能力(&実績)か、距離適性か――。

 ほとんどの出走馬にとって未知の距離となる芝2400mを走るGⅠオークス(東京)では、例年この"テーマ"が最大のポイントになる。

そして今年のレース(5月24日)では、その点において、これまで以上の注目が集まりそうだ。

 というのも、GⅠ阪神ジュベナイルフィリーズ(12月14日/阪神・芝1600m)に続いて、クラシック初戦のGⅠ桜花賞(4月12日/阪神・芝1600m)も強い競馬で制覇。オークスでも1番人気が予想されるスターアニス(牝3歳)が、過去に距離適性を指摘された本命馬以上に、距離延長への懸念を持たれているからだ。

 今年のオークスの行方を占ううえでは、何よりもまず、このスターアニスの距離不安をどう見るか。そこにかかっている。

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 そこまで不安視される第一の理由は、同馬の血統にある。

 父ドレフォンはアメリカでGⅠ3勝を挙げた実力馬だが、そのすべては1400m以下の短距離戦。母エピセアロームも重賞2勝の実績を誇るが、いずれも1200mのスプリント戦だった。

 そうした血統背景から、短い距離には適性があっても、さすがに2400mの距離で結果を出すのは難しいだろう――そう見られてしまうのは、至極当然のことである。

 ただそうであっても、オークスが行なわれる3歳春の時点までは、そこまで厳密に距離適性が問われないのが、これまでの通例だ。

 実際に過去を振り返ってみれば、その血筋から短い距離でこそ強さを発揮しそうな馬であっても桜花賞で結果を残せば、おおよそオークスへ駒を進める。しかも、2400m戦での走りを疑問視されながらも戴冠を遂げた馬は少なくない。

 たとえば、三冠牝馬となったアパパネ(2010年)やジェンティルドンナ(2012年)がそうだ。ともに母の主戦場が短距離戦だったため、オークスの前には距離不安が囁かれていた。

 だが、2頭ともオークスを勝った。こうした例は、「この時期の3歳牝馬は距離適性よりも、その馬自身のポテンシャルがモノを言う」といった古くからある定説のとおりだ。

 だからといって、スターアニスの距離適性への不安は完全には拭えない。それこそ、第二の理由があるからだ。

 それは、競走馬としての使い出しが関係している。同馬の初陣は、昨年6月末の小倉・芝1200mだった。だが、過去10年のオークス馬を見れば、芝1200mがデビュー戦だった馬は皆無だ。加えて言えば、小倉デビューという馬もいない。先述したアパパネやジェンティルドンナにしても、デビュー戦は前者が福島・芝1800m、後者が京都・芝1600mだった。

 素質を秘めた期待馬であれば、デビュー戦はそれ相応の舞台を整えるものだ。

まして、牝馬クラシックを意識していれば、1200mという距離から使い出すことはあまり考えられない。

 言うなればそこから、デビュー前のスターアニスに対する陣営の期待は、そこまで高くなかったことがうかがい知れる。しかも、その初陣で同馬は5着に敗れている。そうした過去の戦績も重なって、オークスに向かう同馬への信頼は薄れていく一方なのだろう。

 しかしながら、スターアニスはそのデビュー戦の直後に転機を迎えている。2戦目の未勝利戦、新馬戦と同じ小倉・芝1200mで後続に7馬身差をつける圧勝劇を演じたのだ。

 さらに、このとき負かした馬のなかに、のちに重賞2勝を挙げてGⅠNHKマイルC(5月10日/東京・芝1600m)でも5着と健闘したダイヤモンドノットがいた。関西の競馬専門紙の記者によれば、その結果を受けて、陣営に「ひょっとしたら桜花賞も(いけるかも)」という意識が芽生えたらしい。

「スターアニスの2戦目は、とにかく衝撃的でした。おかげで、その血統から短距離路線での活躍を期待していた陣営も、『待てよ』となったと聞いています。要するにあの2戦目が、スターアニスのクラシックへの道を切り拓いたと言えると思います」

 そもそもスターアニスには、マイル戦の桜花賞の時点でさえ距離不安がつきまとっていた。1200m戦でデビューしたことから、クラシックで勝つほどの馬なのか、という"器"論議も起きたほどだ。

 だが、桜花賞ではそうした雑音を一掃。圧巻の競馬で頂点に立った。2着につけた2馬身半差は、過去10年の桜花賞では2019年のグランアレグリアに並ぶ最大着差だった。

 このポテンシャルは、同世代の牝馬のなかでは間違いなく突出している。それを持ってすれば、過去に距離不安を抱えながら戴冠を遂げた馬たちと同じく、オークスでも結果を出してもおかしくないが、はたして......。

 先の専門紙記者は「決して簡単ではない」と言う。

「桜花賞でも前半はクビを振って、行きたがるところを見せていました。それでも、あれぐらいは想定内だったはずで、マイル戦ではそこまで結果に影響することはありませんでした。

 ですが、今度はそこから800mも距離が延びるオークス。再びああいったことが起これば、今度は命取りになるかもしれません。レース前半でいかに折り合って、スムーズに運べるか。スターアニスが勝てるかどうかは、そこにかかっていると思います」

 そうして、専門紙記者はそのスターアニスを脅かす存在の名前も挙げた。

桜花賞とは別路線組のエンネ(牝3歳)だ。オークスに向けては、GⅡフローラS(4月26日/東京・芝2000m)の勝ち馬ラフターラインズ(牝3歳)の評判が急上昇中だが、「穴馬的に面白いのは、むしろ同レース2着のこちら」と言ってこう続ける。

「(フローラSでは)勝ったラフターラインズに1馬身4分の1差をつけられましたが、エンネはキャリア2戦目。そこからの上積みを考えれば、馬券的な妙味からしても最も楽しみなのはこの馬だと思っています」

 3歳牝馬にとって過酷な戦いとなる2400m戦のオークス。女王スターアニスはその死闘を制することができるのか。それとも、距離不安に泣かされてしまうのか、必見である。

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