「女は面白くないからボケるな」30年前の現場…まちゃまちゃが明かす“女芸人冷遇時代”と「コンプラ嫌い」発言の真意
「女は面白くないからボケるな」30年前の現場…まちゃまちゃが明かす“女芸人冷遇時代”と「コンプラ嫌い」発言の真意

今年、芸歴30年、50歳を迎える女芸人・まちゃまちゃさん(49)。今でこそ女芸人の活躍の場は広がっているが、彼女が芸人の道に入った30年前は、「女は面白くない」と平然と言われる時代だった。

 

この30年間で女芸人を取り巻く環境はどう変わったのか。そして「コンプラ重視」の波が広がる現代のお笑い界についてどう思うのか。今回は“コンプラ度外視”“まちゃまちゃ節全開”で、その本音と怒りをぶちまけてもらった。(前後編の後編)

30年前は「女は面白くないから、ボケるな」の時代

――芸歴30年を振り返って「耐えた」という言葉が出てきた理由は?

まちゃまちゃ(以下、同) 今の時代、絶対言っちゃいけないけど、「まじで殺してやろうかな」って思った奴、何人もいたんですよ(笑)。私が芸人始めた30年前って、今と違って、女芸人なんてほんと少ないし、とにかく扱いもひどかったんで。

――当時の女芸人はどんなふうに冷遇されていたんですか?

イベントとかでも、劇場の作家に「女は面白くないからボケるな」って普通に言われるんですよ。「じゃあ何しに来てんだよ」って話じゃないですか。しかもその人、元芸人なのに、こっちの気持ちも汲み取ることなく、普通になめてきやがって。

――そうした時代をどう乗り越えてきたんですか?

私は19歳で吉本興業に入ったんですけど、当時、東京には「10代・女・ピン芸人」ってほぼいなかった。それでもお笑い好きのお客さんがすごく温かく受け入れてくれて、応援してくれた。だから、めげずに、辛い時期を乗り越えてこられたのはあります。

――それはとても心強いですね。

芸人って男が多いから、客層も女性が多くて。

もう“お笑い”ではなく、“恋愛感情”で来てる客もいたぐらい。その中で、いつも出待ちしてくれて、手紙をくれる女子高生がいたんです。年も近いし、手紙には電話番号も書いてあって。

――おぉ、それは嬉しい展開!

あの頃って、男芸人なんかは、もらった手紙に番号書いてあって、そこに貼ってあるプリが可愛ければ電話してる時代だったんで(笑)、別に私がその女の子に電話することぐらい支障ないだろって思って。その子の親が寝たあと、夜中に電話して、ゲラゲラ笑い合うような仲になって。

――素敵な関係ですね。

で、その子とは今でもつながってます。今度の30周年イベントにも来てくれるんですよ。そういうのは、やっぱり嬉しいですよね。

ピン芸人の孤独「相方いたほうがいいなって考えたこともあった」

――当時、女芸人も少ない環境の中、ピン芸人として孤独を感じたことはありましたか?

16歳くらいからお笑いのネタを作ってて、「やっぱり相方っていたほうがいいな」っていっちょまえのことを考えたりしたこともありました。

――それはどういった理由から?

自分の言いたいことに対して、ツッコミが欲しいなって思ったんです。でもその価値観もある出来事から完全に覆りました。

――いったい、何があったんですか?

友達の彼氏がとんでもないイケメンで、その彼氏の知人が「お笑いをやりたい」って言ってると聞いたんですよ。

まあ多少の下心もありつつ、会いに行ったら、嘘みたいに顔の長い男が来たんですよ。

――(笑)

それで「どういうネタを作ってるんですか?」って聞いたら「自分がAV見てるのを母親に見られるみたいなネタやりたい」って言われて……「こいつ、つまんねぇな」って思って。相方がいることって、自分の「面白い」と思うことに対して、同じように「面白い」と思ってくれる人が、もう一人いなきゃいけないことなんだって感じたとき、一人でいいやって思えたんです。

――じゃあそこからは迷うことなく、ずっとピン芸人を貫いたんですね。

そうですね。でもモリマンが地元の札幌に帰っちゃったときは、すごい孤独に襲われました。私はモリマンをすごい尊敬していて。女芸人が一番冷遇されていたあの時代の環境下で、よくぞ誰も殴らずに芸人を続けてくれたなって。東京にいた期間は短かったですが、そこで爪痕を残して、今でも地元の札幌で芸人を続けてる。めちゃくちゃかっこいいと思ってます。

“コンプラ重視”“ルッキズムへの過剰な配慮”の世の中は「大嫌い」

――最近のお笑い界に広がる「コンプライアンス重視」や「ルッキズムへの配慮」の流れについては、どう感じていますか?

大っ嫌いですよ。女芸人の先輩たちが、どれだけ大変な思いしてやってきたか、私は見てきてるんで。

バラエティでヘラヘラしているように見えながら、裏では相当しんどい思いをしてる。自分も「角材でぶん殴ってやりたい」って思う奴いっぱいいたし。今はみんな楽しくやれてるけど、私たちが必死に耐えながらも歩んできた時代を「古い」の一言で片づけないでくれって思います。

――30年前の現場はどれほど過激だったんですか?

私なんて最初出た深夜番組で、ずっと中指立てて「ファック!」って連呼しながら、番組内でヤンキーとガチ喧嘩してましたからね。

――そういう時代を経て、今の女芸人の立ち位置をどう見てますか?

冷遇されて辛い思いをしつつも、続けてきた先輩方がいるから、今の女芸人の枠があるのかなって思ってるし。だから、それを「古い」の一言で片づける奴は、法の許すギリギリまで詰めます(笑)。

――最近の“ハラスメント”という言葉の広がりについては?

昔は“ハラスメント”でも「セクハラ」しかなかったのに、最近は“ハラスメント”が多すぎて、訳わかんねぇじゃないっすか。数多のハラスメントの中にも面白い話に発展する場合もあるじゃないですか。それをいちいち誰がそんな神経質になってんの? 「何? お前の家の壁は真っ白なの? 一つの汚れも許さないの?」っていうのが多すぎるんっすよ。

――まちゃまちゃ節全開ですね(笑)。ほかに怒りを感じることは?

あとは、いつから「女優」は「俳優」って呼ばれるようになったの? 別に「女」に「優れる」で“女優”で良くないか? だから、そのうち女芸人って言葉もなくなっちまうのかなって思いますね。

――呼称もどんどん変化していってますもんね。

それと同じくして「AV女優」が「セクシー女優」って呼ばれるようになったじゃないっすか。でもなんでそこは「セクシー俳優」じゃないの? ここは何? 女を武器にしてるから女優っていうの? てか、そもそもAV女優で良くないか、って話っすよ。

――たしかに(笑)。

そもそも「AV男優」だって若手のうちは“汁男優”ってなかなか汚ねぇ感じで言われちゃってるんだから、男側だってもっと怒れよなって思いますけどね。

――こうした風潮全体について、改めてどう感じていますか?

誰が言い出したか分からないことに言うこと聞き過ぎてるんですよ。昔、新聞の苦情欄見るのが好きで、あれってわざわざ金出してたりするんですよね。今はSNSでタダで言えちゃうから面白くない。とにかく今の「コンプラ重視」の世の中が嫌いです。もし今の世の中だったら、芸人目指してないと思います。

――そんなまちゃまちゃさん。5月7日に50歳の誕生日を迎えられます。今後の抱負を教えてください。

まずは健康第一! もともとは声が出なくなったら地元でスナックやる予定だったんですが、まだ声も出るし、とにかく元気なまま走り続けたい。あと、50歳の誕生日に「独身披露宴」っていうイベントを開催します。人生で結婚披露宴をあきらめた女が、独身であることを披露するイベントですが、これからも「結婚してないから不幸」とか「女はこうあるべき」みたいな世の中のシケった価値観に対して、「はぁ⁉」って言い続けていきたいですね。

取材・文/木下未希 撮影/村上庄吾 

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