中東情勢の緊迫化に伴う原油価格高騰の影響で、原油由来の製品を含む医療資材等の流通・供給に懸念が広がる中、政府が決定した備蓄医療用手袋5000万枚の放出について、全国保険医団体連合会(保団連)は5月14日、高市早苗首相と上野賢一郎厚労相あての要望書を提出。
放出する医療用手袋が小規模・零細の医療機関にも行き渡るよう「きめ細かい対応」を求めた。

国の備蓄“約4億9000万枚”のうち、まず5000万枚を放出

厚生労働省が5月8日時点でまとめた資料によると、石油関連製品の供給不足に関する相談は延べ8244事業者(メーカー・卸業者1527、医療機関6717)に達している。安定供給に影響があると判断された品目は73で、うち30品目が解決済みとされている。
医療用手袋について、厚労省は「主要販売メーカーは通常と同程度の1~2か月の在庫を持っている」とした上で、「一部では通常量を大幅に超える発注も見られ、結果として歯科診療所など一部の医療機関では確保が困難となっている」と分析。
全国の一般診療所および歯科診療所の月間需要は約9000万枚と推計されており、まず5000万枚を放出し、供給状況に応じて追加放出も行うとしている。
放出される医療用手袋は、国が新型インフルエンザ等対策特別措置法10条に基づき、パンデミックの発生に備えて備蓄しているもので、内閣感染症危機管理統括庁が4月27日の新型インフルエンザ等対策推進会議(第22回)で示した資料によれば、備蓄水準に対する「余剰分」は約4億9000万枚に上るとされる。
非滅菌手袋の使用推奨期限は5年で、例年は期限が近づいたものを夏から年度末にかけて備蓄から外して処分する運用となっているが、中東情勢を受けて今年度は処分の一部を前倒しで実施する形をとった。
4月16日の「中東情勢に関する関係閣僚会議(第4回)」で、上野厚労相は「歯科診療所など、一部の医療機関において確保が困難になっているとの相談が寄せられています」と報告。高市首相も国民に向けて「タイムリーに放出していきますのでどうか皆様ご安心ください」と述べた。

「医療用手袋の要請ができないことが生じ得る」

医療機関が放出される医療用手袋を受け取るには、「G-MIS」(医療機関等情報支援システム)を通じて国に必要量を要請する仕組みとなっている。
G-MISとは、新型コロナウイルス感染症対策として厚生労働省が構築したシステムで、全国の医療機関等の病床、医療スタッフ、受診者数、検査数、医療機器や医療資材(マスクや防護服等)の確保状況等を一元的に把握・支援するためのもの。現在は医療法等に基づく医療機能情報提供制度の報告プラットフォームとしても運用されている。
ここで保団連が問題視したのが、登録状況のばらつきだ。要望書によれば、G-MISに登録している医科診療所は10万2675件、歯科診療所は5万7803件で、それぞれ医科診療所の約97%、歯科診療所の約88%に相当する。逆に言えば、医科診療所の約3%、歯科診療所の場合は約12%が未登録のままだ。

保団連は要望書で「大部分の医科・歯科診療所はG-MISが利用可能であるものの、とりわけ小規模な医療機関ではG-MISが利用できず、医療用手袋の要請ができないことが生じ得る」と指摘。
その上で「小規模・零細の医療機関ほど医療用手袋の入手が困難となっています。今回の放出は、こうした医療機関への供給を確保するものですが、そうだとすれば、確実に医療用手袋が届くよう、G-MISによる以外の要請ルートも用意し、周知する必要があります」と訴えた。

自治体備蓄分の活用や緊急の財政措置も要請

保団連は要望書で次の3点を求めている。
  • G-MIS未登録の医療機関が要請できない事態が生じないよう、G-MIS以外の要請ルートを用意し、確実に周知する
  • 自治体備蓄分の医療用手袋等について、自治体の判断で放出できるよう、政府として自治体に周知する
  • 重要な医療資材の安定供給および物価高騰に対応した緊急の財政措置を図る
なお、厚労省は今後、5月18日の週内から医療機関の要請受付を始め、5月下旬のできる限り速やかな時期に配送を開始する予定だ。
高市首相は4月30日の関係閣僚会議(第6回)で、医療用手袋などの製造に使われ、供給が不安視されているナフサについて「ナフサ由来の化学製品の供給は、これまで『半年以上』とお伝えしてきたところですが、更に伸びて『年を越えて継続』できる見込み」との認識を示した上で、「命に直結する医療分野におきましても、新たに、手術用のメスの洗浄剤、解熱鎮痛薬等の製造用溶剤など、『流通の目詰まり』の解消を着実に進めています」と報告。
上野厚労相と赤澤亮正経産相に対し「一日も早い、『医療分野での目詰まりゼロ』に向けて、全力で取り組んでください」と指示している。


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