DeNAを戦力外となった藤浪晋太郎。来季以降も現役続行を目指す動向に注目が集まっているが、獲得に動く球団はあるのか。

そして、課題の制球難を克服することはできるのか。現役時代に最多勝や最優秀救援投手賞などのタイトルを獲得し、第1回WBCでは投手コーチを務めた武田一浩氏に聞いた。

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【日本ではちょっと厳しい】

――近年の藤浪投手のピッチングをどう見ていますか?

武田一浩(以下:武田) ストライクが入らないので、ピッチングになっていませんよね。「ストライクが入れば通用するんじゃないか」という見方もあるようですが、もう何年も制球難を解消できていません。

 厳しい言い方になりますが、ストライクが入らなければピッチャーとしては難しい。今年投げる姿も見ましたが、あそこまで治らないとなると、精神的な部分が大きいんじゃないですか。「投げてもストライクが入らない」という考えが強すぎて、制球が定まっていないような感じがします。

――精神面の課題がピッチングに出てしまっている?

武田 そうですね。メジャーでは打者がボール球を振ってくれたりしますが、日本のバッターはボール球を振りません。正直、日本ではちょっと厳しいんじゃないかと。

 あと、球速は出ますが球質がいいとは言えません。なんというか、投げること自体が苦しくなっているように見えるんです。楽しそうではないですし、ああなってしまうと復活するのは簡単ではない気がします。

 大阪桐蔭高時代に甲子園で優勝していて、華のあるピッチャーなので多くの人が期待するのはわかるのですが、来年で33歳という年齢の面も含め、そろそろ苦しい時期に差しかかっていると思います。

――フォームの課題を挙げるとしたら?

武田 制球を乱しやすい投げ方です。顔が前に突っ込んでしまって腕の振りが遅れるので、すっぽ抜けやすくなる。もう何年も前ですが、大瀬良大地(広島)にデッドボールを当ててしまったくらいですから。さすがにピッチャーに当ててしまうって、かなりのものですよ。私自身がコントロールに困ったことがないから、そういう見方をしてしまうのかもしれませんが。

【フォーム面での改善策】

――武田さんなら、制球難を克服するためにどんなアドバイスをしますか?

武田 一度、「目を切る」のはいいと思います。人間は見ている方向に体が引っ張られる習性があります。キャッチャーを見続けていると、体が早く目標に向かおうとして顔が前に突っ込み、腕が遅れて出てきてしまう。それでボールがすっぽ抜けてしまうんです。

 そこで私ならば、足を上げた時やテイクバックの始動時などに、一瞬下を向いたり、あえてキャッチャーから目を切ることで、体にブレーキをかけて顔が突っ込まないようにさせます。顔が突っ込まなければ上半身の開きをギリギリまで抑えられますし、体と腕が同時に前に出ていきます。ただ、これまでに制球難を克服するためにいろいろなことをやってきたはずですから、今言ったようなこともすでに試していると思いますけどね。

――実際にその手法で制球難を克服したケースはありますか?

武田 藤浪と投げ方は違いますが、斉藤和巳(現ソフトバンク二軍監督)はルーキーの頃にストライクが入らなかったのが、目を切るようになってからストライクが入るようになりました。ダイエーでチームメイトだった時に「どうすればストライクが入りますか?」と聞かれたので、「一度目を切ったら顔が突っ込まないようになるから、腕が遅れないよ」という話をしたんです。

 そこから彼は努力してのし上がっていきました。ただ、そういう努力をするにも、いい努力をしないといけない。ピントがズレていたら全然ダメですから。

―― 一度目を切ることで、間も作れる?

武田 それもありますね。マウンドには傾斜があるので顔が突っ込んでしまうものですが、一度目を切ることでそれを予防すると、投げるまでの間ができる。そうなると、「体全体の動き(フォーム)で投げよう」という意識が持てます。逆に顔が突っ込んで腕が遅れてくると、手先でコントロールしようとしてしまう。ただ、先ほどお話ししたように、藤浪の場合は精神的な部分が大きいと思いますけどね。

【高校時代から気になっていたこと】

――在籍していたDeNAでは、アナリストを中心とした動作解析チームが藤浪投手の制球改善に取り組んでいました。その効果もあり、一時的に安定していたように見受けられましたが、そのあとに再び制球難に陥ってしまったような印象があります。

武田 ストライクが入る試合では制球が安定してフォアボールもあまり出さない。改善傾向にあるのかなと思えば、次の試合で急に乱れてフォアボールを連発してしまう。精神面に要因があると思うのは、そういうところも関係しています。

 あと、球が速いといっても、今は若いピッチャーもみんな球が速いじゃないですか。150キロ中盤の真っすぐを投げるピッチャーなんかゴロゴロいますし、阪神の木下里都や工藤泰成、西武の平良海馬ら160キロを投げるピッチャーも何人か出てきています。

 これだけ球が速いピッチャーがいる環境だと、速さに加えてコントロールの安定性も求められるようになります。ストライクゾーンできっちり勝負できるかが評価のポイントになると思うんです。ストライクが入るか入らないかわからないピッチャーの立場は、どうしても厳しくなります。

――精神面で難しくなった、きっかけになった出来事などは思い当たるでしょうか?

武田 どこかでそうなってしまったんでしょうね......。きっかけはあると思いますが、具体的にはわかりません。

 ただ、藤浪が高校時代から少し気になっていたことがあるんです。当時、けっこうインステップして投げていましたよね。

プロに入ってからも何年かはインステップを続けていましたし、ストライクが入る・入らない云々より、「このまま投げ続けたら壊れるんじゃないか」と思っていたんです。

 3年目までは結果を出していて、4年目くらいに不振に陥ったことを機にスクエアステップに変えていましたが、そのあたりから怪しくなってきましたよね。プロ入り当初からフォアボールが多いピッチャーでしたが、それでも最終的には抑えていたものが、どこかで狂ってしまった。もしかすると、ステップを変えたことが影響してしまったのか。結局のところ、本人にしかわからないことではあるのですが。

――現役を続けることになった場合、藤浪投手にはどんな姿を見せてほしいですか?

武田 周りから何を言われても、結局は本人がマウンドで結果を出すしかありません。どこかが声をかけてくれて現役を続けられるのであれば、何かきっかけをつかんでほしいですね。今の状態から復活するのはかなり難しいと思いますが、期待しているファンも多いでしょうし、藤浪らしいピッチングを見せてくれればと思います。

【プロフィール】

武田一浩(たけだ・かずひろ)

1965年6月22日、東京都生まれ。明大中野高を経て明治大に進み、六大学通算20勝8敗という成績で、1987年にドラフト1位で日本ハムに入団。1991年に18セーブを挙げて最優秀救援投手に輝く。その後、先発に転向して1993年には10勝をマーク。

1995年オフにトレードでダイエーに移籍。1998年に13勝で最多勝のタイトルを獲得した。同オフにFA宣言をして中日に移籍し、1999年のリーグ優勝に貢献。2002年には巨人に移り、史上3人目となる全球団からの勝利を達成した。同年限りで現役を引退。2006年の第1回WBCで投手コーチを務めた。そのほか、プロ野球、メジャーリーグ中継で解説を務めるなど幅広く活躍している。現役時代の通算成績は341試合、89勝99敗31セーブ、1008奪三振、防御率3.92。

浜田哲男●取材・文 text by Tetsuo Hamada

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