中国メディアの中国江蘇網はこのほど、個人用「自動防空兵器」の話題を取り上げた。とはいっても、戦争用の武器ではない。

夏を中心に出現する、人の血を吸う蚊を撃退する機器だ。まずレーダーで「敵」を感知して、発見すれば人工知能(AI)が羽を捕捉し、レーザーで正確に撃ち落とす。

製品名はフォトン・マトリックス。開発した王川氏とそのチームは約3年をかけて技術上の難題をほぼ克服した。王氏らはビジネス化を考えたが、量産には資金集めの壁が立ちはだかった。そこで、海外向けの「購入型クラウドファンディング」を採用することにした。出資者に見返りとして、商品を引き渡す方法だ。最初は難航したが、王氏が同年6月に、あまり深く考えずにフォトン・マトリックスが蚊を次々に「撃墜」する様子を動画撮影してティックトックに投稿したところ「バズ」り、出資者が「指数関数的」に増加した。

出資者、すなわち購入者は現在までに5000人を突破した。欧州と米国からが全体の6割から7割を占め、中東地区の出資者も多い。資金調達額は270万ドル(約4億3000万円)を突破した。王氏は製品の製造販売を手掛ける会社の常州光之矩智能科技を2025年9月4日に設立した。

フォトン・マトリックスに投入した「敵認識」のための主要技術は、レーザーレーダー、ミリ波レーダー、AIだ。レーザーレーダーが空間のスキャンを担当し、ミリ波レーダーで目標との距離を測定する。そしてAIによる視覚認識は、照射方向に人やペットがいないかも判断し、これらの「味方」が存在している場合には作動しないことで、安全を確保する。

大きさが2-20ミリの飛行している昆虫を識別でき、3メートル以内での命中率は97%で、6メートル以内では95%に達する。スマートフォンのアプリや本体のつまみを通じて探知距離とスキャン角度を調節でき、さまざまな使用環境に対応させることが可能だ。主に家庭内での使用を想定しているが、釣りやキャンプ、ピクニックなどの野外活動でも有効だ。機器本体に取り付けられている画面に、これまでに撃破した蚊などの虫の数と現在の稼働数値をリアルタイムで表示することができる。

夏の「自動防空兵器」を量産、命中率95%で味方いれば作動せず―中国メディア
レーザーで蚊を退治

研究開発の道のりは平坦ではなかった。王氏によると、プロジェクトの始動から最終決定までに約4年を要した。蚊や虫の識別という一つの工程だけでも1年余りを費やした。初期に試した2種類のレーザーレーダーの方式はいずれも、識別率が5割程度にとどまり、期待通りの結果を得られなかった。しかし2024年初めになってようやく安定した識別を実現した。

チームはさまざまな種類の蚊に対する攻撃効果をテストするため、ヒトスジシマカやイエカなど多種類の蚊を飼育して対照実験を行った。問題は蚊の種類によってレーザーの吸収や反射の特性に差異があることだった。しかし、最小で2ミリ程度の大きさの蚊を識別できるようになった。さらに小型の蚊を攻撃することもできるが、識別距離は著しく短くなる。紹介によると、日常的によく見られるイエカやヒトスジシマカの体長は3~5ミリであり、この種の目標であれば6メートルの範囲内で有効に識別して駆除できる。現在、製品は国内外で多くの特許を出願しており、累計の研究開発投資は1200万元(約2億8000万円)を超えた。

7月の取材時に得られた情報によると、同月内に少量の試験生産を開始し、8月には量産を始める。月産能力は数千台に達する見込みで、初回の製品は今年の夏に世界中のユーザーに届けられる。中国国内市場での需要も同様に急速に拡大しており、多くの消費者がすでに製品を家庭環境や野外活動で活用しているという。

常州光之矩智能科技の所在地は江蘇省常州市にある常州ハイテク区だ。この地を選んだ主たる理由は、長江デルタ地域の成熟した産業チェーンの集積があるからだ。王氏によると、機器の基幹部品の約80%を周辺地域で調達でき、現地政府も立地や政策面で支援してくれたという。

王氏は「我々は中国のハードテクノロジーを、世界中のあらゆる夏に届けたい」と述べた。製品をより広い市場へと徐々に浸透させていく考えだ。(翻訳・編集/如月隼人)

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