精神科医・平光源氏のもとには、原因不明の体調不良を抱えて複数の病院をたらい回しにされた末に訪れる患者が後を絶たない。平氏はその多くは病気ではなく、ネットやテレビの情報が引き起こした不必要な不安と緊張によるものだと言う。
書籍『頑張れないんじゃない、頑張りすぎただけ』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成し、情報過多の時代に心と体を守るための「情報の断捨離」の重要性を説く。
頭を働かせるために、頭を空っぽにする
精神科の外来診療をやっていると、現代人は本当に情報に振り回されているなと思わされます。
例えば脳梗塞という病気を例に取りましょう。
この脳梗塞。
代表的な「心配をもたらす症状」に、めまいと吐き気があります。
まずこの「めまい」という症状について。
人間は「動脈」の血流量と「静脈」の血流量が大体同じだと、何も症状が起きません。
ところが何らかの緊張を感じると、筋肉が緊張し事態は変わります。
身体の中心部を通る動脈と違って、静脈は筋肉の間を出たり入ったりしています。
ですから、緊張した筋肉に圧迫されると、当然つぶされて、血流が悪化するのです。そうなると静脈を通れない血液の一部は心臓に戻ろうとする時、リンパ管を通らざるを得ません。
これが耳の周囲で起こると軽めの「内リンパ水腫」と呼ばれる現象となり、めまいや耳鳴りの原因となるというわけです。
ところが、めまいや耳鳴りが起こると、なまじテレビで仕入れた知識があるので脳梗塞ではないかと多くの人が心配されます。
もちろん脳外科に行ってCTを撮っても「異常なし」の判断。ところが今度は症状の原因が特定できないことに余計に不安は募り……。
その結果、筋肉が緊張して、まためまいが起こるという悪循環を繰り返してしまうのです。
ネットの情報を鵜呑みにして病気と勘違いしてしまう
特に、秋口、木枯らしが吹いてマフラーもせずに首を冷やすと筋肉が緊張して、先ほどのようなシステムが働きます。
もちろんこれはなんの異常でもありません。
それなのに、ネットの情報を鵜吞みにして、そのめまいを病気だと勘違いしてしまう方が多いこと。
11月の急に冷え込んだある日、全く同じめまいを訴える、4名の新患を診察したことがありました。
「なんだか、4クラスの授業を受け持って、すべてのクラスで同じ話をする学校の先生のようだな」と思ってしまうほど症状が一致していました。
続いて「吐き気」について。
この症状もテレビではよく脳の重大な障がいを表すサインと紹介されます。
しかし、心と体は表裏一体。
精神科的には多くの吐き気は、「受け入れたくない」という思いが、体に現れたものととらえます。
漫画やドラマで、新米刑事が、「俺が犯人を捕まえます」といきがって事件現場に乗り込む場合。
人間は、受け入れたくないことがあると、嘔気が出ます。
もちろんそれ自体は病気ではありません。
最近は職場に行こうとすると吐き気が出たり、実際に吐いたりする方が増えています。
これもまた「脳の病気」と誤解していろんな病院を受診しては原因が分からず、不安からさらに別の病院を受診される方を見かけます。
原因が特定できないのは、不治の病だからではありません。
体の正常な反応の中でただ症状が起こるだけなのです。
それなのに、余計な病気をネットの中で発見し、無駄な不安や緊張を引き起こして症状を悪化させています。
ごみにすらならない情報によって心を弱らせている
インターネットは便利である反面、時に毒となります。
インターネットが生まれる前、いまから30年前と、現代人を比べると、だいたい20倍の情報量にさらされていると言われています。
つまり、現代人は生きているだけで、情報に振り回されて、頭がパンクしている状態が当たり前になっているのです。
中にはそのパンク状態にさらなる仕事の負荷がかかり、自分には仕事を処理できる能力がないと勘違いし、死を考える方までいらっしゃいます。
でもよく考えてみてください。
「1週間前の同じ曜日にネットサーフィンしたことで印象に残ったことを3つ挙げてください」と言われたら答えられますか?
もちろん私もそうですが、おそらくほとんどの人は何一つ挙げられないと思います。
ということは逆に、私が今日スマホで2時間50分の間に検索・閲覧した30個の記事(ちゃんと調べてみました。笑)も、来週のいま頃には、全く記憶に残っていないということ。
そう。私たちはごみにすらならない情報に1日の多くの時間を費やし、脳を疲れさせて、心を弱らせているのです。
これからは、周りの情報に振り回されず、情報の断捨離をしましょう。
何かしていないと「時間を無駄にしている」と錯覚して、ただでさえ仕事や家事で疲れている脳みそに、新たな情報を詰め込むのはやめましょう。
パソコンやスマートフォンのCPUやメモリ(脳みその部分)は、使用されていない状態、開放されていてこそ真の能力を発揮できるのですから。
文/平光源
頑張れないんじゃなくて、頑張りすぎただけ
平 光源
――家族のため、同僚のため、友人のため。
誰かのために走りつづけてきた、優しい人へ。
朝目が覚めても、鉛のように体が重くて動けないとき。
「まだ大丈夫、やれる」と、自分を騙しながら笑っているとき。
普段なら流せるはずの小さなことで、涙があふれて、止まらなくなってしまったとき。
それは、あなたが弱いからではありません。
あなたは頑張れないんじゃなくて、頑張りすぎただけ。
精神科医で、ベストセラー『半うつ 憂鬱以上、うつ未満』の著者が贈る
頑張り屋さんの肩の荷をそっとおろす言葉。
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外来の患者さんから、よくこんなことを言われます。
「もう頑張れません。こんな自分が情けないです」
そう言ってうつむく方を見るたびに、私はこう伝えたくなります。
「それは、素晴らしいことなんですよ」 (本文より)
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※本書は2021年に小社より刊行された 『あなたが死にたいのは、死ぬほど頑張って生きているから』 を改題、加筆・再編集したものです。
【目次より】
●「立ち止まっちゃいけない」を「立ち止まれた」に
●人間だけが1年中、頑張っている
●心臓だってサボってる
●親の願いとあなたの幸せが同じとは限らない
●「自己肯定感」と「自分を好きになる」は違う
●「死にたい」のは死ぬほど頑張って生きている証拠
●人との違いが、あなたを特別にする
●誰もがあなたを嫌いになる自由がある
●人を嫌いになる前にできること
●落ち込んでいる人と同じジェットコースターには乗らない
●人生は、途中まで苦労するようにできている
●迷惑は「なくすもの」ではなく「許しあうもの」
●生きている人ができることは「生きること」
など

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