カンバン方式の弱点がコロナ禍で浮き彫りになった

ここのところニュースを見ていると、世界中の自動車工場で半導体が入ってこなくなって、生産が止まっているというのをよく見かける。海外のほうがダメージは大きいので、日本は関係ないと思いがちだが、日産スバルの国内工場では減産や一時操業停止になっている。



具体的な原因はじつはとてもシンプルなのだが、根本にある問題が、サプライチェーンで、日本語にすると供給連鎖となる。

自動車は約3万点のパーツからできていると言われるが、もちろんすべて自動車メーカーが作っているわけではない。逆にほとんどのパーツは外注で、アッセンブリーメーカーとして組み立てるだけというのが現在の自動車メーカーであり、工場だ。パーツメーカーにもその下に外注があったりと、網の目のように複雑に、しかも国を越えてつながっている。それがサプライチェーンで、うまく回っていればそれでいいが、一旦なにかが起きてチェーンが分断されるとすぐに生産に影響が出てしまう。



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さらに自動車の部品調達では、トヨタが考え出したカンバン方式を、ジャストインタイム方式といい、世界中のメーカーが採用している。カンバン方式とは、減ったぶんだけをパーツメーカーに納品するというもので、要は無駄な在庫をもたないのが特徴。さらに部品メーカーも下請けに対してカンバン方式を採用していることも多く、ここでも複雑につながっている。つまり在庫がないということは、供給が止まれば、即操業停止になってしまうわけだ。



何が起こった? クルマの納期遅れを発生させた「半導体不足」とは



これらの問題を前提として見ていくと、今回の騒動の原因を知るにはなぜサプライチェーンが切れてしまったかが重要となる。また半導体だけがなぜ供給不足になったかもカギだ。ちなみに、最近のクルマはコンパクトカーでも30個以上は各部にコンピュータが付いていて、大量に必要なのは確かだ。それでは原因を整理して紹介しよう。



1) コロナでの減産を見誤り

これが一番大きくて、コロナで需要がかなり落ちると予測して半導体メーカー自体が減産。すると、自動車の需要回復が予想以上に早かったのと、リモート用にパソコンの需要が増えてしまった。在庫がないので急に需要が増えてもすぐには納品できない。これはカンバン方式の弱点となる。



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異常気象や大量生産しにくいことも供給不足に拍車をかけた

2) 自動車用は作るのが手間

飛行機もそうだが、自動車は命を預かるもの。安かろう悪かろうではダメで、精度や不具合の有無などの確認もあったりと、手間がかかる。つまりすぐに大量生産ができないということになる。



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3) 米中対立

アメリカが中国の半導体メーカーに制裁をかけたことで品不足となりつつ、そのぶん、台湾のメーカーに注文が集中。もちろん集中しても、すぐに大量生産できるわけではない。また、台湾のメーカーも既存の顧客分(ゲーム機やスマホなど)があるので、そちらを優先するのは当然のこと。ちなみに自動車用は買い叩かれて儲からないので、気分的にも後回しになっているという説もある。



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4)アメリカの異常気象

操業を停止した工場を見ると、アメリカが多いことがわかる。テキサスやテネシー、ミシシッピなどの南部や中西部を2月に大寒波が襲った。季節外れ以前に、そもそも寒波に見舞われること自体が異常なエリアで、たとえばテキサスはもともと気温がマイナスには滅多にならないが、今回はマイナス10度ぐらいまで下がったというし、全米の約7割の場所で雪が降ったという報道もあった。

ちなみに気象衛星が雪を雲と勘違いして誤作動したというほど。



何が起こった? クルマの納期遅れを発生させた「半導体不足」とは



これによって死者が出ているし、停電なども多発して工場も操業不能に。該当のエリアは日本メーカーも多く工場を構えているため、打撃を受けてしまった。さらに悪いことにサムソンなどの半導体工場があって、こちらも操業を一時停止したため、すでに見た半導体不足に追い打ちをかけてしまった。自動車メーカーとしてはダブルパンチだ。



以上、原因はシンプルにこれだけ。しばらくすると、増産体制もできて解消されるとされているが、自動車メーカーもそのうち増えてくるでは困ってしまう。半導体価格は車体価格高騰の要因にもなっているので、今後、争奪合戦の影響でさらに高くなる可能性もある。いずれにしても、コロナや異常気象などの外的要因に、意外にもろいことを露呈してしまったと言っていい。



この原稿を執筆完了した時点で飛び込んできたのが国内の半導体大手、ルネサスの茨城県にある主力工場で、火災が発生(2021年3月19日)。自動車向けの半導体を生産していて、半導体不足に拍車をかけることになっている。生産再開には1カ月程度かかるとのことで、影響はかなり大きいのは確かだ。

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