【箱根駅伝 名ランナー列伝】メクボ・ジョブ・モグス(山梨学院...の画像はこちら >>

箱根路を沸かせた韋駄天たちの足跡
連載15:メクボ・ジョブ・モグス(山梨学院大/2006~2009年)

いまや正月の風物詩とも言える国民的行事となった東京箱根間往復大学駅伝競走(通称・箱根駅伝)。往路107.5km、復路109.6kmの総距離 217.1kmを各校10人のランナーがつなぐ襷リレーは、走者の数だけさまざまなドラマを生み出す。

すでに100回を超える歴史のなか、時代を超えて生き続けるランナーたちに焦点を当てる今連載。第15回は、4年連続の2区出走で3回の区間賞と2度の区間新記録を樹立した山梨学院大のメクボ・ジョブ・モグスを紹介する。

連載・箱根駅伝名ランナー列伝リスト

【全日本大学駅伝は4年連続区間賞&3回区間新】

 これまでの箱根駅伝には、多くの留学生が登場してきた。そのなかでも沿道を熱くして、ファンに愛されたのが山梨学院大のメクボ・ジョブ・モグスだろう。2001年にケニアから来日すると、高校、大学で大活躍した。

 同学年に2008年北京五輪の男子マラソンで金メダルを獲得するサムエル・ワンジル(仙台育英高)らがいたなかで、山梨学院大附高(現・山梨学院高)3年時(2004年)のインターハイは1500mと5000mの2冠を達成。このとき、5000mで2位に入った佐藤悠基(佐久長聖高、現SGホールディングス)は13分45秒23のインターハイ日本人最高タイム(当時)をマークしている。

 大学でもモグスは、東海大に進んだ佐藤、竹澤健介(早大)ら各校の日本人エースの前に立ちはだかった。関東インカレ(1部)は1年時に1500mを制すと、2年時は1500m、5000m、10000mの3冠を達成。3年時はハーフマラソンと10000mに勝ち、4年時は1500m(3分45秒66)、10000m(27分27秒64)、ハーフマラソン(1時間02分23秒)のハイレベル3冠を成し遂げた。

 さらに強烈な印象だったのが全日本大学駅伝での快走だ。1年時は8区で区間賞、2年時は8区で56分31秒の区間賞・区間新記録。3年時(2007年)は6位と4分10秒差の13位で走り出すと、劇的な大逆転でシード権をもたらした。

このときマークした8区の区間記録55分32秒は2025年に日本人最高をマークした早大・工藤慎作(4年)のタイムより1分22秒も速く、現在も区間記録として輝いている。4年時は4区にまわり、区間賞・区間新記録だった。

 全日本は4年連続で区間賞を獲得し、区間記録を3度も塗り替えたことになる。

【2年時の悔しさを胸に翌年は区間新の爆走】

 そして箱根駅伝は4年連続で花の2区に登場。地獄も味わったが、凄まじい活躍を見せた。

 1年時は先頭と50秒差の13位で襷を受けると、横浜駅前でトップを奪い、10kmを27分37秒で通過した。「最初の10kmを飛ばしすぎました。ラスト3kmで動かなくなり、ペースを落としたことが残念です」とモグス。1時間07分29秒で区間賞を獲得したが、目標に掲げていた区間記録(1時間06分46秒)に43秒届かなかった。

 2年時は1区で佐藤悠基が独走した東海大の見えない背中を追いかけて、10kmを27分20秒という信じられないペースでぶっ飛ばした。権太坂では区間記録ペースを1分31秒も上回ったが、ラスト2kmを切ったあたりで大きく失速する。早大・竹澤健介らに抜かれて、どうにかタスキをつなげるも、その後はしばらく動けなかった。区間6位(1時間08分53秒)に終わり、チームも総合12位に沈んだ。

 3年時はトップと7秒差の7位でスタート。2.5kmで先頭に立つと、4km付近でほかの選手を引き離す。前年の反省を生かして、10kmは28分05秒で通過した。それでも権太坂は区間記録より44秒も速く、最終的には1時間06分23秒の区間新記録を打ち立てた。

「昨年はすごく悲しかった。ビデオを見て、この自分はダメだと言い聞かせて、一生懸命練習しました。区間賞、1時間06分35秒、5分台という3段階の目標があったので、90%の満足です。ラスト3kmは苦しかったですけど、前半を抑えたのがよかった。うまくペースを作れたので、区間新記録を出すことができたと思います」

 順大・三代直樹が1999年に樹立した区間記録を9年ぶりに更新。モグスの快走で波に乗った山梨学大は往路を3位で折り返し、総合でも6位に入った。

【惜しくも届かなかったが果敢に挑んだ1時間5分台】

 4年時はトップと6秒差の4位で走り出すと、2km付近で首位に立った。5kmを14分07秒、10kmを28分09秒で通過。

4年間で最も遅い入りとなったが、後半がすばらしかった。15~20kmを14分01秒まで引き上げて、自身が前年に打ち立てた区間記録を19秒塗り替える1時間06分04秒を叩き出したのだ(この記録はその後11年間未踏のままだった)。

 20人抜きを演じた区間2位のギタウ・ダニエル(日大)にちょうど1分、日本人トップの木原真佐人(中央学院大)に2分18秒という大差をつけた。2区の連続区間新は瀬古利彦(早大)以来29年ぶりの快挙で、チームも2年連続の総合6位となった。

「目標は65分台でしたが、残念ながら達成できず、少し悔しいです。10~15kmのペースが落ちて、まずいなと思って15kmから上げました。最後の坂はこれまでで一番余裕がありましたね。4年間、箱根駅伝を走ってきて、本当によかったです」

 モグスは2007年の香川丸亀ハーフマラソンで当時世界歴代10位となる59分48秒をマーク。翌年の世界ハーフマラソン選手権にはケニア代表として出場している。カーボンプレート搭載の厚底シューズがまだない時代。現在でも通用するタイムで、文字どおりの"爆走"を何度も見せて、駅伝ファンを驚かせた。

●Profile
めくぼ・じょぶ・もぐす(Mekubo Job Mogusu)/1986年12月25日生まれ、ケニア出身。

山梨学院大学附属高―山梨学院大―アイデム―日清食品グループ―サンベルクス。箱根駅伝には4年連続2区に出走し、区間賞3度、区間新記録樹立2度と圧倒的な強さを誇った。また全日本大学駅伝では8区3回、4区1回とすべて区間賞(うち区間新記録3回)、1度のみ出走した出雲駅伝(2年時)でも6区を区間新記録で区間賞と、出走した9回の三大駅伝で8回の区間賞(うち6回区間新記録)と圧倒的な強さを誇った。

【箱根駅伝成績】
2006年(1年)2区1位・1時間07分29秒
2007年(2年)2区6位・1時間08分53秒
2008年(3年)2区1位・1時間06分23秒 *区間新
2009年(4年)2区1位・1時間06分04秒 *区間新

*区間新は当時

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