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マンガ大賞『響~小説家になる方法~』を読む。天才は手段を選ばない

2017年3月31日 10時00分 ライター情報:松浦達也
「圧倒的な天才を描きたかった」。マンガ大賞2017の授賞式で『響~小説家になる方法~』を描いた柳本光晴(やなもと・みつはる)はそう言った。受賞作に描かれているのは、まさしく「圧倒的な天才」。誰もが憧れ、嫉妬すら諦めるほどの才能だ。

ストーリーは文芸誌『木蓮』編集部に応募規約を無視した手書きの小説が送りつけられるところから始まる。書かれているのは、『お伽の庭』というタイトルと本文、そして「鮎喰響」という本名かペンネームかもわからない名前だけ。住所、年齢、職業、性別、電話番号もない。だが、それは後に世の中を震撼させる圧倒的な傑作だった――。

『お伽の庭』を書いた「鮎喰響」は、15歳の女子高生。文芸誌への投稿は、まだ確信しきれない自らの才能を確認するためのものだった。そして天才は、世の大人たちを驚愕、震撼させていく。天賦の才に恵まれた者だけが開けられる扉を、枠ごとなぎ倒すかのような勢いで次々に開けていくことになる。

ちなみにマンガ大賞2017の自分の投票コメントを見直したところ「世の常識をひっくり返すほどの圧倒的な才能と、無軌道な振る舞いには憧れすら覚える」と書かれていた。そう、「鮎喰響」という強烈なキャラクターは天才的文才とともに、何者にも束縛されない"無軌道"な性格も持ち合わせている。

"天才"につきまとうもの


そういえば、現代の数学者である藤原正彦は著書『天才の栄光と挫折』で「天才の峰が高ければ高いほど、谷底も深い」と記している。

古今東西、天才の奇行にまつわる逸話は数限りない。"発明王"トーマス・エジソンは、物が燃える理由を知るため、藁を燃やして自宅の納屋を全焼させた。稀代の天才ピアニスト、グレン・グールドは、動物園の象にむかってマーラーを歌い、ふたつのラジオで同時に違う番組を聴くのを好んだという。ゴッホは画家仲間のゴーギャンから「自画像の耳の形がおかしい」と指摘され、自分の耳を切り落とした――。

話の真偽はともかく、天賦の才は人格に狂気じみた「偏り」を漂わせる。そして往々にして、本人に狂気を宿している自覚はない。自らの探究心や欲求に忠実に振る舞っては、「おかしい」と思われてしまう。他方でその"狂気"は奔放さの象徴でもあり、あこがれの対象にもなりうる。

鮎喰響は、情も思考も深い。「だが」なのか「それでいて」かはともかく、他者の浅薄な思慮や我欲は受け入れない。そのキレ味のいい筋の通し方、通り方は、爽快を通り越して痛快ですらある。

ライター情報

松浦達也

ライター/編集者にして「食べる・つくる・ひもとく」フードアクティビスト。マンガ大賞選考員。著書に『大人の肉ドリル』、『新しい卵ドリル』(ともにマガジンハウス)など

URL:Twitter:@babakikaku_m

「マンガ大賞『響~小説家になる方法~』を読む。天才は手段を選ばない」のコメント一覧 2

  • 匿名さん 通報

    Mii.最近やってないな。

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  • 匿名さん 通報

    試し読み部分を読んだだけだが、面白いと思った。 しかし、Amazonの評価は低めですね。 でも、bookliveってところの評価はかなり高いし。漫画大賞もとってるみたいだし。

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