子どもの医療費を無料にする自治体が全国に広がっている。
それにもかかわらず、学校健診で「受診が必要」と指摘された児童・生徒のうち、歯科で66.8%、視力検査で66.4%、内科でも59.6%など、約5割~6割超が医療機関を受診していないことが、全国保険医団体連合会(保団連)の調査で明らかになった。

「窓口負担ゼロでも治療率が上がらない」現場の嘆き

保団連が4月16日「2025年学校健診後治療調査」の結果を公表。都内で会見を開いた。
調査は全国31都道府県の小・中・高校など2万4569校を対象に2025年9月から10月にかけて実施し、4785校から回答を得たもの。
未受診率は歯科66.8%(前回62.3%)、眼科57.4%(前回55.4%)、視力検査66.4%(前回58.3%)、聴力検査49.6%(前回41.2%)、内科59.6%(前回53.6%)と、耳鼻科検診(57.2%、前回調査は57.4%)を除く全科目で前回調査(2022年)を上回った。
養護教諭が挙げた未受診の要因は、「保護者の健康への理解不足」が60.5%で最多。「共働き」39.4%、「ひとり親家庭」33.3%、「保護者が児童・生徒に無関心」33.2%と続く。経済的困難は20.1%にとどまり、「お金の問題」よりも「意識の問題」が主因であることを示している。
現場からは次のような切実な声が上がった。
「こども医療費助成制度で窓口負担0円になっても治療率が上がっていないのが現状です。本校での、受診しない理由のほとんどは『連れていく時間がない』です」(鹿児島県・小学校)
「子ども医療制度ができてから金銭的な理由での未受診は激減しました。しかし以前より何度受診勧告しても受診されない家庭が一定数あります」(大阪府・小学校)
医療費無料化が広がってもなお未受診率が悪化している点について、保団連の細部千晴(ほそべ・ちはる)理事は「経済的な問題ももちろん存在しているが、それ以上に親の理解・関心などが問題として大きく残っている。子どもへの『健康教育』の実施も重要だ」と指摘した。
また、森元主税(もりもと・ちから)副会長は「親御さんに『乳歯だから永久歯に生え変わるから大丈夫』と言われることがある。
しかし虫歯菌や歯肉炎の菌が口の中に充満していれば、新しく生えてきた永久歯もすぐに虫歯になる」と説明。
そのうえで「歯が1本なくなったら、それは欠損。体の他の組織でいえば障害だ。そこの認識が足りていないのではないか」(森元副会長)と訴えた。

「子どもが希望も…保護者が拒否」

個別の記述では、子ども自身が困っているにもかかわらず、「保護者が動かない」というさらに深刻なケースが繰り返し報告されている。
「聴力検査、受診勧告書を3年間出していても保護者の理解が得られずに未受診のままです」(北海道・小学校)
「アトピー性皮膚炎で毎年受診勧告するが、親の意向で受診しない。本人は出血するほど、かきむしり、保健室にも『かゆい、痛い』と泣いて来室する」(京都府・小学校)
「やせが進行しており発育勧奨(保護者面談)を実施したが、受診拒否」(京都府・中学校)
「本人は眼鏡を希望しているものの、保護者がそれを拒んでおり、授業を受けたくないと言っている生徒がいる」(鹿児島県・中学校)

「親子でスマホ依存、子どもだけを指導するのは限界」

今回の調査ではスマホ・ネット依存に関する設問が設けられ、46.2%の学校が「依存が疑われる児童・生徒がいる」と回答した。「いない」は21.0%にとどまり、「把握していない」が29.5%。把握していない学校や無回答を除くと、「いる」と「いない」の比率は69:31にのぼる。
なかには「ゲームやスマートフォンを取り上げられると暴れる、包丁を持ち出す」(山形県・小学校)、「SNSで自身の性的動画が流出し、学校内でも広がり、教室に入りづらくなる」(北海道・私立高校)など、事件につながりかねない事例も報告されており、入院に至った事例は16件にのぼる。
また、スマホやネットへの依存が親子で"連鎖している"との意見も見受けられた。
「スマホから離れられない、依存している生徒は多い。親も同様なので、子どもだけを指導するのは限界がある」(新潟県・公立高校)
「ネット依存で昼夜逆転の生活をしており不登校になった。保護者もネット依存で、協力が得られにくい」(鹿児島県・小学校)

「学校や家庭任せにせず、国が取り組むべき課題」

保団連は今回の調査結果から、国の制度として18歳までの医療費を無料とすることや、小学生以下の子どもが受診する際に保護者が有給の看護休暇を取得できるようにすること、眼鏡・補聴器購入への補助制度の拡充などを提言として発表。

「学校から受診を促すだけでなく、学校や家庭任せにせず、社会全体、国が取り組むべき課題である」と訴えた。


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