〈打球速度は大谷級〉阪神・佐藤輝&森下、異次元の数字はバース&掛布超え? ダブル「OPS1超え」コンビ誕生の現実味
〈打球速度は大谷級〉阪神・佐藤輝&森下、異次元の数字はバース&掛布超え? ダブル「OPS1超え」コンビ誕生の現実味

プロ野球も開幕してから2週間以上が経過。対戦カードも1巡したことで各球団の戦力や各選手の調子も少しずつ見えてきた。

セ・リーグ連覇を狙う阪神タイガースが前評判通りの強さを見せているが、打線の中心を担う佐藤輝明、森下翔太のコンビは「球界最強」といっていい破壊力をすでに発揮している。(※数字はすべて4月16日試合開始前時点)

首位ヤクルトでも揺るがない 阪神が「本命」の理由

球団史上初となるリーグ連覇を目指して今季を戦う阪神タイガース。巨人との開幕戦こそ落としたものの、セ・リーグ各球団と当たった開幕5カードはすべて勝ち越し。4月15日時点で首位の座はスタートダッシュを決めたヤクルトに譲っているものの、安定感や選手層の厚さなどを見る限り、やはり今季も「大本命」といっていいだろう。

なかでも特筆したいのが、打線の中心を担う佐藤輝明、森下翔太の好調ぶりだ。ともに3月のWBCには侍ジャパンのメンバーとして初出場。2人とも、常時スタメンという起用ではなかったが、確かな存在感を発揮した。開幕後も3番森下・4番佐藤のコンビは好調を維持し、佐藤は打率、打点でリーグトップ、森下は本塁打でリーグトップと打撃三冠をふたりで独占している。

今季、このふたりにぜひ達成してほしい記録が「OPS1超え」だ。OPSとは出塁率と長打率を足して導き出す指標で、打者の総合力を示す。0.9を超えると球界を代表するスターといわれ、1.0超えは「1年にひとり出るかどうか」のレベル。

ちなみに、昨季のプロ野球でOPS1を超えた選手はひとりも現れなかった(※12球団トップは佐藤の.924)。まだ開幕したばかりとは言え、佐藤は現在OPS1.156(12球団トップ)、森下は同.969(リーグ3位)と高い水準をキープ。

また、1球団から複数のOPS1超え選手が生まれた例はNPBの歴史上でも非常に稀で、直近では2018年広島の丸佳浩(1.095)と鈴木誠也(1.056)が最後。阪神では1985年にランディ・バース(1.146)、岡田彰布(1.057)、掛布雅之(1.017)の3人が達成して以来、生まれていない。なお、同一球団からOPS1超えが3選手出たのは、この年の阪神が唯一だ。

佐藤と森下のプロ入り以降のOPS推移は以下の通りだ。

佐藤 .749→.798→.837→.766→.924

森下 .691→.804→.813

両者ともに、プロ入りから順調に数字を伸ばしているのが分かる。

昨季の大谷と同等の佐藤輝のアレ

プロ入り後、着実に打撃指標が上昇している事実と、両者が開幕から好調をキープしていることから見ても、投高打低が叫ばれる近年のNPBにおいて奇跡といってもいい「OPS1超えのダブル達成」は決して夢物語ではない。指標だけを見れば、「バース・掛布・岡田」の伝説の3人に肩を並べる「最強コンビ」が生まれるかもしれない。

ではなぜ、佐藤と森下は今季ここまで、打撃好調をキープできているのか。NPBは今季から本格的にトラッキングデータの公開に踏み切ったが、専用アプリ「NPBプラス」で両選手の数値を見るとそれも納得できる。

まずは近年、MLBでもNPBでも高い注目を集めている「打球速度」から見てみよう。佐藤の今季打球速度は、最高が181.2キロ(リーグ4位)、平均が152.7キロ(同14位)。リーグ順位に関してはまだデータの総数が少なく、打数の少ない選手もランクインしているため参考にはならないが、平均152.7キロという数値はMLBでもトップレベルに位置する。

ちなみに、昨季のMLB平均打球速度の1位はオニール・クルーズ(パイレーツ)の95.8マイル(約154.2キロ)。

大谷翔平(ドジャース)は94.9マイル(平均152.7キロ)で同3位だった。まだ開幕直後ではあるが、佐藤の平均打球速度は昨季の大谷と同等だ。森下も佐藤には劣るが最高180.6キロ(同6位)、平均148.9キロ(同23位)をマーク。これも、今すぐMLBに行っても十分通用する数値だ。

また、打球速度が153キロを超える率を表すハードヒット率を見ても、佐藤が55.6%、森下が52.8%とかなり高い。これもMLBとの比較にはなってしまうが、昨季のトップはカイル・シュワーバーの59.6%、大谷は58.7%(2位)。両者ともに、MLBでもトップレベルのハードヒット率を残している。

もちろん、投手のレベルやボールの違いなどがあるため、まだ開幕2週間しかたっていないNPBのふたりと、昨季のMLBを比較することはできない。ただ、打球速度やハードヒットは、打率などと比較しても比較的「外的要因」が少ない指標でもある。

ヒットには当たりそこないがたまたま野手の間に落ちる「ラッキー」があるが、打球速度は「ラッキー」で出せるものではない。シーズンが進むにつれてこの数字がどう変化するかはわからないが、少なくとも両者の打撃がかなり高いパフォーマンスであることは、数値が実証している。

広角に打つ佐藤、引っ張る森下 対照的な2人の完成形

また、両者の「打球方向」を見ると、興味深い結果も導き出せる。

佐藤は今季、ライト方向に35.5%、センター方向に24.4%、レフト方向に33.9%と、広角にまんべんなく打ち分けているのが分かる。これが、昨季から大きく飛躍した高打率を生んでいると言っていいだろう。さらにいえば、これだけ逆方向の打球が多いにもかかわらず、打球速度がトップクラスというのも驚きだ。

今季の佐藤は昨季よりも体重を増やしてキャンプインしたが、その狙いを「昨季まで100の出力でしか打てなかった打球を80~90で打つため」と語っている。確実性を上げながら打球の質を落とさないという狙いが、しっかりと数字にも表れている。

一方の森下は全打球の実に75.4%がセンターからレフト方向。典型的なプルヒッターと言っていい。プロ1年目からパンチ力はあったが、今季はより「強い打球」を意識していることがこの数値からも透けて見える。後ろに佐藤が控えているというのも思い切りのよい打撃に徹することができる要因になっていると言えるだろう。

開幕から約2週間。この時点で選手の成績を論じることには確かに多少の無理がある。それは重々承知のうえで、それでも今季ここまで佐藤・森下コンビが見せているパフォーマンスは、残した数字も、トラッキングデータもリーグ屈指と言っていい。

球団2例目の「OPS1超えコンビ」誕生、伝説の「バース・掛布・岡田」超え。これらを達成することができれば、阪神の連覇はより現実味を帯びてくるはずだ。

取材・文/花田雪

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