シンガポール華字メディアの聯合早報は21日、かつて中国の就職市場でもてはやされた「海帰(留学帰国組)」の魅力が失われつつあると報じた。

中国教育部留学服務センターの最新データによると、昨年の中国人留学帰国者数は53万5600人に達した。

帰国して就職活動を行う新卒留学生は前年より12%増加し、この8年で最高となったという。中国では近年、留学生の帰国傾向が継続している。経済学者の葉暁陽(イエ・シアオヤン)氏は「中国人の留学は『海外に出てそのまま現地で定住する』という形から、『世界レベルの教育を受けた後に帰国する』という形へと変化している」との見方を示した。

記事によると、専門家からは帰国する留学生が増加している背景として、「海外での就業機会の縮小」「ハイテク企業の台頭による中国国内でのチャンス拡大」「家族とのつながり」の3つが挙げられているが、このうち最も大きな要因になっているのが「海外での就業機会の縮小」だという。米国やカナダ、英国、オーストラリアなどで就労ビザや移民制度が厳格化され、就業機会も減少している。一方で、中国国内ではAI(人工知能)や新エネルギー産業などが急成長しており、国内に魅力的な就職先が増えている。

しかし、留学帰国組はその数が増えたことで希少価値が薄れている。かつては留学経験だけで就職に有利だったが、現在の企業は実務能力や中国市場への理解、人脈などを重視するようになった。名門大学卒の国内学生との競争も激しく、海外学位だけでは大きなアドバンテージにならなくなっている。そうした背景から、留学帰国者向けの就職支援サービスも登場しているが、高額な費用がかかることも少なくない。また、給与面での優位性は以前ほど大きくなく、人気業界でも初任給は月8000~1万2000元(約19万~28万円)程度で、中国の名門大学の卒業生と大差はないという。

こうした状況から、「留学に多額の費用をかける価値はあるのか」という議論も起きている。

留学費用は4年間で100万元(約2300万円)前後に達することもあるが、帰国後の収入だけで短期間に回収するのは容易ではない。ネット上では「100万元も投じて留学したのに月給3000元(約7万円)の仕事に就いた」との事例が話題となった。ただ、留学の価値を収入だけで判断すべきではなく、異文化の中で生活し、多様な価値観に触れる経験は視野を広げ、自立心や問題解決能力を養うことにつながるとの見方も出ている。かつてのような「確実な出世コース」ではなくなったものの、将来の可能性を広げるための選択肢として依然として価値があると受け止められているという。

このほか、留学帰国組が直面する課題には職場文化の違いもある。昨年4月にSNSに投稿された記事では「帰国して海外と大きく違うと感じたこと」として、形式的な官僚的言い回し、上下関係を利用した高圧的な態度などが挙げられ、「中国で働くのは本当に疲れる」との感想に多くの留学帰国組が共感を示した。海外とは異なる働き方や職場の人間関係に戸惑う人も少なくないようだ。ただ、こうした不満や問題意識は留学帰国組だけのものではなく、国内の若い世代の間でも、ワークライフバランスや労働環境の改善を求める声が高まっているという。(翻訳・編集/北田)

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