髙橋選手と共に初代「ATTACK THE TOP賞」(リーグの認知度向上や集客に顕著な影響力・発信力を発揮した選手に贈られる特別表彰)を受賞するなど、特別な役割を果たしています。

「個性的という意味では、西田選手が突出していますね。髙橋選手もそうですが、『自分たちは、広告塔になるのも仕事だ』と割り切ってくれている。自分だけでなく他の選手やバレーボール全体の魅力も発信してくれて、感謝しかありません」

――オポジットだけに注目しても、西田選手とは対照的に静かに闘志を燃やすタイプの宮浦健人選手(ウルフドッグス名古屋)など、さまざまなキャラクターの選手が揃ってきた感があります。

「本当に、ふたりは対極にいる選手ですね。西田選手はいい意味で"エゴ"が出せるのが魅力的。宮浦選手は協調的ですが、スパイクは圧倒的な迫力があって、盛り上げてくれています」

――彼ら以外に、リーグで注目度が高まっているという選手はいますか?

「SVリーグは開幕して2年にも満たないですし、"リーグで育った"という選手は多くないかもしれません。でも、初代の最優秀新人賞を受賞した水町泰杜選手(ウルフドッグス名古屋)は"申し子"なんじゃないでしょうか。

 正直なところ、『あの身長(181cm)ではなかなか難しいかな』と思っていました。

でも、背の高い外国籍選手もいる環境で練習、試合をやっていくなかで適応し、大きな成長を遂げていますよね。

 ビーチバレーの経験も活きているんだと思いますが、バックアタックやサーブなど、本当にすばらしい。女子選手では、やはり174cmと決して高さがあるわけではない石川真佑選手(ノヴァーラ)が、イタリアのリーグの大きな選手たちと対戦するなかで成長している姿と少しダブる感じもありますね」

【一流の外国籍選手を増やすことの狙い】

――オンザコートのルール改正では、同時出場可能な外国籍選手の人数が2名から3名に変更されますね。国際的な競争力を考慮したもので、強くなるために不可欠だと思います。

「パリ五輪の準々決勝で、男子バレー日本代表がイタリアに逆転を許し、準決勝に進めなかった試合をテレビで見ました。その時、『五輪でメダルを獲得するという宿題がSVリーグに課されたな』と思ったんです。それで『世界最高峰のリーグにする』と発信を続け、世界トップクラスの選手に集ってもらっているので、日本人選手もそこで勝負してほしいです。

 外国籍選手のレベルは、すでにイタリアやポーランドのリーグ並みです。そこでポジションを勝ち取る選手が出てこないと、オリンピックでのメダルも難しいでしょう。日本だけでなく、世界のバレーのレベルはどんどん上がっていますからね。この外国籍選手に追いつき、追い越したいと思えるようなリーグにならないといけませんね」

――男子では、昨シーズンにリーグ最下位と苦しんだヴォレアス北海道が天皇杯で準優勝と躍進しました。日本人選手たちの奮起は、外国籍選手に刺激を受けた部分も大きいでしょうね。

「外国籍選手をリーグに多く入れることで、『日本人の活躍の場を奪うのか』という否定的な意見もあることは重々承知しています。しかし、今シーズン、イタリアで石川祐希選手(ペルージャ)に会ったんですが、あらためて"ポジションを奪取する必死さが大事"と思いました。

 大学を出て、SVリーグに入ったらレギュラーが保証されている、という"温室"ではいけない。オンザコートの外国籍選手を3名にするのには、そういったメッセージが含まれています。SVリーグを世界最高峰にするのが我々の原点で、一流の外国籍選手を迎えることによって、それに近づいていくと思っています。

 対戦相手やチームメイトに、ドミトリー・ムセルスキー選手(サントリーサンバーズ大阪/2025-26シーズン限りで現役を引退)やアントワーヌ・ブリザール選手(大阪ブルテオン)のようなプレーヤーがいるのは、やっぱり価値がありますよ。昨年12月には、世界クラブ選手権で大阪ブルテオンが準優勝しました。

 SVリーグ創設時に、"2030年までに、世界クラブ選手権で常にベスト4に入ること、もしくは優勝すること"を目標のひとつにしましたが、十分にその可能性が出てきたと思っていますよ」

(後編:SVリーグが目指すは「総売り上げ500億円」 チェアマンが思い描く、海外への輸出も含めた成長プラン>>)

<プロフィール>

大河正明(おおかわ・まさあき)

1958年5月31日生まれ、京都府出身。銀行員時代にJリーグへ出向した経緯があり、退職後にJリーグへ入社。常務理事を務め、クラブライセンス制度の導入などに携わる。その後、Bリーグのチェアマンや日本バスケットボール協会の専務理事・事務総長などを務めた。2020年からびわこ成蹊スポーツ大学の副学長、学長を務め、2022年9月にVリーグの副会長に就任し、新リーグ構想に着手。

2024年7月、SVリーグチェアマンに就任した。

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