2011年の日本アニメ界を代表する話題作「輪るピングドラム」。その最終回を、映画館でリアルタイム上映するオールナイトイベントが、聖地・池袋のシネマサンシャインで開催されました。

400枚のチケットは、わずか5分で完売。激しいチケット争奪戦を勝ち抜いた幸運なファンしか参加できなかったこのイベントを、速報レポートします!

イベントのスタートは12月23日の夜11:00。深夜のイベントにも関わらず、満員の客席の約7割が女性ファンでした。
TBSでの最終回放送開始と同時に、スクリーンで最終回を上映するこの企画。放送が始まる2時54分までの時間は、豪華出演者によるトークやベストセレクション回の上映が行われます。
まずは、司会役のキングレコード池田慎一プロデューサーの呼び込みで、高倉冠葉役の木村昴さん、高倉晶馬役の木村良平さん、荻野目苹果役の三宅麻理恵さん、幾原邦彦監督が壇上に登場。
トークパート第1部が始まりました。

視聴者と同じように、先の展開はまったく聞かされてなかったというキャスト陣。スタジオでは、謎解きトークが盛り上がったのだとか。

木村良「監督は、僕らがどんな予想を言っても『そうかもしれないねえ』って」
木村昴「一番驚いたのは、監督に『来週、こうなりますか?』って聞いたら、『それ良いね!』って言われた時(笑)。あれって、生かされたんですか?」
幾原監督「いや。翌週は無理だよね(笑)」
木村昴「ですよね(笑)。
あと、最終回のことを予想していろいろと話しても、必ず『それもありだな~』って仰ってましたよね」

また、「一番好きなキャラは?」という質問に、「やっぱり苦楽をともにしてきた苹果です」と答えた三宅さん。苹果とは気持ちの重なる部分が多かったそうで、片思い相手の多蕗をストーキングし、部屋の床下に潜るという奇行に関しても「なんとなく分かるなあ」と発言。脚本も手がけた幾原監督本人が驚きながら「え、分かるの!?」と突っ込む展開に。
「女性ならこの気持ち分かってくれると思ったんですけど、陽毬役の荒川さんにも『いや、そこまでは……』って言われちゃいました(笑)」
三宅さん、確かに初期の苹果っぽいです……。

木村良平さんのイチオシは、夏芽真砂子。堀江由衣さんによる決めセリフ「嫌だわ、早くすりつぶさないと」が強烈な印象を残すキャラクターです。


幾原監督「堀江さんの集中力はすごいよね」
木村良「本番前に座ってるとき、横から何かブツブツ聞こえるなと思ったら、堀江さんが小声で『早くすりつぶさないと。すりつぶさないと。すりつぶさないと……』って練習してて。怖いよ(笑)」

真砂子と一緒にいるペンギン・エスメラルダの「キュフ」という鳴き声も、幾原監督の無茶ぶりに堀江さんが見事なアドリブで応えた結果、生まれたものだとか。

好きなキャラトークの最中、高倉陽毬役の荒川美穂さんが会場に到着。ファッションブランド「イノセントワールド」とのコラボによる陽毬コスプレでの登場に、男女問わず会場のテンションが一気に高まりました。
アニメのイメージをかなり忠実に再現した衣装にも関わらず、まったく違和感のない陽毬ぶり。これぞ、まさに2.5次元!

荒川さんが合流し、高倉3兄妹勢揃いが実現したのもつかの間。木村良平さんはトークパート第1部のみで退席。「ピングドラム」のイベントに初めて参加でき、ファンと触れ合えたことの喜びと感謝を伝える木村良平さんに、幾原監督からは、「この作品に良平君がいてくれて本当に良かったよ。ファビュラスマックス!」と大絶賛の言葉が送られました。

0時前にトークパート第1部が終了し、最終回開始までの時間は、幾原監督&池田プロデューサーのセレクトによる6本のエピソード(1、12、18、20、22、23話)を上映。
その後、最終回の上映直前にはトークパートの第2部が行われました。

セレクト上映もされた第20話で、陽毬が自分の運命の人は晶馬だと思い出した時、すごくショックだったという三宅さん。晶馬ラブな苹果の気持ちを思うあまり、熱まで出たとか。
三宅「アフレコの時、監督に『ひどい! 最低です!』って言いました(笑)」
荒川「20話のアフレコでは、三宅さんと昴さんが、同じような境遇だって意気投合してましたよね」
三宅「お通夜みたいな雰囲気でね(笑)」
木村昴「早々と録音ブースを出て、二人で『淋しいね』って話してました(笑)」

いよいよ、キャスト陣もまだ観たことがないという最終回の放送開始時間が迫ります。幾原監督からは、「ようやくここまで辿り着きました。物語の内容はこれから観ていただくとして、画面のテンションをここまで維持できたのは、スタッフが頑張ったから。
本当にありがとうございました」と、制作スタッフへの感謝の言葉が。ファンからも、スタッフへの盛大な拍手が送られました。
また、このトークパート第2部までで木村昴さんが退席。最後に、「すごくたくさんのことを学ばせて頂いた、自分にとっても本当に意味のある作品でした。これからも、ぜひ『輪るピングドラム』を愛してください」というメッセージを伝え、会場のドアを出る直前までファンの拍手に応えていました。

2時54分。最終回の上映がスタート。
予想の斜め上を行く展開に振り回されながらも、食い入るようにスクリーンを注視する400人の「ピングドラム」ファン。後半になると、会場のあちらこちらから、鼻をすする音が聞こえてきます。なんとか涙腺崩壊を阻止できた筆者でしたが、苹果が運命乗り換えの呪文を叫んだ瞬間、全身に鳥肌が立ちました。

最終回の上映後は、20分の休憩タイム。涙で目や鼻を赤くしている人、まだ号泣をしている人、友人とストーリー解釈について議論している人。反応はさまざまですが、この最終回が会場のファンの心に強烈なインパクトを残したことは間違いありません。

トークパート第3部。司会の池田プロデューサーが、「高倉兄弟は運命を乗り換えてしまったので、いないんですが……」と言いつつ、幾原監督たちを呼び込むと、会場のファンからは笑い声と拍手が。

三宅「最後に陽毬のぬいぐるみから出てくる手紙の内容を、私と荒川さんは勘違いしてたんですよね」
荒川「アフレコの時ははっきり字が見えなくて、『大スキだよ!! お兄ちゃん』って陽毬が書いた手紙だと思ったんです。そうしたら、『お兄ちゃんより』だったので、サプライズで」
三宅「お兄ちゃんから、こんなメッセージが来ていたのかって号泣ですよ(笑)」
荒川「陽毬と苹果としては本当に切なかったです」

また、このトークパートには、色彩設計の辻田邦夫さんも飛び入り参加。最終回の制作状況についても、さらに深いトークが展開されました。
辻田さんが、「次はどうしようか? また12年も開けられちゃったら、僕らは還暦になっちゃうから、それは勘弁してもらいたいんだよね(笑)。もっと近い時期に、幾原君の作品を観たいし、一緒にやりたい」と話すと、場内からも賛同の大きな拍手が沸き起こります。

幾原監督や辻田さんの話を聞くだけで、そのチームワークの良さが想像できる『輪るピングドラム』制作チーム。辻田さんも、「大変だったけど、こんなに楽しい仕事って、なかなか無い」と断言していました。

その後、プレゼント抽選会が行われ、登壇者から最後の挨拶が。それぞれが作品への思いやファン、スタッフへの感謝の言葉を語り、荒川さんと三宅さんは、涙で言葉を詰まらせる場面も。司会の池田プロデューサーがイベントの締めくくりとして、もう一度最終回を上映すると伝えると、観客から「おー!」という歓声が。その後、上映が始まっても、席を立つ人は誰もいませんでした。

退場する直前には、笑いながら「次は、なるべくライトでセクシーなものが良いよね」とジョークを飛ばし、会場を沸かせた幾原監督。次の幾原作品が、いつ、どのような形で観られるのかは分かりませんが、また必ず、ファンの心を容赦なく揺さぶるような作品を生み出してくれることでしょう。
「輪るピングドラム」のような、ファビュラスマックスな作品を待ってます!
(丸本大輔)