筆者自身も過去、ストーカー被害にあい、母子でシェルターに入所した経験があります。「今日の夜を過ごす場所がない」という底知れない恐怖は、今も肌身に焼き付いています。
日本では、生活の糧や住む場所を失った人のために「生活保護」という法制度が確立されています。しかし、ようやく辿り着いた行政窓口で、生活保護を申請しようとしても、「たらい回し」にあい、目の前にあるはずの命綱を掴めずに絶望する人も少なくありません。
なぜ、こうしたことが起きるのか。本記事では、住まいを失った人が直面する現行制度の問題と、それを乗り越えるための法制度に基づいた「自分を守るための手段」を具体的にお伝えします。(行政書士・三木ひとみ)
「家がないと生活保護は受けられません」と言われ
私は最近、夫のDVから逃れた女性が、未就学児の子を連れてシェルターを頼ろうとしたにもかかわらず、どこからも受け入れてもらえず、路頭に迷う事態を目の当たりにしました。その理由は、彼女自身が持病を抱えていることや、夫に居場所を突きとめられて訪問され、他の入居者に危害が及ぶ可能性があることなどでした。
加害者がのうのうと生活している裏で、被害者があまりに多くの理不尽を強いられる。これは、いじめ問題において、いじめた側ではなく被害者が疎外される構図と重なります。
生活保護等の支援を必要とする人がいる場面では、役所の垣根を超えた連携が求められます。しかし福祉事務所の窓口では、今なお、「水際作戦」と呼ばれる違法な申請拒否・妨害が、より表面化しにくい手法で存在します。窓口によっては不当な対応をされてしまう「行政窓口ガチャ」ともいえる実態があるのです。
住まいを持たない人に対し「家がないと生活保護は受けられません」
一見して働けそうだというだけで「仕事を探してから来てください」
これらは、事実と異なる説明で申請者を追い返す典型的な手口ですが、明確な法律違反です。
なぜなら、生活保護法19条1項2号は、居住地がない人に対しては、その「現在地」の福祉事務所が保護を決定し実施しなければならないと定めているからです。したがって、ネットカフェにいても、路上にいても、「今いる場所」の役所に責任があるのです。これを「現在地保護」の原則といいます。
また、厚生労働省は全国の自治体に対し、「ホームレスに対する生活保護の適用に当たっては、居住地がないことや稼働能力があることのみをもって保護の要件に欠けるものではないことに留意」するよう求めています。
「家がないから」「働けそうだから」という理由だけで保護を拒否することは許されないのです。
できる限り、家を失う「前」に生活保護を申請する
たとえば、退職に伴って寮や社宅を退去する場合など、行く場所も仕事もお金もあてがないにもかかわらず、真面目さから、言われるがまま退去し、ホームレス状態に陥ってしまう人が少なくありません。今かろうじて寝泊まりできる場所があるなら、それを失う前に、一刻も早く生活保護を申請することをおすすめします。
なぜなら、居宅がある状態で生活保護を申請するのと、ホームレス状態になってから申請するのとでは、その後の役所の対応と再出発へのハードルが天と地ほど変わるからです。
住まいがあるうちに申請すれば、役所は生活保護法30条1項の「居宅保護の原則」に基づき、申請者が野宿に陥るのを防ぐため、早期に保護を決定し、新たなアパートへ移るための転居費用(敷金や引越代)を支給しなければなりません。
しかし、ホームレス状態になってから窓口に行くと、多くの場合、無料低額宿泊所などの施設を案内されます。一度施設に入ってしまうと、「とりあえず雨露をしのぐ場所は確保された」とみなされ、アパートへの転居費用を出してもらえないことがあります。
「アパートへの移行には順番がある」「先に施設に入った人がまだ引越費用を支給されていないのだから待ちなさい」「まだ単独で生活する準備ができていない」などと言い訳をされ、劣悪な環境から抜け出せなくなるのです。
この貧困のループを断ち切るためにも、逃げ出す前に、今いる場所を拠点として一刻も早く保護申請を行うこと。それが、公費で安全な住まいを確保し、確実な生活再建を図るための最大の鉄則です。
収容施設への入所は強制ではない
なお、住まいを失い行政に助けを求める場合に、収容施設への入所を強制されることはありません。生活保護法30条は、1項で「生活扶助は、被保護者の居宅において行うものとする」という「居宅保護の原則」を定めており、2項で本人の意思に反して施設等への入所を強制することを禁じています。
これは、「まずは無条件に安定した住まいを提供し、必要な支援はその後に行う」との考え方に基づくものです。「ハウジングファースト」といって、日本だけでなく、生活困窮者支援における世界的な潮流です。
「住まいを失った身だから、施設に収容されることも仕方ない」と遠慮する必要は一切ありません。「私には公費で安全な居宅を確保して再出発する権利がある」と強く認識し、法律に基づいて堂々と行政に居宅での支援を求めてください。
公費による「引越費用・敷金」の支給制度を正当に行使する
住まいを失う危機に瀕したとき、初期費用がかからない「ゼロゼロ物件」に駆け込む人がいますが、割高な家賃や厳しい違約金が設定されていることもあり、かえって生活再建の負担となるケースが見受けられます。不安の残る住環境で我慢する必要はありません。生活保護制度には、新たなアパートを借りるための「敷金等」や引越代である「移送費」を、公費で支給する確固たる仕組みが存在します。
厚生労働省の「生活保護手帳 別冊問答集(問7-30)」には、「退職等により社宅等から転居する場合」や「家主が相当の理由をもって立退きを要求し(中略)やむを得ず転居する場合」などが、敷金等の支給対象として明確に列挙されています。
また、よくある誤解ですが、たとえ「月20万円」などの高額な家賃の物件に住んでいても、「家賃の低い物件に引っ越すための費用を自力で工面しないと生活保護を受けられない」ということはありません。国の定める上限額内の住居へ転居する場合、その費用は当然に公費支給の対象となるのです。
ところが、福祉事務所で、こうした情報を積極的に教えてもらえるとは限りません。一部では、当事者が制度を知らないのをいいことに、「こんな高い賃料のマンションにいるのに、まず引っ越してからでないと申請は無理ですよ」「引越費用は自力でなんとかしてください」と、困って相談に来ている人をさらに追いつめるような不親切な対応が、横行しています。
保護対象者に対し、数十万円にも上る転居費用を公費で一括支出することは、自治体にとって大きな財政負担となるからでしょうか。
しかし、国が定めたルールがある以上、「自治体の予算負担になるから使わせない」という理屈は許されません。この制度を「生活を立て直すための正当な権利」として確実に行使し、安心してリスタートを切れる住環境を確保すべきなのです。
どれほど「良い担当者」であっても、こちらから制度を把握して積極的に要望しない限り、役所側からすべてを教えてくれることはまずありません。役所側からすれば「言われないとわからない」のかもしれませんが、「制度がわからないから何も言えない」人が多いのです。
絶望の淵にいる人が、役所と巧みな交渉をしなければ救われないのだとしたら、あまりに酷な話です。
それでも家を失ってしまったときの「選択肢」
上述したように、生活保護の申請は、寝泊まりできる場所があるうちに行うのがベストです。しかし、一時的に友人・知人の家に身を寄せ、そこを居所として生活保護を申請し、保護決定後に公費でアパートへ移るという方法もあります。
また、もし、頼れる友人・知人もなく、完全に住居を喪失した場合であっても、あきらめてはなりません。迷わず近くの役所へ行って助けを求めてください。
もとよりその場合、上述したように、窓口で不当な対応を受けるかもしれません。
【「住所がないと申請できない」に対する反論】
「まずは住所を定めてから来なさい」と追い返されそうになっても、引き下がらないでください。前述の通り、生活保護法19条1項2号の「現在地保護の原則」により、今いる場所の役所に保護を実施する責任があります。
住所不定を理由とした申請拒否は明白な法律違反です。
【「若くて健康だから働けるでしょう」という理由での門前払いには】
「健康である(働く能力がある)」ことと、「今すぐ実際に就労できる環境にある」ことは全く別の問題です。過去の裁判例では、実際に就労する場がなければ保護を却下してはならないとされています(名古屋地裁平成8年(1996年)10月30日判決(林訴訟判決))。
住まいや連絡先を失い、面接に行く所持金もない人に「ただ働け」と突き放すことは、判例上も許されない行為なのです。
【「今日は相談ということで」申請書を渡さない対応には「口頭申請」で】
様々な理由をつけて申請書を渡さず、保護を断念させようとされたときは、「生活保護の口頭申請をします」と伝えてください。
過去の裁判例(小倉北自殺事件判決(福岡地裁小倉支部平成23年(2011年)3月29日判決)、三郷事件判決(さいたま地裁平成25年(2013年)2月20日判決))では、相談者が口頭で申請の意思を示した場合、行政がそれを拒否することは「申請権の侵害」であると明確に認定されています。「本日は相談ではなく、生活保護の申請に来ました。今、口頭で申請します」と明確に伝えることで、行政側は法的な審査・応答義務を負わざるを得なくなるのです。
「生きてきてよかった」と言える未来へ
日本人は、勤勉です。理不尽な犯罪被害で一文無しになりながらも、生活保護を受給し、恐怖から解放され再出発することができた母親がいます。彼女は生の声を聞かせてくれました。
「子どものオムツ替えを躊躇しなくていい、具合が悪ければ病院に行ける。この制度がなければ、私たちはどうなっていたか分かりません」
「今の私の目標は、子ども達と、あのときは大変だったけど、生きるための選択は間違ってなかったと言える未来を叶えることです」
行政窓口のすべてが冷たいわけではありません。しかし、「ハズレ」の対応をされたときに自分たちを守る理論武装が必要という「出会う支援者の運次第」という現実があることもまた事実です。
住まいを失うかもしれない、あるいはすでに失ってしまったという方は、決して一人で抱え込まず、ためらわずに公的支援へ繋がってください。正しい知識という武器を手に、権利を行使することで自ら「生きてきてよかった」と思える未来を手繰り寄せることができます。どうかあきらめずに、生きてください。
■三木ひとみ
行政書士(行政書士法人ひとみ綜合法務事務所)、社会保険労務士(ひとみ社労士事務所)。官公庁に提出した書類に係る許認可等に関する不服申立ての手続について代理権を持つ「特定行政書士」として、これまでに全国で1万件を超える生活保護申請サポートを行う。

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